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結婚狂想曲 第一夜

 それでは後ほどお食事の際にお呼びしますね。

 そう告げて由紀は隣の自分の部屋へと入っていった。

 え、隣とそれぐらいでは驚いていられない。

 今、ここにある情況が驚きの全てなんだから。


 崇は一つ一つ思い出してみる。

 まず受験の日。

 事故にあった、間違いない。

 病院で目が覚めた、その通り。

 由紀が来て御礼として入学できる学校を紹介してくれた、うんうん。

 来年から共学になる名門女子高校だった、ちょっとびっくり。

 由紀のお婆さんにお礼を述べた、矍鑠とした人だった。

 寮生活だと思ったら荷物が全部届いてた←いまここ。


 やっぱり納得できないよね。


 ちょっと叔父さんに確認をしてみようと思う。

「もしもし」

「お兄ちゃん、どういうこと、部屋がガラガラなんだけど」

「えっと、その件で叔父さんと話したいんだ」

「ちょっと、おとうさん、お兄ちゃんからでんわー」

「おう、崇君、そっちの家はどうだね」

「って叔父さん、荷物全部きてるんだけど」

「ああ、天ヶ瀬さんが挨拶にきて学校への転入手続きをしにいくからついでに生活品も運びますねと言われてね、そう言えば崇君が荷物は全部預けていいと言っていたなと」

「あれ、言ったっけ」

「うむ、心配ないからと病院から電話をくれたときだよ」


 ぬぉぉぉ、そう言えば荷物を預けてって言った気がする。

 着替えとかのつもりが、えらい事になってる。

 由紀さんの言ってた内容と俺の中での内容に重大な齟齬が…


 ってあれなにか重要な事を言われたぞ。

 転入手続きと言ってたな、このパターンだ、聞きたくないけど聞かないと。


「ねえ叔父さん、転入手続きは済んだの」

「ああ、突然だがと言う事で済ませておいた、まああの天ヶ瀬さんだからお願いしても問題ないかと思ってね」

「あの天ヶ瀬って」

「なんだ崇君知らないでいたのかい、天ヶ瀬財閥の娘さんだよ、いやぁ家の前にリムジンが止まって秘書の人と来たときは心臓が止まるかと思ったよ、うん、沢山事故にもあったし苦労もしただろうが、これで崇君の道が開けたと俺は思った、頑張るんだよ」

「え、うん、まあ頑張る、よ?」

「それじゃあまた落ち着いたら手紙でも送ってくれ」

「はい、じゃあまた連絡します」

「うんうん」


 こ、これは帰れない。叔父さんもすっごく喜んでた。

 問題は突然の転校までしてたことか…

 もしや簡易拉致では、いや、あの笑顔は本物だし。

 部屋はこんなに豪華だし。俺を拉致する意味ないよな。

 クラスメイトにはメールを打っておこう…

 突然の別れになったが元気でやっていくと、く、詳しい事を書けないな適当にごまかそう。


 そうなると問題は、まず涼子ちゃんだなぁ。


 ……。


 ああ、飛んでくるイメージしかない。

 突然京都に住むんだ、←聞いてないわよ私も住むわ。

 転校することになったんだ←私も転校するわよ。

 こっちで進学するんだ←こっちって私もそっちにいく。


 となる、ここは叔父さんが頑張るべきところだ。うん、俺にはどうしようも出来ない。


 そして落ち着いて考えろ、なぜ一緒に住むことになってるんだよ。

 おいおいそれが一番の問題じゃなかったのか。


 原因は?

 確かに事故に遭った時に助けた。

 うーん下手すれば死んでて当たり前の事故だった。

 だからか?

 いやしかし、命の恩人だからと言って一緒に棲むってのはどうよ。


 駄目だ金持ちの考える事が理解できない。

 俺が学校を探してて入学といいつつ転入措置になったまでは理解した。

 細かいことは気にしない。

 宝くじにあたったような物だと思って受け入れる。それでいいのか?



 いやしかし、やはり一緒に生活するところまで見てくれるんだ、礼を述べねばいけないのは、むしろ俺のほうなんじゃないか。

 うん、これは礼を述べて有り難く住まわせて頂こう、夕食時に礼を述べればいいよね。


 ちょっと休憩しようっと。

 荷物は明日片付ければいいや。



 ある意味大物な対応、神経が7度も事故に遭う事で図太く出来ている崇は考えを放棄してベットへと身を投げ出した。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 ――守護霊達――


(さすが崇君は受け入れが早いわね)

(我の力で此処まで来たというに…しかし予想を超える事になってる)

(え、貴方自分の力だと思いこんでるだけじゃなかったんですか)

(何をいってる我の空弧の加護あってこそのこの情況だろう)

