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ドガティス 表エンディング「そして土竜は天に上った」

 別れを済ませたようで王となったロシューがびっこを引いて帰ってくる。俺が無言で屈んで背を向けると溜息をついた彼が俺の肩に手を置いた。


「全く、王になったというのに私はまたこうやって荷のように背負われるのか」


 俺は背負って軽く語り掛けてやった。


「その方がロシューらしいって」


「そうじゃなロシューらしいの」


「おいおい酷いじゃないか。私はよくわからないけど王になったんだぞ」


「よくわからないって何だよ」


「だってドラゴニアって称号貰って王って正直どういうことだよっていう。空気的に言い出せなかったけどさ」


 確かにそうだと皆で笑って俺達は歩き出す。ロシューはぽつりと話し出した。


「かつてこの世界ヴァラティエの神パラシスは言った。稀人とは精霊のようなもの。ふらりと現れては瞬きのように消えてゆく。そしてその目的は戯れでありそこに悪も善もない。通り過ぎる風と思えと」


 正直この辺り気になっていたが初めて聞けた。他のNPCに聞いても上手くはぐらかされるのである。


「風か」


「でも私はこの出会いに深く感謝したい。例えそれが定められた過去であったとしても良き縁であった」


「野暮だと思うけどこいつは返さなくていいんだよな?」


 そう俺がアルカナハートを見せると彼の鼻がひくひくとするのが見えた。


「勿論。未来を見通す力は便利なものだ。けどそれは溢れる可能性の一つに過ぎない。君たちもその力を得たら気を付けるといい。いや、君たちが呼ぶそのシナリオオとやらも全くゼロではない。そう思うべきだ」


 ふむ、シナリオ上の都合か。それともクエストなどをやりまくったりしたら新しい道が開くというゲームマスターからの啓示なのか。ちょっと引っかかりを覚えるセリフだと考え込む俺の横で


「私は掘り当てて見せるモグラの未来を。そう彼らと約束したからね」


 とロシューの爪が動かされたのだった。


 ◇◇◇


 出口に辿りついた俺達は当然、ピューイが乗ってきた空船へと入る。が、その操縦席を前にしてもロシューが動かないためキッカが恐る恐る彼に聞いた。


「もしかしてなんじゃが、お主操縦できんとか言わんじゃろうな?ロシュー」


「え?そりゃ無理さ。こういう細かな作業ができないから土竜族はスチームゴーレムを使っていたんだから」


「そっそうであったな。じゃが、それではわしらここでお陀仏ではないのか?」


「いや、君ら稀人は死なないんじゃなかったのかい?」


 あっそうじゃったと納得するキッカにロシューは苦笑し彼はそれにと続ける。


「大丈夫。ほら見ててご覧」


 するとロシューの言う通りタンタンタンっと自動でエンジンが動いておおおっと全員で声を揃えて驚いた。


「先を見ている彼らが何もしないわけがないさ。それに」


「それに?」


「稀人が傍にいると何でも上手くいってしまうような気がしてね」


 それはそうかもだが、AIに言われてしまうと見も蓋もないと何となく高峰を見て俺は彼に睨まれるのだった。


 こうして脱出した俺達。遠くに天に向けて口を開くスチームタイタンが見え、凄まじい風鳴りが悲鳴のように聞こえた。ぼんやりと見届けていればロシューが俺の元へやってきた。


「稀人一つ頼みがある。私を上に運んでくれないか?あと、少しだけ一人にさせて欲しいんだ」


 依頼として表示されなかったが勿論と頷き運んでやる。そんなロシューの希望を果たし俺が梯子をつかって降りると上から手伝ってくれた高峰が飛び降りてきた。


「よっおつかれ桂木」


「おつかれ」


 互いにストーリーの感想を言い合いながら何となく二人で甲板へ向かう。結局、こいつと最後まで駆け抜けちまったと思いつつその途中にいたキッカと喋る柱に掴まったルフさんを指さして聞いた。マジで喋らないから時々存在が消えるがルフさんは普通にいるのだ。


「なあ高峰、ルフさん入れてやんなくていいのか?」


「ん?ああ、アイツ自己主張しやがらねえから俺の勘だけど最後は見たそうだったつうか何となく。まあ、マジで嫌なら流石に向こうから言うって」


 そして端っこに辿り着いた俺達は足を投げ出すようにして座った。ちょっとふざければ真っ逆さま。リアルなら絶対にできない。俺達は激し目の風で髪を揺らしながら彼方となったスチームタイタンを眺めた。そういえば夜だ。空には無数の星々があがっている。雲の巨人の動きを高峰が捉え、彼が顎で示した。


