24話 灰は灰に、塵は塵に・・・
俺が説明するとオリビアもなんとか状況を理解したようだ。
「その、ばいく? っていうのは分からないけど、乗り物だって事は分かったわ。ここから人里は相当離れているから助かったわね!」
全くだ。歩いて行くなんて面倒だしな。それに2ケツするにしても、チャリよりはバイクの方がサマになるだろうよ。
《フン・・・マスターの命の恩人だから特別に乗せてあげますが、くれぐれも勘違いしないで下さい。マスターの正妻は私ですからね!》
ハハハ、俺にバイクと子作りしろっての? この後ろにあるマフラーみたいなのに突っ込めばいいのか? 端から見たら俺はベリーハードな変態だな。
「ねぇ、リュウセイ。シューティは何を言ってるの?」
「こいつも生まれたばかりで情緒不安定なんだよ。優しくしてやってくれ」
いや、性癖的に厳しくしてやった方が喜ぶのか?
《ひ、酷い目にあったのじゃ・・・》
お、ラギも起きたか。ずっと寝てればいいのに。
「ラギ、もう出発するぞー」
《マスター、私はその鉄屑は乗せたくありません》
おいおい、ワガママ言うなよ。・・・でも、確かに抜き身の剣なんて邪魔なんだよな・・・
「ラギ、お前鞘とか無いの?」
《鞘などいらんのじゃ。リュウセイ、手を出してくりゃれ?》
なんだよ、切り落とすつもりじゃないだろうな?そんな事をしたらまたシューティにギュルギュルして貰うからな?
「・・・ほらよ」
《指を一本借りるのじゃ。よっと》
そう言ってラギが光の粒に分解したかと思ったら、俺の右手の『薬指』に光の粒が巻き付き、白い指輪になった。おお、便利だな!
と、思ったらまたシューティが黒いオーラを放ち始めた。何なのお前、闇属性なの?
《鉄屑・・・今すぐ隣の指に移りなさい・・・削り落としますよ?》
待て、そんな事したら俺の指も被害甚大だろ? シューティ実は俺の事嫌いなの? 別にどの指でもいいじゃねぇか。
《ヒィ! わ、分かったのじゃ!!》
ラギは相当シューティが怖いのか、また光ったと思ったら、今度は中指に巻きついて指輪になった。
横では何故かオリビアも笑顔になっている。何なんだ一体?
「まぁいいや・・・オリビア、俺の後ろに乗れ。ちゃんと掴まってろよ?」
「う、うん・・・」
オリビアは若干顔を赤くして俺の後ろに跨り、手を腹に回して掴まって来た。なんだ、初めて乗るバイクに興奮してんのか? 子供っぽい奴だな。
「オリビア、どっちに行けばいいのか教えてくれよ、シューティ、速度は控え目でな。また木にぶつかりたくねぇから」
「わ、分かったわ、まずはこのまま真っ直ぐ進んで。道に出たらまた教えるから」
《・・・その2人の体勢は非常に不愉快ですが、分かりました。マスターの意志を魔力に乗せれば加速・減速が出来ますので調整して下さい》
よーし、んじゃ行くか!
乗り物と案内役を手に入れた俺はこうして異世界の旅路についた。
待ってて下さいね、晴子さん。すぐに貴方の下に帰って来ますから!
《そんな希望に満ち溢れたリュウセイがあんな事になろうとは、この時は露ほどにも思わなかったのじゃ・・・》
「おい、シューティ、今から進行方向に指輪投げるからギュルギュルしてくれ」
《了解です、マスター。灰は灰に、塵は塵に・・・》
《ごめんなさいなのじゃぁぁぁぁぁあああああ!!!!!》
「不安だわ・・・」
奇遇だな、俺もだよオリビア。