(これは崇君の負の出来事から引っ張る幸運を引き寄せる力ですよ)

(なんだそれは)

(昔から事故や不幸の度合いの分、その後の運気が上昇して幸運を手に入れるんです)

(ちょっと待て我の加護はなんなんだ)

(オマケでしょう)

(我は空弧ぞ)

(はいはい、空弧空弧、空気空気)

(くっそぉおかしぞ)

(そもそも守護霊だから幸運をもたらせるなんてどうして思ったのですか? まったく、世間しらずにも程がありますね)

(ぐぬぬぬぬ)



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「では、参りましょう崇さん」

「ああ、由紀さんありがとう、なんだか色々してもらって。

 転校までしてたのは少し驚いたけどお蔭で此処で棲んで勉強も続けられるなんて思っても見なかったことだよ、ここまでしてくれて感謝しなくてはと思ったんだ」

「え、え、っとはぃ…気になさらないで下さい」

「いや、寮生活ぐらいだろうと思ってたのがお屋敷なんだから」

「えっと、多分それは…お、お婆様がっ命の恩人に報いるにはと、ま、まだまだ足りませんので」

「いやぁこれ以上なんて流石に恩の返されすぎだよ」

「いぇ、崇さんにはそれ以上に…」

「え?」

「つ、着きました…妹も母たちも居るはずですので」

「え、あぁ」


 スッっとドアが開かれる。


 これは晩餐というやつではないだろうか…

 マナーなんてしらないぞ、迂闊、迂闊なんだよなぁ俺。


 そうだよ、お屋敷だよここ…だったら普通のテーブルでご飯を両手を合わせて頂きます。

 なーんてある訳無いじゃないかっ。


 あの茶室で和のイメージがっ。


 いかん、さすがに再度の礼を言おうとは思ってたが、それ以前にヒア汗がでる


 その時に天の助けではない、不運が崇の元に訪れる。


「きっさまかぁぁ、私の可愛い由紀ちゃんの結婚相手というのわぁ」


 背もたかくスラっとして2枚目風のおじさんが突然せまってきた。

 殴りかかってきたので右手で受け流しつつ体を入れて掴んだ右腕を捻りながら無力化する。


 あれ私のとか言ってたぞ……


「いきなりなんだ」

「くそぉ、おいぃきさま痛いじゃないか、離せ」

「お父様、いきなり何をしてるんですかっ」

「由紀ちゃんが結婚すると聞いてっ黙ってられんわ」

「あ・な・た」

「お・と・う・さ・ま」

「ハイ…」

 

 まさかの行き成り襲いかかってきた人物が父親。

 驚きと衝撃だったが、それ以上に由紀ともう一人の女性の対応が怖かった。

 ああ女性二人に睨まれて燃え尽きた…哀れだ。

 開放しても大丈夫だろうか。


「全く…きちんとご挨拶もせず殴りかかるだなんて…いくら娘が可愛いからといって命の恩人に対しての態度ではありません、反省して正座しないさい」

「はい」


 いやぁいくらなんでも床に正座は…

 ああでも床が4cmはある絨毯なのか。

 なら、大丈夫か。


「いい加減自分の娘にむかった『ちゃん』付けで呼ぶのはおかしいですと」


 え、そこ?

 論点そこなの、由紀ちゃんの怒るポイントちがうんじゃないかな。


「そ、それにまだお伝えしていなかったのに…」


 え、なにを…


「全く食事前に騒がしい、美由だけじゃないか大人しくいるのは」

「「「すいません」」」


 お婆さんの一言で場が静まったのはいいんだけど…


「では食事にしよう」


「無作法者故に食事のマナーもままなりませんが、ご相伴させて頂きます」

「いいのですよ、食事と言うものは美味しく頂くのが礼儀です、余程に酷く相手に不快感を与えなければホークとナイフがどうだこうだとマナーなどを強いることこそ無作法というものです」

「そうよ、崇君、気にしないでお箸の方がいいかしら?」

「いえ、これも経験だと思ってやってみます」

「うむうむ、それでこそ認めた意味があろう」

「わ、私は認めていなぃ…」

「お父様…お婆様が認めてくださってるのですよ、認めてください」

「あなた…俺を倒してからにしろぐらいでいいじゃないですか、恐らく、いえ100%負けますけど」

「えーっと、先程からのお話が良く見えないのですが」


 みえますよ、みえてますよ…でも確認は必要ですよね。

 ついでにヒエラルキーも見えてます。


「崇くんと娘の由紀の結婚の話よ」


 やはりこうなりますよね、一緒に住む意味が理解できました。

 が、どうしてこうなった?急展開すぎてもう訳がわからないよ。ルーベンスの絵でもでてくるんじゃないだろうか。


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