表・boss 決着 剣術十式スキルその名
探す。余り時間は掛けられない。白煙の中でザウギアと闘う仲間達の姿が見える。
「壁」
剣術スキルに限らず十式は一発の威力が強力な代わりに発動条件が難しく、放った後の代償デバフがかなりキツイ。つまりはトドメ──決め技だ。
剣術十式に必要なのは壁。平地で発動はできない上、効果がある位置に仲間がいると使用できない。発動時は一対一にならなくてはいけない。
高峰の言った通り、あれを引っ張って家のある方へ持ってくのは無理だろう。護衛対象である飛空石近くのここは広場となり開けている。
ならばどうするか──
(かなり荒業で出来るかわかんねえが、やるしかねえ)
っと俺は未だ立つピンクを見たのだ。
名前を忘れてしまった。~とか咲さんだったか?彼女は俺が来たことに驚き、目を丸くしていた。
「貴方……」
「ピンクさん話がある」
「ピンクじゃない。私は夜桜。髪色で呼ぶな馬鹿野郎。兎に角、貴方たちに謝るわ。ここまでとは思ってなかった。馬鹿にしてごめんなさい」
俺は彼女を見ずに距離を測りながら口を開く。
「いや、そのままどうでもいいから手伝ってくれ」
「手伝う?私設定でそっちに入れないんだけど」
俺は目を細めて見極め場所を指して指定する。
「そこに移動して立っててくれないか。動かないように」
「え?何でよ」
「いいからアンタに掛かってる」
俺の圧に押されて、わかったわよと悪態をつきながらも指示に従ってくれた。軽く宙を手で触っていけると判断する。地図を表示して、計算。俺は各自の発動場所を打ち込んでゆく。それを背後の彼女が覗き込んだ。
「アンタだけ何やってるのよ。あいつら戦ってるけど」
「場所を見極めてる。スキルをぶち当てられるように」
「ぶち当てる?ってことは十を使う気なんでしょうけど無理よ。あれは早い上に両手の腕を盾にされれば例え十でも通らない。そのためには崩して動きを止めないといけないわけ。それはフルパでも厳しい。アンタ達は4人な上にサポーター2。そんなの絶対に」
「ピンクさん」
と言葉を遮って俺は彼女を見据えた。彼女は怯み口ごもる。
「何よ」
「アンタは多分、見た方がいい」
見た方がいい?っと彼女は鼻で笑った。
「自分たちが打ち勝つところをっとか言うつもり?」
「違う。このゲームのサポーターが凄えってことろをさ」
俺はそう言ってキッカに地図を送った。後は仲間を信じタイミングを計るだけ。ふーっと息を吐いて目を瞑る。余計な情報をシャットダウン。必要なものを音だけで測る。
真っ暗。そして高ぶっていた心が平常となる。キッカが攻撃を躱した。彼女はメニューから俺の情報を見て職玉を潰した。フォローしたのは高峰か。彼がスキルを放った。更にそれをルフさんが支援する。
キッカがルフと高峰にバウンドコートによるバフを掛けた。そして彼らの援護に回る。俺はゆっくりと抜刀の構えをとる。彼らから背を向けピンクさんが慌てた。
「アンタ何やってるの?」
悪いが答える暇がない。ルフさんが射抜き、高峰が踏み込んだ。そして高峰が咆哮する。
「武術十式天元阿修羅っ」
(ここ)
っと愕然とするピンクさんに向って踏み切ったのだ。
◇◇◇
「剣術十式っ」
そのスキルを唱えるだけで体がズンっと重くなる。今まで扱ってきたものとは桁違いの幻想ギアが現れ、ギィィイギギっと奇怪な音を響かせている。
完全に俺が切りかかっているように見えたかピンクさんが固まっているのが丁度いい。俺は有難いと彼女の前にある透明な板を蹴った。セクシャルコードを悪用。壁として利用した。
(いけっ)
スキルの効果によって舞い上がった俺はそのまま反転するように剣ガギア・ブレードを鞘から抜き放ち、高峰によって押されたサウギアに向けてスキルを放つ。
「空閃っ」
ギアが砕け、俺の横凪から飛ぶ斬撃が放たれ俺自身の姿も掻き消える。
「Gugi?」
斬撃はズガっとサウギアの胴体を分かつと地面に当たる直前で俺の姿へとなり替わり、地を踏んだ俺は振り向くように手に持った短剣で見えたコアを突き刺した。
「マギア」
ドンっと刺した短剣から直線的な衝撃破が起こってサウギアのコアを粉々に吹き飛ばす。これが剣術スキルの必殺といえる技──空閃マギア。
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剣術十式『空閃マギア』
斜め下へ飛ぶ強力な斬撃に自らを変異させて移動し、着地の瞬間裏拳で二刀目を突き刺す剣の極意。無慈悲な一撃だがその反動は計り知れない。一分間、全スキルの使用不可職玉禁止。全ステータスダウン。更に発動後硬直による行動不能時間5秒と多用はできない
