表・boss 魔岩兵ウギア・サウギア②
俺たちを睨む4つの宝玉。一瞬で無理だと判断。俺は撤退を指示する。
「一旦、防衛線ギリギリまで引く」
「投げんのか?」
「いや、せめてキャストを回復させる時間を稼ぐ。俺が剣士になれるまで高峰とルフさんに捌いて貰う」
「言ってくれるね。こいつら4体を捌けだって?」
「じゃなきゃ文句なしの負けだ。別にゲームだから最初からやればいいが俺はただで負けるのが嫌いだ。せめて足掻く」
「奇遇だな俺も何もせず投げるのは御免だ。ルフこっちに来い大仕事だ。うちのキャプテンが無茶苦茶言いやがる。攻撃せず重心を後ろに下がることだけを考えろ」
「了解マスター」
まだ言葉に気遣いはないが、高峰とルフさんの間に信頼が生まれてきているような気がする。俺も自分のサポを見た。
「キッカ動けるか?」
「うぬ、まだスキルによるデバフが抜けんようじゃ。放って」
「嫌じゃなきゃ背中に乗れ」
「じゃが」
「時間がないから早くな。今は、あいつらを仲間を信じるべき場面さ」
頷いたキッカをおぶさって、俺達は駆けだした。高峰とルフ。その二人のコンビは開花し始めているように見える。呼吸が合い、互いに助け合っている。
「のう流星や」
「なんだ?」
「2匹でもギリギリだったのに勝てる算段があるのかの?」
キッカをおぶったことで俺も若干のステータスダウンを起こしている。気合で変わるものではないがステータス限界まで必死に足を動かしながら彼女に応える。
「ない。でも、スキルが使えることで0%から0,01%になるかもしれない。向こう側のあいつらがまだ生きていて共闘してくるかも知れない。諦めたら終わりだ」
「わしがもっと強かったら……」
「キッカ、MMOの闘いに英雄はいねえ。初期に落ちた奴がいてもそいつ含めて皆で勝ったんだ。全員で全力出して勝つそれがMMO本来の闘いだ。まあソロで目立つ方がカッケエって思うかもしれねえけど、皆で山場超えた勝利の美味さの方がMMOではヤベえんだ」
「おい、こら!いつまでイチャついてんだてめえらこっちは限界だぞ」
ヤベっとなって俺は職玉によって騎士に変わると、下ろした彼女の背中を軽く叩いてやった。
「自信が無くても下を向かなくていい。PTとして戦ってる。だろ?」
「うむ」
「だからイチャついてんじゃねえつってんだろ」
ザザザっと敵の攻撃によってノックバックした高峰が悪態をつく。
「分かってるって。で?何でちょっと見ねえうちにでかくなってんだよ」
「知らね。奴ら合体しやがった」
俺の前で巨大な魔岩兵がルフさんを吹き飛ばした。
「GURAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
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巨兵魔岩サウギア 魔岩兵ウギアとサウギア。計四体が合体した姿。4つの宝玉は敵を見抜き、巨大な腕は合わせることで大楯となる。
合体は自らの意思ではなく特性によるものである
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バっと舞うようにルフさんが俺達の傍で着地を決めて彼は弦を弾いた。
「マスター力は倍以上と考えた方が良いかと」
「直撃で一発かぁ?雑魚もヤベえ。グズグズしたら囲まれやがるな」
「流星」
キッカは鑑定士に転職していた。彼女はキリキリとモノクルを動かして情報を見通している。
「どうした?」
「あれの体力が減ったままじゃ。ダメージが継続されたままになっておる」
「ってこたあ第二形態とかじゃねえみたいだな」
「ならいける「無理よ」」
バっと振り向けばライン際に立って肩で息をする天上の戦乙女のPTリーダー夕笹中咲夜がいた。多分、ステータス限界スピードで駆けてきたのだろう。彼女は聞いてもいないのに話し出した。後衛であるキッカとルフさんが留めてくれてるから早く向かいたい。
「あれは単独PT撃破報告がない魔物。ただでさえ欠けたPTなのにレベルが低い貴方たちには無理。今回は、完全に私のミス。謝るし弁償もする。だからもう一度最初から」
「うるせえ」
「ちょっと黙っててくれピンクさん」
「ぴっ……」
申し訳ないがそれどころじゃないと引き攣る咲夜さんを無視して、俺は高峰に告げた。
「高峰お前のキャストタイムが見たい。俺の方に送ってくれ」
「了解」
ピっと送ってもらい彼のステータスと同期させ表示させる。普段は邪魔になるのでこんなことをしないが今は必要だ。
「なっ戦おうっていうの?時間の無駄よ。やり直した方が効率が」
「ちょっと黙ってろ」
「「今一番いいところだ」面白れえところなんだから」
「邪魔しないでくれ」
