新装備とガワ職人
VRMMOを通して俺は数多のプレイヤーと出会ってきた。けれど、その中で面と向かって全ての種族廃を目指していると言った者は彼女を置いて他にいない。
それは冗談で言うにしても余りにも狂っているからだ。けれど直ぐに彼女が本気だと分かった。
「行くっすよ」
っと言ってからの彼女の鍛冶への鬼気迫るその集中。柊さんも凄いと思ったがそれを軽く凌駕していた。司法の狂気的な笑みが蒼く染まる。
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鍛冶術十式『へパイトスの蒼炎』
難易度が跳ね上がるが成功した時の質が向上大。
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幾何学模様が施された上位ハンマーを司法さんが振るう。カンっと火花が散り、延べ棒が剣の形に整えられてゆく。焼き入れなど現実と何ら遜色のない工程を踏み、更に魔法や付与を使って完成へともってゆく。
例えCランクとはいえそれは現状可能な技術の粋を集めたものだった。
「そんな熱心に見ても私はもう理聖っちのものっすよ」
「いや、そんな気はねえ。ただすげえなって」
「嬉しいこと言ってくれるっすね。でも底辺君もわかってると思うっすが、それはそのまま理聖っちがこのランクの装備をPTに配れるってことを意味してるっす。そんな彼と争って勝てるっすか?」
「勿論」
その答えに満足と言わんばかりの顔で司法は俺に完成したと片手でその品を突き出した。俺はそれを受け取り、その余りの出来に鑑定を掛ける。
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ガギア・ブレードC++ 高品質
ガ式シリーズと呼ばれる打ち刀。製作者によって高品質にまで高められている。
ギアと名の付くスキルの威力が微量ながら上昇し、最大溜め時間が最大0.5秒アップする
威力165 耐久1200
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俺の装備。まだスキンを貼っていないので見た目は地味だが、嬉しくて仕方がない。全員に感謝だ。
「司法さんこれはいくら何でも貰いすぎだ。少ないけど金をって」
いない。見惚れすぎたか、彼女は忽然と姿を消していた。次の国がとんでもないと彼女は言っていた。自分はどこまでいけるんだろうか。ビュっと剣を一振りする。明日でここの物語は必ず終わらせよう。俺は高みを見据え始める。
◇◇◇
「はい、桂木君できたわよ」
「おおおおおおお」
次の日の朝。装備ができたと柊に連絡すると早速彼女がガワを作ってくれた。ちょっと刀っぽさは失われたが、ちょっと地味だったガギア・ブレードがギア仕掛けのカッコいい剣となった。刃が大きくなったためペナルティーによって威力が落ちてしまったがそんなの全く気にならない出来栄えだ。
俺はウットリして頬ずりした。
「あーカッコいい。俺の新しい相棒」
「ちょっとそういうの人のいない所でしなさいよ。私まで恥ずかしいじゃない」
「ぬー流星の相棒はわしなのじゃ!棒切れじゃないのじゃ」
「あー現実に持って帰ってこいつと寝たい」
「キッカちゃん駄目よこいつ。世良君化してるわ」
「どうしておのこという輩はこうも武具に弱いのじゃ」
だって男のロマンじゃん。MMOの装備数値見比べるだけでもテンション上がる奴この中にいない?それって俺だけ?
