裏への準備と流星の気づきと考え
ドガティスの国に降り立った俺達はコウカ姫達に出迎えられた。感動的な兄と妹の再会シーンがあったり、パウゼルとオババがロシューの称号に腰を抜かしていたのが印象的だった。
彼ら土竜族の生活や営みのムービーが流されて、ドガティスの国一つのエピソードが終わりを迎えた。一応無視して次の町に向うことができるが裏に挑戦する俺達はギルドの待合室でちょっと休憩しつつも準備を整えていた。
「桂木、PT構成だけ見てきた。1PT戦だってよ」
「おっ!じゃあおkだな」
さっきは何も考えずロシューの話を受けてしまったがもし同盟PT戦闘なら諦めるつもりだった。天上の戦乙女とまたやるのは流石に気が引けたし、今からPT探しをする気が起きなったのだ。が、今この4人でできると判明したためがこのらしい。
机の上には俺達の俺達のスキル表をコピーした用紙があってそれを熱心にキッカとルフが見つめている。サポーターなのにデーターを頭にぶち込まずしっかり目視で確認させている辺り、このゲームのAIへの熱の入りっぷりが伺える。
「お前らサポなのに熱心だよな。っつかデーターとして読み込んだりできねえのかよ。他のゲームだとできるぜ」
高峰も同じことを思ったらしい、完全に被ったと俺もチラっと見る。
「それくらいわしらだってできるわ。じゃが、データーとして持つのと目で確認したものは違うのじゃ。そんなこともわからんとはお主本当に人間かの」
「人間だわっ!っつかお前らがマジでAIかよ」
まあまあと高峰を落ち着かせて俺は解説する。
「高峰ももう気づいてるだろうけど、このゲームのサポAIは人方向にも成長するっぽい」
「人方向?」
「ざっくり言うと人を真似る。傍にいるプレイヤーを記憶しようとする。ほら、サイフォンの予測変換みてえな感じだって」
だから、最終的にサポーターはプレイヤーに凄い似るんじゃないかって俺は思ってる。まああくまでこの予想が正しかったらの話だが。
「マジ?」
「マジ。それに当然、こんなん気づくの俺だけじゃなくて一般プレイヤーも気づき始めてる。だから教えこもうとしてるプレイヤーよく見かけるようになったぞ」
「なあでも掲示板ではそんなに騒がれてなくね?」
「あーだから枷掛かってんじゃねえかなって。学園だけでなくて一般も。つってもこうやって話せてるからそこまで拘束ランク高めじゃなさそうだけど」
「のう、流星。その枷とは何じゃ?」
キッカとルフさんがキョトンとしていたので、サポにもわかるように俺はできる限り嚙み砕いてみる。
「んー例えば、ここで俺が暴言とか下品な言葉を放っても言えなくなってる。要は禁止行為。運営はプレイヤーにある程度の規制を掛けられるわけだ。そいつをバンコードって言うんだけどそれを使ってネタバレを防いだりもするんだよ」
「ミステリー系のクエストとかでよく使われたりするよな?」
高峰のフォローにそうそうと頷いて俺が言葉を紡ぐ。
「それにも段階があって、一番重いのだと口にだすこともできなかったり、掲示板に書き込めなかったりもする。それがまあ枷だな。んでそういう隠された美味しい情報を抜いて自分のチームだけに伝えるのがハイシルフの仕事の一つだったりするんだけど、まあその話は今関係ねえか。って感じなんだが分かったか?キッカ」
「うむ有り難うなのじゃ」
「なあ桂木、口頭で伝えられる程度の枷にしては広まるの遅くねえか?」
「そりゃ多分。偏見じゃねえかな」
「偏見?」
「AIはこういうものだって考え方で凝り固っちまってる。実際、ずっとそうだったしさ。特に俺ら学生が酷い。まあこれは大会が開かれるのが悪い方に作用しちゃった感じだな。対抗試合があるなら今は人と組むって考えちまうよな」
だから、あのピンクさんは別に間違ってはいない。どっちかっていうと俺が変なのだ。
「まあ、俺も実際桂木とやってなけりゃサポとやろうとは思わなかったしな。なあ桂木、ずっと聞きたかったんだがお前何でそこまでサポ入りに拘ってんだ?」
