侵攻 11
正午になって各師団長たちが攻撃を停止した。
どの師団も砲撃で敵を駆逐できたと思って、前進をしようとするや反撃を食らって被害を出していた。前線にノエル・カステルノウが師団長たちを連れてやってきたとき、兵士はおろか連隊長まで地面に伏せて、出城に見える小さな人影を銃撃する消極的な戦いをしている最中だった。
「これはどういうことだ?」
「敵の防御が固すぎる」将軍のひとりが小さく落ち込んだ崖に座り込んで言った。
「敵は二千もいない。こちらはこの包囲だけで五万以上。それで攻めあぐねているのはどういうことかと僕はきいている」
「先ほども言った通り、防御が固すぎる」
「派遣議員として全軍攻撃を命ずる」
「攻撃したければお好きにどうぞ」
カステルノウはそうさせてもらうと言うと、梯子を手に取った。自分の背丈の三倍はある梯子を真っ直ぐ立てると、カステルノウは伏せている兵士たちのあいだを通り過ぎ、濠へ降りるかわりに濠の幅の一番狭い場所に梯子を橋のように立てた。
「前進!」
カステルノウはピストルを抜くと、橋がわりの梯子の上をろくに下も見ないで駆けるように進んだ。
まさか総司令官と同等の権限を持つ派遣議員が敵前で先頭に立つとは思っていなかった。その中性的な容貌から男装の女性が先頭を進んでいると思ったのだろう。すぐに第二、第三の梯子が彼女に続けとばかりにかけられて、カステルノウに続き梯子の上を歩くもの、出城へ銃撃を続けるものと兵士の動きが活発化していった。橋を渡る兵士も何人かが手裏剣と矢によって濠に落ちていったが、カステルノウだけは何度も矢を浴び、そのうち二本がフロックコートの裾を貫いただけで、ついにとうとう出城にたどり着いた。
イバリノミ姿のランカ兵が小太刀を抜いて、襲いかかるが、すぐ後ろに続いていた赤肩章の擲弾兵がマスケット銃を発射し、撃ち倒す。
カステルノウの突破点から続々と兵士たちが出城に登り、洪水のように氾濫した兵士たちは武術に優れるランカ勢を銃剣で押し包んで強引に串刺しにしていく。
ある兵士は敵の胸に刺した銃剣が肋骨に引っかかって抜けないため、引き金を引いて銃の反動で引き抜いていた。坂の上にある小さな礼拝堂へ籠ったランカ勢を包囲し、目と鼻の先で撃ち合いが始まった。銃弾が土壁を斬り裂き、カシャの神像を真っ二つに割り、礼拝堂のなかではランカの老若男女が骸を重ねている。
馬から降りた騎兵と擲弾兵の混成部隊ががむしゃらに攻め登り、大柄の工兵が斧をふるって、ついに礼拝堂の扉を叩き破ると、サーベルと銃剣が負傷したわずかな生き残りへ容赦なく振り下ろされた。
ランカの指揮官だと言って、騎兵が斬り落とした首を外に放り投げたが、それは何があるわけでもなくのんびり雲を見上げていたサヤトの大きな頭だった。




