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スチームゴーレムと世迷迷子

 広い。俺が最初にドガティスの町全体図を見た感想がそれだ。町自体はストラージュの1.5倍程度だが坑道がダンジョンになっていてそれが各所8個も存在しているとのこと。これは空の上といっても冒険のしがいがありそうである。


 掲示板もチラっと覗いたが俺も同意見。現状、過去最高のVRMMOだと俺は思う。


 勿論、ここから息切れして崩れたゲームは多い。そんなもの腐るほど見てきた。


 でも有栖川からあの話を聞いた俺は大丈夫だと思ってる。これまで人力でやってた部分ですらAIに任せているのではってあの話。あれが事実ならこのコンテンツ量が今後も続くのではと思ってしまうのだ。まさに最高のゲーム。


 ただ……。街の観光で俺のテンションが上がり切らない。それはその有栖川の話とドガティスの町の様子がリンクしているせい。


「ぬ、どうしたのじゃ流星」


「ああいやちょっと考え事だ。悪いけど地図みといてくれよ、宿な宿」


「うぬ」


 返事したキッカの横をズンズンっと鉄の体を持つスチームゴーレムが抜ける。その前には土竜族が歩きゴーレムは付き従っている。彼ら土竜族はゴーレムを使役している。これがこの町の日常風景。


 スチームパンク的な街並みを持つ浮遊国家ドガティス。この国はふんだんにとれる鉄と土竜族の頭脳によって高度な都市景観を築いている。


 ただその重役を担っているのが精霊を宿したとされる土くれ人形──ゴーレム。何故なら土竜族は頭脳があっても彼らの長い爪と太い指が邪魔し自らもの作る事ができない。


 つまり彼らにとってゴーレムとは体。切り離したロボットのようなもの。


 じゃあ、ゴーレム対して彼らが酷い扱いをしているかというとそんなことはない。笑いかけてる者もいるし、おぶって貰ってるのものもいる。


 ゴーレムと土竜族の仲睦ましい光景も見たし、攻略班の話によればクエストもそうしたシーンが描かれるものが多いのだそうだ。


 しかし、ここに条件がつくのだ。壊れたものでなければという条件が。


 彼らはスチームゴーレムを捨てる。彼らにとってゴーレムは所詮ものであるし、壊れたら動かなくなるので当然だ。彼らは上から投棄しそれがロシューのいた白靄モードモール形成しているというわけである。


 容姿は違う。でも、重なったせいでそれが俺にはまるで人の業に思えて……。


(考えすぎだな。年玉と喋ったせいだ。こんな妄想、暇な時にしろっての俺)


 軽く頬を叩いて気持ちを切り替える。ゲームはもっと楽しむべきだ。


「大丈夫かーおぬし」


「ああ、復活した。もう大丈夫」


 心配してくれる相棒は浅葱色のローブを羽織っている。シャンテのローブと名の付いたこの装備には隠蔽の効果、認識阻害の効果があり着ると目立たなくなるという不思議な衣だ。


 プレイヤーは装備不可。こいつはサポーター専用装備でサポを出した状態で隠したい人が着せる代物である。


 ちなみに、サポーター収納を買うと付いてきた奴。


 俺がキッカに装備させているのは俺のあだ名が再熱することを嫌ったというよりも彼女が嫌な目に合わないようにするため、やっぱ容姿的に舐められやすいだろうから念には念を。キッカにも楽しいままでいて貰いたい。


「ふぬーあんまり良いところはないのう。ほぼ人がこぬという話であったからその設定が反映されておるのかも知れんの」


「細けえな。まあ最悪、ストラージュのコロネロ亭にするか。もう転移石登録したしここには簡単に戻ってこれるしな」


「なら店にゆこうぞ流星よ」


「そうだな。後、ジョブも探して取らねえと」


 あっちなみにストラージュの騎士はもうゲットしている。やり方はあのアッシュの横にいた爺さん元騎士団長に指南を受けるというもの。


 クリア前にいけばミアを助けるために力を貸してくれ、クリア後にいけばミアの助けとなった礼として教えてくれるとってもいい爺さんだ。訓練中は煩いが。


 あの即修正を喰らった転地極走さんを覚えるには迷宮で出土する短剣を渡さないといけないがミアの首飾りがあれば無料で教えてくれる。


 とはいえ20万パラシスコインには及ばない。うん、後悔はしてない……後悔はしていないが……


 ◇◇◇


「かっ金がねえ。足りねえ。でも、カッケええええこれ」


 ドガティスの武器屋に入った俺はそのディテールに見惚れていた。サイバーパンク最高。何故、この意味不明な機械仕掛けは男心を擽るのか。


 俺が手に持っているのがグランドギアツヴァイサーという大剣でギアが付いて厨二デザインとなっている。だが高い。


「のう早く服屋に行こうなのじゃ」


「ちょっと待て、後5分いや8分」


「どんどん伸びてるのじゃ!服じゃ服!服」


「分かった。後、10分な」


「また増えたおるではないか!」


 しかし、これは本格的に金策しないとヤバそうだ。うちのお洒落番長も小五月蠅いし。ただ、お金問題でヤキモキしているけどお金に価値があるってMMOでいいゲームの証だと俺は思ってる。