皆の視線が集まって俺は言いづらいとボリボリと頭を掻く。
「これはあくまで俺の勘なんだけどさ」
「おう」
「俺はこのゲームの対人で一番人気ができるのがデュオだって思ってるんだよ」
そう、だから俺はキッカと成長することについつい熱を出してしまうのだ。
◇◇◇
「デュオ?ソロじゃなくてか?」
現代VRMMOでプレイ人口が多いのはやっぱり一対一である。
「ああっと高峰。お前は理解してるだろうけどお前の質問に答える序にキッカにも予備知識を踏まえさせていいか?勿論、ルフさんも」
「ああいいぜ」
「キッカ、ルフさん。分からないことがあったら後で聞いてやるからとりあえず聞く感じで」
うむっと二人が頷くのを見てちょっと懐かしむ。前のVRでクランリーダーやってた時はこうやって新人に死ぬほど教えたものだと。
「えっとだ。まず現代VRMMOの戦闘がどうしてスポリティーに振り切ってるかを軽く説明する。一つは教えた通り政府がプレイヤーの運動を促す仕組みにしろって言ってるから。で、もう一つは見世物だからだ」
「見世物なのじゃ?」
「現代VRMMOで人気を得るってことはV-sportsで人気を得るってことなんだ。確かにストーリーは素晴らしい。でも、コンテンツには限りがある。多くの人を長く熱狂させるのはやっぱり対人なんだ。だから運営はここで人心を掴まなきゃいけない。そのために必要なのが流動性だ」
「流動性ですか」
今度はルフさん。彼も気になってきた言わんばかりに身を乗り出している。
「お前らには分かりにくいかもだけど、大昔VRMMOが無かった時代、e-sportsって呼ばれててそこで人気なのはFPSや格ゲーだった。MMOは無いということはないけどそこまでだ。それは数値で殴り合うよりも動いて躱して、プレイヤースキルが出るゲームの方が見世物としては白熱したって意味だ」
オホンっと軽く咳をして俺は更に続ける。
「現代VRMMOは兎に角、金が掛かる。そのために見世物として成立しなければならない。だから流動性のあるスポリティーが高いものばかりになっている。これが背景。ここまでいいか?お前ら」
うんうんと迫る二人。何か高峰も混ざってるのは置いておこう。でっと俺はアイテムボックスから取り出した職玉をドンっと机に置いた。
「そして、これは流動性を与える画期的なアイテムだ。これは現代VRMMOで明らかにトップを狙うために作られたアイテム。でも、ソロだと発揮できない。こいつが生きるのはデュオから」
「すまぬ質問じゃ」
後でって言ったのにと思いつつキッカに顎で示す。
「人数が多い方が盛り上がるんじゃないのかのう?」
「ああ、でもVRMMOはガチパを集めるのが大変だ。人口が多いのはやっぱりなるだけ少ない方だ。何より運営は絶対に一番盛り上がるであろう対人を予想してるはず」
「そうか」
高峰が納得したようで、俺もそうだと笑みを深めた。
「あくまで勘。VRMMOは無駄ものにあまり力を割かれることはない。従来の通りのAIで十分、お前たちをそこまで高性能に作る意味がない。いや、意味がある。ヴァラエティー・パラシス運営が何を武器として現代VRMMOトップに乗り出そうと思っているのか。それはこれまでに全く無かった新しい形の対人戦、高性能AIとプレイヤーとのタッグ戦だ」
これが俺──桂木流星がキッカとの冒険に拘る理由である。そして当然、これは俺だけでなく名のある多くのプレイヤーが気づき動き始めていた。
この物語は廃人遊戯譚──強者は主役のみならず。
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流星ノート〇
桂木流星というキャラクター。彼はMMOにおいて特殊な力を与えられることはありません。彼は気づき、統率力、ムードメーカーなど私がMMO体験で感じたこの人凄いなーって実際に出会った凄い人のスキルを持った現実寄せ集めキャラとなっています。