言ったことが被ったと思ったが何も言わず駆けだした。静止の声が聞こえた気がしたが集中によって掻き消える。
「あれぶっとばすぞ高峰」
「ああぶっ壊してやる」
獰猛な笑みを掲げて俺たちは巨兵魔岩サウギアと対峙したのだ。
巨兵魔岩サウギア。こいつの巨体から繰り出される攻撃は身が凍るほどの迫力がある。AIであるサポーターであっても同じのようでキッカは腰が引け、ルフは厳しい顔をしていた。
「ルフさんキッカ!下がってくれ。前に出るフォロー頼む」
「了解した」
「わかったのじゃ」
(ヤバいっ)
チカチカっとサウギアの目である宝玉がランダムに輝き、それを見た俺は嫌な気配を感じ咄嗟に動き出していた。
「騎道五式っ!『転地極走』っ」
キッカと位置交換し、目の前に現れたルフさんを蹴った。そこを高圧のビームが抜け、向こうサイドで轟っと爆発する。その威力と起きた風圧にゲームでなければ冷や汗が流れていたはずだ。
「すまない助かっ」
「呆けんじゃねえルフっ!」
ヴァラパラのボス、サウギアは安堵する時間すらも与えない。ウギアも行った叩きつけ。けれど、その何倍も大きく更に──ぐぱっと口のように腕が開いた。これは躱しきれない。口の中は虚空、その中に無数の目があることを見て固まった俺の横でルフが弓を引き絞った。
「弓術三式『バックショット』・デュアル」
プレイヤーも使うバックショットを二発。その効果を受けてトントンっとルフさんの体が後ろに飛んで範囲外へ。その際、彼の目で俺を救う気なのだと理解した。冷静なルフさんが更にと吠える。
「弓術五式『極射転空』っつ」
極射転空──初めてこのスキルを自分に使われた。騎士スキルの転移技とはまた違った感覚。恐らく矢の慣性がそのままプレイヤーに乗せられる仕組みになっているのだろう。転移によって抜け出せたが大きく転ぶ。その目の前で──直前まで俺がいた位置に──ザウギアの攻撃で地面が揺らいだ。
「くっ」
思わず呻くが、それでもサウギアのラッシュは止まらない。突如、その打ち下ろした腕から大量のスチームが噴出したのだ。
【白ノ明海】
まるであの白靄を被ったかのように水の中にいるような息苦しさを味わい、視界が真っ白に染まる。怒涛の攻撃に脳の処理が追い付かない。
「ぐあっ」
「ぐっ」
ルフさんと高峰の悲鳴を聞き、俺は目の前に迫ったサウギアの手に彼らの身に何が起こったのかを知った。避けられずにヒット。
「うっ」
「ぐぬ」
キッカも持ち上げられるように巻き込まれた。恐らくダブルラリアットのような攻撃なのだろう。振り回されるように白靄の外へ放り出されてしまった。
(吹き飛ばし攻撃っ。んなのも持ってんのかよっ)
頭の中で立地を思い出し、地面を跳ね転びながら自分が崖に向っていると判断。
「騎道二式っナイトソール……」
防御を固める技を使用し、起き上がり剣を地面に突き刺して慣性を殺した。まさに崖っぷちでキッカを体で受け止め、相手をひと睨む。
白靄を纏う巨兵魔岩サウギア。その目々が再びチカチカと光る。
「流星よあの光線がきよる」
「分かってる。高峰を信じるしかねえ。あいつならやってくれるさ」
そんな俺の言葉に応えるかのように──
「堅術二式『ガウルカウル』っ!!!」
高峰が吠え、タゲが逸れた。その瞬間、カチッとキッカのモノクルが音を立てる。
「看破五式『アズビスアイズ』じゃっ」
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看破八式アズビスアイズ 弱点を見抜く 発動すると他の行動ができず、前衛距離で2分耐えなければならない 対モンスター専用
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キッカの前に夥しい数の文字が流れ、彼女はその中の一文をガシっと掴んだ。
「あったのじゃ!奴に弱点はある。体内にコアがある」
「聞いたかっ高峰」
通信で白靄の向こう側にいるであろう高峰と会話する。ビーム音の後で、彼は決死に声を上げた。
「中にだって?どうやって届かせる。糞固えぞコイツ」
「俺の10でぶった切る」
「やれんのか?」
「分からねえ。でも、それしか思いつかねえ」
はっと彼は笑った。
「ここでか?」
「ああ」
「あれは引っ張れねえ。高さはどうする?」
「何とかする」
一瞬シンとしてから彼は再び声を上げた。
「よし、今回はお前に御膳立てしてやるよ。しくったら奢りな桂木。ルフ聞いたな!気合いれてけ」
「了解だマスター」
ブツっと通信が切れ、俺は屈んでキッカに目線を合わせた。
「キッカ、職玉潰したら高峰に合流。場所だけ指定する。お前が高峰に指示し、お前の判断で技を決めるんだ」
「うむ、任されたのじゃ」
ポンポンと頭を撫でて彼女とわかれる。テンスキルを放つには壁が必要だ。ってことで俺は一人戦線を離脱するのだった。




