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喰い譚-感情を喰う者-  作者: かさ


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第五話 音のない世界

次の日の夜。


翔太は一人で街を歩いていた。


 


大学の帰り道。


特に用事があるわけでもない。


 


ただ、まっすぐ家に帰る気分になれなかった。


 


胸の奥の違和感が、昨日よりも強くなっている。


 


思い出せない誰か。


 


確かにいたはずなのに、どうしても思い出せない。


 


スマホを取り出し、もう一度写真フォルダを開く。


 


カフェの写真。


 


コーヒーが二つ。


 


でも写っているのは、自分だけ。


 


「……おかしいだろ」


 


思わず声が出る。


 


こんな写真、撮るはずがない。


 


誰かと一緒に来たはずだ。


 


それなのに、その誰かがいない。


 


まるで――


 


最初から存在しなかったみたいに。


 


 


その時だった。


 


背後に気配を感じる。


 


翔太はゆっくり振り返る。


 


通りの向こう側。


 


三人の人影が立っていた。


 


男が一人。


女が二人。


 


昨日と同じ三人だ。


 


街灯の光の中で、三人は動かない。


 


ただ、こちらを見ている。


 


翔太は息を飲んだ。


 


「……なんなんだよ、お前ら」


 


当然、返事はない。


 


三人は一歩も動かない。


 


ただ、見ている。


 


 


その瞬間だった。


 


翔太は、違和感に気付く。


 


 


周囲が、妙に静かだった。


 


 


さっきまで聞こえていたはずの音。


 


車の音。


人の話し声。


コンビニのBGM。


 


全部が――


 


 


消えていた。


 


 


翔太はゆっくり周囲を見渡す。


 


道路には車が走っている。


 


でも


 


音がしない。


 


 


遠くを歩く人たちもいる。


 


口は動いている。


 


でも


 


声が聞こえない。


 


 


完全な静寂。


 


 


胸の鼓動だけが響いている。


 


 


「……なんだよ、これ」


 


翔太の声も、どこか遠くに消える。


 


 


その時だった。


 


 


三人の観察者が


 


 


同時に


 


 


翔太の背後を見た。


 


 


翔太の背筋に、冷たいものが走る。


 


 


ゆっくり振り返ろうとする。


 


 


でも


 


 


体が、動かない。


 


 


 


すぐ後ろに


 


 


 


誰かが立っている。


 


 


気配だけで分かる。


 


 


 


そして


 


 


 


次の瞬間


 


 


 


翔太の耳元で


 


 


 


かすかな声が聞こえた気がした。


 


 


 


『……翔太』


 


 


翔太の心臓が跳ね上がる。


 


 


 


 


その声は


 


 


 


 


とても


 


 


 


 


懐かしかった。


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