18話 名前にドクって付いてるじゃねーか!!
「お待たせ!」
20分ほどしてオリビアは戻って来た。
「持ってきたわよ、はい、ローブ。それと毛染めの薬ね」
「おう、ありがとさん・・・って、何だコレ?」
いや、ローブは分かるよ? 問題はそっちじゃなくて、オリビアが渡してきた、瓶に入った虹色の何かだ。
「それが毛染めの薬よ? 運良く近くに居て良かったわ。さ、早く試してみてよ」
・・・待て、近くに居て良かっただと? 一体何からこんな液体が取れるんだ?
「・・・オリビア、これの原材料は何だ?」
「ナナイロドクガエルだけどどうかしたの?」
どうかしてるのはお前の頭だろうが!! 名前にドクって付いてるじゃねーか!!
「・・・お前、そんな直接的に俺を殺したいのか?」
オリビアのほっぺをむにーっと引っ張りながら俺はオリビアを問い詰めた。いいさ、人間誰でも魔がさす時はあるもんだ。多分エルフにだってあるだろう。逆さ吊りくらいで許してやるよ。露出し放題でむしろご褒美かもしれねぇな。
「ひょっほ! ほはい、ほはいひょ!!!」
しかしオリビアは必死に両手を振って否定しているようだ。俺は釈明を聞くべく、オリビアの両手から手を離した。
「ぷはぁ!! ・・・何するのよ!! 誰も飲めなんて言ってないじゃない!! それは髪に塗るの!!!」
なんだ、そうならそうと早く言ってくれよ。
「でもこんな色に染めちゃ逆に目立っちまうな・・・」
「大丈夫よ、その毛染めは本人に合う色が自然に定着するわ。乾いたら水で洗っても落ちないから水浴びしても大丈夫だしね」
ほほー、何色に染まるか分からない毛染め薬なんだな。早速試してみよう。
「どれどれ・・・」
俺は手に虹色の毛染め薬を取ると、万遍無く髪に塗り付けた。瓶の中身はちょうど一回分染めるのに足りる量で助かったぜ。
「それでしばらく待てば自分の体質に合った色に染まるわよ」
そうか、楽しみだな。ここには鏡は無い、の、か、って・・・あ、あれ? 何か頭が、い、い、い、
「痛てててててて!!! な、何だコレ、頭が・・・痛たたたたぁぁぁぁあああっ!!!」
「ど、どうしたのよリュウセイ!?」
お、俺に聞くな!! とにかく頭皮が痛えんだよ!!
《む、まさかオリビア、その液は原液のままか?》
「え?ええ、そうよ?」
《・・・普通、毛染めに使う時は50倍くらいに薄めて使うものじゃぞ? 強すぎるからの。過ぎた薬は毒じゃ》
な、なんだと!? 今俺は毒を受けているのか!?
「ぐああああああっ!!!!」
「どどどどどうすればいいいいんですか!!! リュウセイが! リュウセイが!! 禿げちゃう!!!」
き、キサマ!! 男にとって何て恐ろしい事を言いやがる!? 嫌だ、ハゲは嫌だーーー!!!
《落ち着けオリビア。『解毒』の魔法で治まるのじゃ!》
「げげげ『解毒』のまほ、魔法ですねっ!」
オリビアが慌てふためきながら何かを唱えているが俺の耳には届かなかった。痛くてそれどころじゃねぇんだよ!!!
「『解毒』!!!」
光る手をオリビアが俺にかざしながら何かを解き放つと、次第に俺の頭の痛みも引いて来た。
「ぐっ・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、な、なんて事しやがる・・・」
思わずステータスを見ると100も生命力が減っていた。おいおい、毒こえぇよ・・・
ハッ! そんな事より俺の髪は、髪は!?
俺が急いで頭に触ると、そこにはいつも通りの髪の感触があった・・・・・・良かった、ちゃんと髪がある・・・
《あ、主殿・・・その髪は・・・》
む、なんだよラギ。俺の髪がどうした?
「あわわ・・・」
オリビアはなんだかマズイものでも見たかのような顔をしていた。
「お、おい、どうした?」
《・・・主殿、ご自分で確認された方が良いのじゃ》
そう言ってラギが俺の前に浮かんで剣の腹を見せると、鏡の様な刀身に俺の顔が映りこんだ。そこには・・・
「な、なんだと!?」
刀身に映る俺の髪は真っ白に染まっていた。
私はチキンなので痛いと聞く脱色はした事がありません。まぁ、頭に髪の毛くらいの量の小さな針を刺す感じと思って頂ければ・・・猟奇的ですね。