 だって、それはものに価値があってそれだけ取引を生んでる証明でもあるからだ。ここのバランス取りが下手な運営だとお金を供給しすぎて価値が崩壊し、装備取らずに金だけ貯めてりゃいいじゃん状態になる。


 そうなると世界の魅力が激減する。報酬。それがプレイヤーを惹きつけるものであるから。ちょっと頑張らないと手に入らないものを如何にして作るかそれが運営の腕の見せ所──こんな感じで。


「あああ欲っしこれ欲っし」


「何そんなの欲しいの桂木君」


 ぎょっとして見れば見覚えのある眼鏡。黒髪美女、柊さんが。まあマアト天秤には買い物することまで伝えていたので会ってもおかしくない。


「おおお柊ではないか!息災かの」


「久しぶりねキッカちゃん。でも、そこまでじゃないでしょ一週間ぶりくらいかしら」


 ところでと俺は柊の背後にいる女の子に視線を移す。初めて見る顔。茶髪のストレートで長さは肩で切り揃えられている。


 クリリとした目に通った鼻筋。彼女も柊さんと違うものの美少女。照れ屋なのか俺を見る目が泳いでる。


「ああ、彼女はCクラスの世迷迷子さん。今私、彼女たちのPTに入れて貰ってるの私」


「へー」


「世米迷子です。その……よろしくお願いしましゅ」


「Fの桂木流星だよろしく」


「キッカじゃよろしくじゃ」


 世米さんがキッカにぎょっとしていた。まあ、無駄に言いふらすような人じゃないと願っておこう。


「で、桂木君。一緒なのは無理だけど似たものなら作ってあげるわよ私」


「え!マジ!?」


「勿論、ガワだけよ。ほら、私貴方には言ったでしょ?ガワ職人目指してるって。ここで解放されるからレベル上げついでにマアトの天秤の子達に作ってあげようって思って聞いて回ってたのよ。どんなの欲しいかは見るのが早いから」


「おおおおおマジで感謝!ありがと柊さん」


 嬉し過ぎてつい彼女の手を握ってぶんぶん振る。


「ちょっと止めなさいって。ホント瀬良君といいそういうの好きなのね男の子って。後、必要素材書いて送るからそれは自分で取りなさいよ」


「勿論!」


 あー嬉し。これでダンジョンで武器を手に入れて張り付ければよくなった。念願の新装備ゲットである。ニコニコしていると本間さんが目を見開いて俺達を見ていて俺は首を捻り、柊さんは慌てた。


「あっ違うわよ迷子。私と彼はそんな関係じゃないから」


「ん?関係?」


「ほら、ハラスメント・コード切っちゃってるから私と貴方が付き合ってるってこの子勘違いしちゃったのよ」


「ああ」


 納得。ハラスメント・コードってのは対人距離設定のこと。設定しておくと指定距離まで他のプレイヤーを寄せつけなくなる。架空とはいえ人に迫られるのは怖いのだ。特に女の子は。なので今の俺の行為はちょっと反省しないとかもだ。


「悪い柊さん」


「いいわよ別に。アンタ達がそういう奴じゃないってのはちょっと一緒にやれば分かるから。ってことで勘違いよ迷子」


 ブンブンと頭を振るだけの世迷さんに不安になる。その言い訳に踏み出そうとした俺の動きを止めてキッカが俺の前に出た。


「そういうことじゃ迷子とやら。それは勘違いなんじゃ。何せ流星が付き合っておるのはこのわしじゃからのう」


 再び見開かれた世迷さんの瞳に天を仰ぐが……。


「キッカちゃんは魔物じゃ?」


「誰が魔物じゃ。失礼じゃの」


「ご、ごめんなさい。あの、私モンスターに興味があってもし珍しい魔物カードを手にしたら是非!いや絶対に連絡ください」


 うん、この子変かも。

 ──────────────────────────────────

 流星ノート〇ハラスメント・コードについて


 VRMMOがリアルになるにつれてやはり人との接触が大きな問題となった。特に女性への被害が酷くハラスメント・コードと呼ばれるシステムが生まれる萌え芽となる。現在ではそのシステムは深化され細かく設定できるまでに至った。PT、野良、フレンド、個人、毎に距離を変更することができまたブラックリストではその対象を見えなくすることも可能となっている。

 なお、ブラックリストの枠は100。それ以上を求めるならゲーム運営ではなく国に許可申請し更に枠を購入しなければならない。これはブラッバズトを悪用した行為が横行したからと言われている。


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