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喰い譚-感情を喰う者-

作者:かさ
最新エピソード掲載日:2026/03/10
その人は、前からそこにいた気がする。

電車の窓に映る自分の顔の向こうで、男が立っている。

背は高くも低くもない。
スーツ姿で、特別目立つところもない。

なのに、視線が離れない。

どこかで見たことがある。

昔から知っている気もする。

でも、思い出せない。

 

電車が揺れる。

窓に映る景色が流れていく。

その瞬間、男の目がこちらを向いた。

 

――黒い。

 

完全に黒い。

白目がない。

瞳もない。

ただ、真っ黒だった。

 

思わず振り返る。

 

そこには誰もいない。

 

「……気のせいか」

小さく呟く。

車内はいつも通りだ。

人の話し声、電車の走る音、吊革の揺れる音。

全部ある。

 

それでも、胸の奥に妙な違和感が残っていた。

 

最近ずっとそうだ。

何かが引っかかっている。

大切な何かを忘れているような感覚。

 

思い出そうとすると、胸が痛む。

 

スマホの写真フォルダを開く。

 

友達との写真。

旅行の写真。

大学のサークル。

 

でも一枚だけ、妙だった。

 

写真の中央に、空間がある。

 

まるで、誰かがそこに立っていたかのように。

 

「……俺、誰かと付き合ってたっけ」

 

言葉にした瞬間、胸の奥が締め付けられる。

 

思い出せない。

 

名前も、顔も。

 

それでも。

 

確かに、誰かを――

 

 

 

その時だった。

 

ふと、気づく。

 

周囲の音が

 

消えていた。
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