25話 もうちょっとオブラートに包んで言うべきだったか!?
「凄い! 速いわねシューティ!」
《フッ、貴女は中々見所がありますねオリビア》
オリビアは初めて体験するスピードを楽しんでいた。そんな素直なオリビアにシューティもご機嫌なようだ。
でもバイクって楽しいな。チャリとはスピード感が違うというか、どこまでも速く走れそうな疾走感というか。
これで後ろにしがみ付いてるのがオリビアじゃ無く晴子さんだったら、俺の背中に高性能なエアバックが装備されている所なのだが・・・俺に分かるのは、この世界にはブラが無いという事くらいだな。
「で、このまま道を進んでいけばいいのか、オリビア?」
俺がそんな事を考えているとは露ほども思わずにオリビアは俺にしっかりとしがみ付いたまま答えて来た。
「ええ、このスピードなら今日中に街に着くはずよ。でも人に見られるとまずいから、途中でシューティをどこかに隠さないといけないわね・・・」
《心配無用です、オリビア。鉄屑に出来る事が私に出来ないと思いますか?》
そのセリフから察するに、シューティもこの指輪の様になれるのだろうか? 持ち運びには便利で文句は無いけどな。駐車禁止も気にしなくていいし。
《オリビアだけずるいのじゃ! 妾の事もちゃんと名前で呼んで欲しいのじゃ!》
《今後の働き次第ですね。ちなみにあと一回何か粗相があったら貴女は鉄屑から廃棄処分へ降格しますから気合を入れなさい》
《ヒィィィィ!!!》
相変わらずラギには容赦無いなシューティは。おっと、脅しでタイヤをホイルスピンさせるなよ、運転しにくいだろ?
それにしても、昨日の朝の俺からは今の状況は想像出来んな。バイトに行くはずが、いつの間にか異世界で髪を脱色して喋るバイクにエルフと2ケツしてるなんてのを想像出来る奴が居たら怖いが。
早く帰りたいが、生憎手がかりが何も無い。ラギは昔の帰還した転移者の事を調べろと言ったが、そもそもどこで調べられるんだ?
「おい、オリビア、昔の文献とかがある場所を知らないか?」
俺はスピードを落として後ろのオリビアに話し掛けた。シューティはガソリンエンジンじゃないからエンジン音はしないのだが、あまりスピードを出していると風で声が流されるからな。
「大きい街なら図書館や資料館があるわよ? 後はお城にもあるらしいけど、一般人じゃ入るのは無理ね」
図書館と資料館か。調べ物と言えば定石だな。城に入れないのはしょうがない。俺が城に入れるとしたら、勇者殺しで連行される時くらいだろう。BGMはドナドナかな?
「・・・・・・それと、エルフの里にも古い記録はあるけど・・・私は行きたくないわ」
またこいつの地雷が発動したみたいだ。面倒な奴だな。一人であんな場所に行かされている事といい、里のエルフとやらと何らかの確執があるんだろうが・・・
「いいよ、お前も乗り気じゃないみたいだからな。まずは街の方から調べようぜ」
「うん・・・」
それきりオリビアは黙ってしまった。・・・チッ、この空気は頂けねぇな。俺もやりたくは無いが仕方が無い。
気分を変える為に、俺はオリビアに話し掛けた。
「オリビア」
「・・・何?」
「さっきから胸の先っぽが当たってるんだけど、お前ブラとかしねぇの?」
「キャァァァァアアア!!!」
突然オリビアが後ろで暴れ始めやがった!! も、もうちょっとオブラートに包んで言うべきだったか!?
「バカ! バカ!! バカーーーーー!!!」
「あぶ、危ねぇっての!! どうせお前の胸じゃいらないだろ!! って、うげっ、く、首を絞めるな・・・」
《お、オリビア! おち、落ち着くのじゃ!!》
《私の上で暴れないで下さい!!》
そんな感じで俺達は街道をフラフラと街に向けてひた走ったのだった。
・・・これからはもう少し状況を考えてオリビアをからかう様にしよう。
優しく慰めたり出来ない不器用な男、リュウセイでした。