「柊さん今度お礼するわ。何か欲しい装備とかないか?取ってくる」
「いいわよ。私はそこまで拘りないから店売りで十分だし、ただお礼をくれるっていうのならあの剣の作者を教えて欲しいんだけど?貴方有名クランにでも依頼したの?」
まあ別に内緒にしろと言われてないので言っていいだろう。
「いや、学校のやつ」
「ホントに!?一体誰!!教えて」
凄い食いつき。まあハイエルフを目指すものとしては当然だろう。
「先に言っておくとそいつに依頼するのは無理。偶然だったし連絡先も知らない。そいつを作ったのはSクラスの司法レア」
「司法レア……」
「ほら、俺の幼馴染の理聖ってやつのPT。マグドール校長に褒められてたろ。トップトップトップみたいな感じで」
それで理解したと彼女は頷いた。
「現状トップの……。そう、職人まで凄い人を抱えてるのね。何よ、アルファベットは関係ないって言ってたのにちゃっかりSに凄い人集まってるじゃない」
「あの校長なら実は実力でアルファベット分けしてましたーってまたひっくり返し兼ねないしな。まあ、ちゃんと自分の目で見て見極めろってこったろ」
結局、彼の伝えたかった要点はそこ。Sが強かろうが弱かろうが関係ないのだ。
「ねえ、桂木君一つだけ聞いてもいいかしら」
「いいけど何だよ改まって」
「貴方は多分、このゲームに本腰を入れていく気よね」
「ああ」
それはもうとっくに決意した。俺はこのゲームに全力を注ぐ。もう俺はヴァラパラというゲームに惚れたのだ。
「多分、新見も世良君もナズナもそう。でも、私は……迷ってるの」
「ふむ」
「ガワ職人はVRMMOを掛け持ちするもの。ただ、このゲームは難しくて多分絞らないと歯が立たなくなる。勿論、トップじゃなくても食べていけるし私が目指すハイヒューマンも掛け持ちしてる人。でも」
「これ一本でやりたくなっちゃったか?」
コクっと彼女は頷いた。
「これはガワ職人だけの話じゃない。VRMMOで生活する皆、サービス終了によって職を失う危険性をもってる。貴方は将来に不安とか考えないの?」
「悪い、俺ハイヒューマンに絶対になる以外で将来のこととか考えてない」
「貴方に相談したの間違いかしら?」
「間違いないな。ただ。あくまで俺の考えでいいってなら、まず柊さんが目指したいものを明確にすべきじゃねえかなって思うかな」
「目指すものを明確に?」
「いやだってそこで迷うってことはガワ職人掛け持ちエルフになりたいって柊さんとヴァラパラでトップ取りたいって柊さんに分かれたってことだろ?」
「そうね……」
「なら、まずそこを決めるべきだと思う。柊さんはその憧れの人になりたいのかそれともその人を超えたいのか。話聞いてるとそこが定まってないように聞こえたな。将来うんぬんはそれ決めてからでいいんじゃねえか?一番ヤベえのが中途半端にふよふよすることだろ。将来の不安とかを言い訳にしてさ」
柊さんの眉間に皺が寄る。
「まだ私の目標が定まってない。確かにそうかも知れないわね。ありがと桂木君、もう少し考えてみるわ」
スタスタと歩く彼女を見て今ので良かったんだろうかと悩む。余り真面目な話は苦手だ。というかだと俺はキッカを見た。最近コイツ大人しいと。
「なあ、キッカお前最近会話に混ざってこねえけど成長しちまったのか?」
俺達を窺うことが多くなったのには気づいている。
「うむやっと気づいたようじゃの。そうじゃキッカは日々成長しておるのじゃ」
「そいつはまたどういう風の吹き回しだよ」
「お主らは学園から見極めよという課題を出されたのであろう。なら、わしも測ろうと思うてな」
「測る?何を」
キッカはドヤ顔でこういった。勿論、人じゃと。
◇◇◇
本日がこの国のストーリー最終日となるに違いない。高峰と合流した俺はさっそく武器を自慢した。何気なく装備するのがコツである。
「あれ?桂木そんな装備持ってったっけ?お前」
(きた)
「ん?ああ、ちょっと新調したんだよ。見るか?鑑定使って」
「お主、鼻の穴が膨らんどるぞ」
数値を見てうおおおっと興奮する高峰の姿に心が躍る。何故、MMOって人に自己武器自慢するのがこんなに楽しいんだろうか。
「すげえこれどこで取ったんだよ」
「まあちょっとな作って貰った」
ああ愉悦。
「流星お主、鼻の穴が膨らんだままじゃぞ」
「お前だけズルいぞ!桂木っていいたいところだけどな」
そうニヤッとした高峰が俺に手に嵌めたグローブを見せてきた。
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ガニアの手甲装具C+
連続ヒット数に乗じて一定ダメージ量増加
一低確率でノックバックが入る
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「何……だとっ」
「ふっ俺はダンジョンでゲットしたぜ。あとこういうのもゲットして」
「それなら俺もこういうのを」
「いつまでやっとるんじゃ貴様らは!はよいくのじゃ」
あっすいません。でも、こういうのって醍醐味なもんで。




