侵攻 7
カンテラを鞍にかけた伝令の馬が夜の山間部を走り回っている。
ふたりの雑役夫が穴を掘っていて、その傍らには砲四門の喪失と師団司令部からの逃亡の罪で銃殺刑を宣告された第十五師団長のジャン・マリー・ロロー=ランドウ将軍の骸が胸に開いた七つの穴からごぼごぼと血を噴きだしている。
ノエル・カステルノウの臨時革命裁判所はすでに大佐二名と少佐六名に戦闘時における怯懦の罪で銃殺刑を言い渡し、ひとりの砲兵中尉に禁固刑を言い渡したが、それというのも大砲を使った婦女子の処刑を拒んだからだった。この中尉は先の戦役で戦死したサン=タンドレ将軍の甥であり、亡き将軍の革命への献身により死刑から減刑されたのだった。
各指揮官による即決の軍法会議は数百人の兵士に敵前逃亡、命令不服従、歩哨任務中の居眠りなどの罪状で処刑が行われていて、遠征前のすぐにランカは陥落するという楽観は失われつつあった。
ライコウ村の攻略を命じられた二大隊がいまだ成果を上げられないため、兵士十人につき一人を銃殺せよという命令書に署名したとき、書記官が〈走る事務室〉にやってきた。
「同志カステルノウ、ライコウ村の大隊から外国人の捕虜が送られてきました」
「外国人?」
「アレンテラ人です。アルトフルガヴリエル・ルナという男です」
「ルナ先生が?」
カステルノウは書き物を止めた。
「呼んできてくれ、同志」
兵士にせっつかれて馬車のなかに入れられたガヴルナは煤に汚れ、眼鏡の片方のレンズが落ち、残っているほうには大きなヒビが入っていた。手を前で縛られていて、おそらく引いて連れていくための縄が伸びていた。
「お久しぶりですね、先生」
「うん。久しぶりだ。元気そうだね」
「先生はそうではないように見えます」
「家を焼かれて、こうして縛られ、あちこち連れまわされたからねえ。まあ、少し疲れている」
「なぜ、この地に?」
「ランカの人びとの暮らしに興味があってね。いや、実に興味深いんだよ」
「相変わらず学問に生きているようですね」
「きみがテロルに生きているようにね」
後ろにいた軍曹がマスケット銃の銃身で頭を軽く小突いた。
「口に気をつけろ。同志。この男も銃殺しますか?」
「そうしてくれ」
紐が引っぱられ、ガヴルナが外に連れていかれようとしたとき、
「軍曹。処刑はルンビエの社付近で行ってくれ。社から見える位置で銃殺刑にし見せしめとすること」
「分かりました」
ガヴルナが出ていくと、ライコウ村攻略のため、カマン池攻略軍の第十一師団を北上させ、ライコウ村を三方から攻めかからせる旨の命令書に署名し、半月型の吸い取り紙にインクを吸わせた。
――あれだけの明晰な頭脳を持ちながら、それを革命のために使おうとせず、極めて個人主義的な興味のために費消するのは悪だ。ああした個人主義は革命の足並みを乱すということでは王党派並みの悪だ。
手紙を折ると、その日何度目になるか分からない虐殺命令を封筒に入れ、蝋で閉じた。