壁が無くては放てず平地での使用不可。リキャストタイム5分
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弾けたコアがキラキラと輝き、魔岩巨兵「サウギア」が蒸気を吐き出しながら崩れ落ちる。その振動に重い体で耐えて彼らを見ればキッカとルフさんは呆けていて高峰だけがこっちに向って歩いていた。彼が手を上げたため俺もそれに合わせ──
バチーンっとハイタッチを行った。ジンジンと痺れる手を握り込み俺達は叫ぶ。
「しゃああああああああああ」
「おらあああああああ」
互いに目を合わせて笑い合った。
「勝ったな桂木」
「ああ、俺らの勝ちだ」
勝利曲が流され雑魚が引いてゆく。ふうっと勝利の余韻に浸っていたがそこに声が掛けられる。ピンクさんが入ってこれるようになったらしく怒りのオーラを纏っていた。
「げっ」
「げっとは何よ。こんな可愛い子が来てあげてるんだから喜びなさいよ。えーえー確かに今回私が悪いわよ。謝るし、謝礼も後で送るわよ。でもねーああアンタっ私のセクシャルコード壁に使ったでしょ」
プルプルと震える指でさされ、俺はスッと目を逸らした。
「さっ最大値にしてるだろうなって思って、良い壁だなってっつい」
「いい壁だな?ですってええええ」
ぶはっと高峰が噴出した。
「あーやべ。權田さんの言う意味わかったわ」
「あ!それいい加減教えてくれよ高峰」
「アンタはまず私の話を聞きなさい」
「はい」
ギロっと睨まれて俺はシュンとする。今更だがピンクさんがちょっと姉貴に似てることに気づいた。
「いいかしら、セクシャルコードっていうのはね。私のようなか弱い女の子が乱暴な男の子に悪さされないようにあるものであって、間違っても足蹴にするためのものじゃないのよ」
「はい」
「ははっ怒られてやんの」
「アンタもアンタよ高峰」
「は?俺は関係ないだろ?」
「こいつがそういう奴って教え時なさいよ」
「そんなのちょっと話したらわかるだろ?桂木が頭のネジ外れてるくらい」
「いや、ちょっと待て高峰だけには言われたくないぞそれ」
サポーターにジト目で見られてることにも気づかず俺達はぎゃいぎゃいと言い合って、我慢できぬとピンクさんこと咲夜が声を荒げた。
「兎に角、後日天上の戦乙女から謝礼はするわ。でもアンタにも何かやってもらいますからんえ」
「「あ」」
バシュっとピンクさんが消えた。彼女も予期してなかったようで最後語尾が変な感じになってた気がする。
「ストーリーに入ったみてえだな」
「助かった……」
俺がそういえばんっと高峰は伸びをした。
「しっかし、あれだな。こっからストーリーとか落ち着く暇もねえっつうか。感情がぐちゃぐちゃになるな」
「まあ、MMOって元々そういうゲームだしな。最近はストーリーなかったからまだマシだけどあったらこうなるだろ」
もうすぐエンディングと言わんばかりにドガティスで出会った主要なメンバーが駆けてくる。コウカ姫、オババ、多くの兵を引き連れたモグラ隊長のパウゼル。そしてどういう訳かゴーレム頭のピューイを届けたあの家族までいてそのピューイとロシューの姿がなかった。
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流星ノート〇 サポーターという存在
まだ多くの者が気づいていないがこのサポーターは従来のAIとは画一した存在である。彼らはステータスでは気づけないこれまでのAI以上の知識獲得能力を有している。ただ、それが強さに繋がるかどうかは定かではない。
彼らサポーターはその知識獲得能力が故にMMO初心者が陥りがちな恐怖や不安を抱えることがある。そういったものを解消してくれるMMO説明大好き野郎が傍にいたことがキッカにとって最大の幸運であったといえるだろう。彼に選ばれたこといや彼が選ばされたことがキッカにとって幸運であった。
流星ノート〇 ストーリーボスについて補足
ストーリーボスは一般的な野良でもレベルを上げれば勝てるようになっている。流星達が苦戦しているのは低レベル、PT人数の少なによるローテンションの限界などがあげられる。早期決着も体力が低めに設定されているその証拠である。が、彼らは極限的な闘いを演じているため戦闘経験値、チームメイトとの連動は深まっている。
物足りない廃人には強敵モードが追加され、素人にはお助けモードが実装されることになる。MMOのストーリーはやはり多くのものに楽しんで貰うものなのだ。超高難易度クエスト 超高難易度フィールドボス 超高難易度ストーリボスも実装予定




