12話 バカ!ヘンタイ!!リュウセイ!!!
「こっちよ、リュウセイ」
俺は手を引かれるままに洞窟の奥へと進んでいた。手を引かれるってのは比喩じゃなくて、実際グリューネ(仮)に手を引かれて歩いている。
「なぁ、別に手を繋がなくてもいいんじゃないか? 魔法の明かりもあるんだしよ?」
今俺達の前には魔法で出来た明かりがふよふよと浮いている。グリューネ(仮)が作り出したもので、手に持たなくてもいいのが便利だな。
「だ、ダメよ! 洞窟は危ないんだからね!! リュウセイなんて一人で歩いたら死んじゃうわよ!!」
マジかよ、気を抜いたら死んじゃうような洞窟でコイツは生活してたのか? おっかねぇな。
まぁ、仮にも聖剣があるような洞窟だもんな。罠の一つや二つはあるか。ちゃんと手を握っておいた方が良さそうだ。
「分かったよ、ちゃんと手を離さないでくれよ?」
「う、うん・・・」
そう言うグリューネ(仮)の顔はまだ赤かった。仕方無いだろうな。男の胸で大泣きしちまったら流石に恥ずかしいだろうし。俺の胸元は今グリューネ(仮)の涙や鼻水でびっしょりだ。顔写真付きでネットで売ればそこそこいい値段が付くかもな。エルフ汁付きシャツなんてその筋にはたまらない逸品だろうよ。どの筋かは知らんが。
それにしてもなんでこう女の子の手っていうのはすべすべしてるんだろうな。男のガサガサした肌とは大違いだぜ。それに柔らかいし。やっぱ柔軟剤が違うのか? 使ってないッスよぉ~ってか?
「ほんとすべすべしてんな・・・」
「な、何よ急に!!」
あ、やべ、声に出てた。・・・いいや、別に嘘でも無いし。
「いや、グリューネ(仮)の手がすべすべしてんなぁと思って」
「お、思うだけにしなさいよ!! バカ! ヘンタイ!! リュウセイ!!!」
おい、最後の一言はどういう意味だ?場合によっては容赦せんぞ?
俺が問い質そうとした時には既にグリューネ(仮)は俺の手を離して洞窟の奥へと駆け出していた。顔がさっきより赤いのは今のセクハラに怒ったんだろうが・・・
「おい!? 手を離したら俺が死ぬんだろうが!! 待てよ!!」
「バカッ、バカッ、バカーーッ!!」
そうバカバカバカバカ言って走るなよ、馬かお前は。
急に始まった追いかけっこをしながら、俺たちは洞窟の最深部へとひた走ったのだった。
ーーちなみに罠は無かった。なんだよ、暗い以外は安全じゃねぇか。