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13話 何か言い残す事はあるか?

「ここか・・・?」


走るグリューネ(仮)を追いかける事10分。俺は洞窟の開けた空間に来た。そこには1本の剣が祭壇の様な場所に突き刺さっていた。


おお、なんというテンプレ。これを俺が引き抜いて、「こ、この者こそ本物の勇者じゃ!!」とか騒がれるんだな。誰も居ないけど。


その時、周囲に威厳に満ちた声が響き渡った。




《久しいの、オリビア。何用じゃ?》




「お、お久しぶりです、ラギアナギア様。そ、それと私の名前は呼ばないで下さい・・・」


ほほう、グリューネ(仮)の名前はオリビアってのか。あっさりネタバレしちまったな。これはテンション下がるぜ。


《ふん、お主まだこだわっておるのか? もう昔の事じゃろうが》


「い、今はそのお話はいいではないですか! そ、それより、ラギアナギア様に新たな所有者候補を連れて参りましたので、どうかご検分をお願いします」


《ほう? ここ20年ほど誰も訪れはせんかったが・・・なんじゃ、この小僧は?》


この金属片、初対面で小僧呼ばわりかよ。相性悪そうだなぁ・・・


《こんな小汚い小僧に妾が抜けるはずが無いわ。とっとと消えんか》


「い、いえ、こう見えてもリュウセイは・・・」


「待て、オリビア」


俺はグリューネ(仮)改めオリビアを制止して前に出た。


「リュウセイ!? わ、私はグリューネだって・・・」


「ちょっと横にどいて待ってろ。俺はその鉄屑に話がある」


その瞬間、空気がピリッと帯電した様な気がした。


《100年も生きられない様な脆弱な生物が妾を・・・て、て、鉄屑扱いじゃと!? フハハハハ!! 面白い。小僧!! その首切り落としてやろうか!!!》


「やかましいわ引きこもりがっ! そんな脅しで俺が恐れ入ると思うなよ!! こちとら魔王も勇者も倒してんだ!! 今更ニートな金属片如きに恐れ入るかってんだ!!」


《糞餓鬼が・・・誰に唾を吐いたか思い知らせてくれよう!!!》


そんなセリフを吐いて鉄屑が光ったかと思うと、その光が刀身から飛び出し、俺に襲い掛かってきた。


「リュウセイ!!」


オリビアが切羽詰った声を出したが、心配すんなよ。必ず俺があの剣を抜いてやるからさ。


その剣閃を俺はひょいっと避けて見せた。


「え?」


《何!?》


オリビアも鉄屑も驚いているが、大した事じゃないさ。オリビアが言っている事が本当なら、俺のステータスは恐らく世界でも有数の物なんだろう。この程度は見てから回避余裕でしたってなもんだ。


「引きこもってるから運動不足なんじゃないのか? 今のもしかして攻撃? プッ」


《こ、こ、こ、殺す!!! 貴様は五体バラバラにして剣の錆にしてくれよう!!!》


「オリビア、危ないから下がってろ! 俺はあんなクソトロい攻撃は当たんねえけど、お前はドジだから斬られるぞ!!」


「ドジは余計よ!!」


鉄屑を挑発しながら注意を促す俺にオリビアは不平を言ってきたが、鉄屑も本気でブチ切れた様で、いつオリビアが斬られるか俺はヒヤヒヤしていた。何も無いとこで転びそうだもんな、あいつ。


それからしばらくは俺と鉄屑の回避合戦が続いた。今では一つずつでは無く、3つくらいいっぺんに剣閃が飛んでくるが、まだ余裕はある。


「寄る年波には勝てそうにありませんなぁ。実は隠居してたのか? お・ば・あ・ちゃ・ん?」


《・・・・・・・・・死ね》


あ、禁句だったっぽい。剣閃が一気に5本に増えたぜ。口数も減ってパラノイア状態だな。


俺も徐々に剣閃がかすり始めているが、ここいらで徹底的な敗北感を与えてやらんといかんな。そうすれば・・・


「おい、サービスだ。一度だけ攻撃を受けてやる。掛かって来いよ」


《妾の攻撃を脆弱な人の子が受け止めるだと!? 笑止!! 出来るものならやってみるがいい!!!》


俺の挑発にあっさりと乗った鉄屑は、俺めがけて真っ直ぐに剣閃を放ってきた。


「よけてリュウセイーーーーーッ!!!」


オリビアが叫んでいるが、ここは俺が頑張らないとならない場面だ。地球人の底力を見せてやるぜ!!


