束の間の休息 3
翌日、影術士のサヤトとレイェガはセイハ村で薬師をしているユレシを訪れようと、山道を歩いていた。というのも、ユレシが仕込んだ焼酎がそろそろ飲みごろに熟成しているはずなので、甕開きに偶然出くわしたフリをしてタダ酒にありつこうとしたのだ。
だが、セイハ村に着くと、荷馬車が薬師の家から粘土で封をした酒甕を全部運び出すところだった。荷馬車は谷深いキノベ川の橋を渡り、シヤンヤ村にあるサキリの家の前についた。そこではちょうどケナクとサヅタヤの親子がやってきていて、婚約の契りの儀が執り行われているところだった。サキリとサキリの両親が婚約に応ずれば、サキリが輿でサヅタヤの家へと運ばれて、婚約が成立する。近隣からも村人が集まって、サキリの家を囲んだが、そのうち、紗をまとったサキリがあらわれて輿に乗った。
一行がライコウ村のサヅタヤの家へと入っていくのを、半里先の楢の樹の枝に座り、ターカとイルククが座って見ている。
「ターカ……」
「我ながら損な役させられたと思ってるぞ」
「やっぱり。サキリにきいてくれって頼まれたな」
「あー!」ターカはリスが驚き、鳩が飛び立ち、地脈のなかを息づく精霊たちが目を覚ますほど大きく声を張った。「サキリーっ! おれもお前のことが大好きだった。これからも大好きだぞ! ……叫んだら、すっきりした。さ、お前の家に行って、酒でもかっ食らおうぜ」




