第3話 観察者
それから数日、翔太は妙な感覚を抱えたまま過ごしていた。
黒い目の男。
あれは気のせいだったのか。
それとも本当に見たのか。
思い出そうとすると、胸の奥がざわつく。
大学の講義を終え、キャンパスを歩いている時だった。
ふと視線を感じる。
翔太は顔を上げた。
通りの向こう側に、三人の人影が立っている。
男が一人。
女が二人。
年齢も服装もバラバラだ。
スーツ姿の男。
ロングコートの女。
フードを被った若い女。
でも、三人とも
こちらを見ている。
じっと。
ただ、見ている。
翔太は思わず立ち止まった。
どこかで見たことがある気がする。
でも、思い出せない。
その時、後ろから肩を叩かれた。
「翔太、何してんの?」
健太だった。
「いや……」
翔太は振り返り、もう一度通りの向こうを見る。
しかし、三人の姿は消えていた。
「誰もいないじゃん」
健太が言う。
翔太は黙ったまま視線を戻す。
確かに、さっきまでいた。
三人とも。
こちらを見ていた。
その夜。
翔太は自宅の部屋でスマホを見ていた。
何となく、昔の写真を遡っていく。
大学の入学式。
サークルの新歓。
友達との旅行。
懐かしい写真ばかりだ。
でも、その中にまた
妙な写真があった。
サークルの集合写真。
みんな笑っている。
その後ろ。
建物の陰に
三人の人影。
翔太は目を細める。
「……こんな人いたか?」
拡大する。
ぼやけている。
顔はよく見えない。
でも。
三人とも
こちらを見ている。
翔太は背筋に寒気を感じた。
その時だった。
ふと気付く。
写真の地面。
他の人の足元には
影がある。
でも
その三人だけ。
影がない。
その瞬間。
スマホの画面が一瞬だけ暗くなった。
そして、ガラスの反射に
翔太の背後が映る。
そこに
三人が立っていた。