「何か始まる見たいだぜ」


 高峰の言葉が合図であったかのようにぐんぐん伸びた雲の巨人は顔のパーツを形作っていた虚空から神々しい光を放った後に、爆発を起こした。ドパァンというまるで花火が弾けた音の後でザアアットいう波の音が鼓膜に響く。


「うおっ」


 雲が向かってきて思わず呻いてしまった俺は煌めく一面の流星群をその瞳に収めた。ドガティスのエンディング曲が流れだし、心の底からじわっとした感動が沸いてくる。


「終わっちまったな」


「ああ終わった」


 凄い光景だ。更に雲がスクリーンとなって影で土竜族の生活も映し出されている。


「ほんととんでもないなこのゲーム」


「なあ、桂木。これ一個のストーリーなんだよな」


「だな。一個でこれだ」


 短いと思う人もいるかもしれないがVRMMOとしてこの長さは破格である。


「何個あんだろうな町って」


「分かんねえけど少なくはねえんじゃねえかな。深層とか分けわかんねえのもあるみてえだし。まあその辺りはアプデで解放だろうけど」


「俺は採算取れんのか心配になってきたな」


 高峰の言葉に確かにと同意しつつ有栖川の話を彼にも教えてやった。


「有栖川さんが言うには今まで以上にAIに任せてんじゃねえかって話しだったな」


「あーそりゃそうか。人力じゃ無理な領域だよな」


「まあ人件費的な意味だとどっちが安くつくかは怪しいけどな」


「なあだったらよ桂木」


「ん?」


「このシナリオもAIが作ってのかね」


「あーそういうことになんのかな?」


 俺はじっと流れるスタッフロールを見届ける。そういえばライターの名前を知らないと。


「おおお!流星見るんじゃ凄いのじゃ」


 そこでキッカに話しかけられ意識が彼女にゆく、横にはロシューもいてキッカに手を借りて降りてきたようだ。ルフさんは柱からこっちを窺っている。


「見るって何を?」


「上じゃ上」


 言われて顔を上げて俺も高峰と共に息を呑む。そこにあったのは銀河。無限の星々が天の川となって流れている。


「すっげえ」


「あれは龍脈だよ」


「あれが?」


 驚き聞き返せばロシューが頷いた。


「私も始めて見る。恐らく大量の始祖達が一度に魔素へ還ったことで起こった現象なんだと思う」


「つうことはだ。やっぱお前らって竜?」


 高峰の問いにロシューは首を振った。


「それは分からない。伝承にもないことだ。けど、私が貰ったドラゴニアという称号とあの龍脈を見ても無関係でないのは確かだろうね」


「なあ、魔素に還るって話だけどドガティスは大丈夫なのか?」


「土竜は死んで天に上るという元の流れに戻る。いずれスチームゴーレムは使えなくなり、ドガティスも靄のないモードモールにゆっくりと落ちるだろう。私たちは下界に戻る。そこから導くのが私の役目。ただ……」


 ロシューは一度言葉を止めて空を見上げた。


「私はその前にそれを支えてきた守り人と対峙することになるだろう。話し合いで済めばいいがきっと闘いになる。私は王となったわけだけどまだ名ばかりで何も持ち合わせてはいない。加えて君たちにアルカナを渡したから正真正銘の一文なしだ。私は王として口説き文句を考えなきゃならない。そして一つだけ思いついた。聞いてくれるかい?」


 どうぞと示せば彼は丁寧にドガティス式の礼を行った。


「私、ロシュー・ドガティス・ドラゴニアが請う。稀人よ、私と共にドガティスの行く末を見ないか?勿論、特等席でだ」


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 浮遊国家ドガティスストーリー裏

 ロシューからアドラーとの対面に付き合って欲しいと頼まれた。

 闘いの予感がする。厳しいと感じたら敢えて避けるのも冒険者の心得だ

 報酬はない。

 承諾 拒否

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 そうだった。まだ終わりじゃないのだこのゲームのストーリーは。


「そういえば裏とかあったな。どうする?桂木。表の奴より手強いとなると厳しいだろうが、リーダーはお前だ」


 決めていいぜと言われる前に承諾を押してしまったのは内緒。オホンと誤魔化しつつ俺は告げた。


「勿論、無理かどうかの判断はやってからだ。ってことで受けるよロシュー」


 ってことでこれがこのPTでのホントの最終決戦、裏ストーリー『守り人アドラー大臣との戦い』に俺達は挑む。

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