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プロローグ

俺――佐々ささき 流星りゅうせいはチャリでバイトに向かって爆走していたのだが、コーナーを攻めていた途中でいきなり目の前に真っ黒い穴みたいなのに突撃してしまった。避けるには俺はこの道に慣れ過ぎていた。今では特に考えなくても半自動でバイト先に辿り着けるくらいだったのが災いしたと言える。


その直後、真っ暗な空間で強烈な落下感を味わいながら、俺が考えていたのはただ一つの事だけだった。すなわち……


「バイトにっ……遅刻しちまうじゃねーかあああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」


そして俺は永遠に続く奈落の如く、どこまでも落ちて行った……








「き、貴様は、人間にしてはよくやった。しかし、さ、最後に勝つのは、我だぁ!! 食らえ!! 『流星召喚シューティングスター』!!!」


「く、くそぉぉぉおおおお!!! 私は、私は魔王には勝てないのかッ!!!!!」


勇者であるアレクセルフィは倒れた状態から神剣クサナギを杖に、何とか立ち上がろうとしたが、現実は非情であり、どう考えても魔王シリューの魔法の完成の方が早い。


ここまでの戦いで両者共に仲間は既に死んでは居ないが倒れており、この戦闘に介入する者は無い。そして両者共に満身創痍で、次の先手を取った者がこの戦闘の勝者となる事は火を見るよりも明らかだった。


(勝った、勝ったぞ!! ガロウ、シンディア、ラクノラクス!! これで、魔族が、私が覇者だ!!!)


(ゴメン……キキ、ミラ、ジーク……私は……ここまで、だ。何とか……奴を……)


シリューの魔法は間も無く完成する。これで魔王が勝ち、勇者は負ける。世界は魔族の物となるのだ。


しかし、HP(生命力)どころかMP(魔力)も枯渇寸前だったシリューは、最後の最後で魔法の制御を誤った。結果、この場に居た誰もが予期しない出来事が起こったのだ。




「ぅぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!」




確かに魔王は『流星』を召喚した。ただし、人間『佐々木 流星』であったが。


そのまま流星はまだ手を離していなかったチャリでシリューを殴り飛ばした。所詮、タダの人間の一撃。シリューに与えたダメージはたったの1だった。しかし、シリューはアレクセルフィとの死闘の末、そのたった1までHPを減らされてしまっていた。結果……


「ゴハッ!? ……こ、こ、こんな、バカなッ!!!」


シリューの体が黒い粒子となって散り始めた。そう、魔王シリューは倒されてしまった。


そこで終われば人間にとっては奇跡の大逆転勝利となっただろう。もしかしたら流星も世界を救った勇者として人間達に深く感謝されたかもしれない。そして、その後の展開も違ったものになったかもしれない。


しかし、物語はそこで綺麗には纏まらなかった。


シリューの使った『流星召喚』には、当然標的が居る。勇者アレクセルフィだ。


シリューが「バカなッ!!!」とか言っている間に、流星はアレクセルフィに美しいまでに決めてしまった。そう、流れ星の様なドロップキックを。


「へぷっ」


相当情けない声をあげて、アレクセルフィは倒れた。そしてその身体が白い粒子となって散って行く。アレクセルフィのHPも1しか残っていなかったのだ。


「イテテ……くそ、一体なんだよ……。俺は、俺には晴子さんとバイトするっていう崇高な使命が……」


結局、最後に立っていたのは一般人、佐々木 流星だった。

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