唸れ! 俺の両手!!


「どりゃぁぁぁぁあああ!!!!」


《何ぃっ!!!》


「う、うそ・・・」


俺は両手で剣閃を挟み込んでその場に押し止めた。うお、ちょっと手の平が熱いぜ!!!


日本剣術の奥義の最高峰、『真剣白刃取り』だ。婆ちゃんと時代劇を見て幼少期を過ごした俺にかかればこの程度の芸当は朝飯前ってなもんよ。もう朝飯は食ったけどな。


実際はステータスによるゴリ押しだ。筋力に器用さに敏捷に運。特に俺は運に賭けた。


結果は上々と言っていいだろう。ちゃんと止められたんだからな。


「オラッ、返すぜ!!」


俺はそのまま白刃取りした剣閃を投げ返した。


《ぬおっ!!!》


鉄屑はギリギリの所で新たな剣閃を放って飛んできた剣閃を相殺して事無きを得たが、これで迂闊に剣閃を放てなくなっただろう。さて、仕上げと行こうかね?


「お前の剣閃は俺には通用しないぜ? そのご大層な刃は飾りなのか? ナマクラなんぞ俺はいらんぞ?」


《くっ・・・よかろう、妾の切れ味、その体で確かめるがいい!!!》


その言葉と共に、祭壇に突き刺さっていた鉄屑が徐々に抜けていき、スッと宙に浮かんで俺に剣先を向けて静止した。


《中々面白かったぞ、小僧。何か言い残す事はあるか?》


鉄屑は切れ味に絶対の自信があるのだろう。もしかしたら今度は白刃取りなんて出来ないかもしれないな。だから、俺は最後に言ってやった。


















「やったーーーーー!!! 抜けたぞーーーーーーー!!!!!」


















「えっ?」


《えっ?》


「これでこの鉄屑は俺のもんだな。さ、帰ろうぜオリビア、まだ説明も全部済んでないんだからよ」


「え? え? あ、た、確かに、抜けたわね・・・」


《ま、待て!! こ、これは、その、ち、違うんじゃ!!!》


その狼狽振りが違わない事を如実に表してると思うが。


「別に俺はお前と戦ってたんじゃないんだぜ? 勇者でも無い俺が普通に抜こうとしても抜けないかもしれないからな。だからお前に自分から抜けてもらったのさ」


《ひ、卑怯じゃ!! 卑劣じゃ!! インチキじゃ!!!》


「なんとでも言え。それもとあれか? 自分からした約束を自分で反故にするのか? 聖剣の約束ってのは随分適当なんだな?」


《う、う、ううううううううう~~~~~》


「だったらオリビアは貰ってくぜ? そんな適当な約束なんかでこんな所にずっと縛り付けられてちゃ、コイツが可哀想だからな?」


「え? ・・・リュウセイ、私の為に・・・?」


いや、これはコイツを言いくるめる方便だ。・・・・・・まぁ、自由になれればいいなとは思わなくも無いがな! ちょっとだけだぞ!!


「じゃあな、いつか誰かが偶然見つけてくれるのを祈ってろよ。もう誰も居ないこの場所でな」


そう言って俺はさっさと出口に向かって歩き出した。オリビアが自由になれれば、俺はどうせ目立つ聖剣なんぞいらんしな。ふ~、そろそろ昼飯が食いたいね。




《わ、分かった!! 貴様を妾の主として認める!! 認めるから!!!》




結局鉄屑は俺に付いて来るみたいだ。やれやれ、やかましいのは脳内にもう2人も居るんだけどなぁ・・・

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