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浮遊国家ドガティスとロシュー

 辿り着いたモグラの家はこじんまりした小さな家だった。中心にある巨大な歯車を軸にして小さな歯車を噛み合わせて作られた外装は不思議だがカッコよく、多くの男子諸君の心を捉えてしまうに違いない。


 ミアは研究室だったがこのモグラの家は修理屋。様々な道具が散らかっていてゴーレムの頭を治しているようだった。その一群のなかに先のゴーレムを突っ込むと彼はリビングへと案内してくれた。


「そこで待っててくれるかい。稀人に口に合うものを用意するよ。ああ、言い忘れていたけどー僕の名前はロシュー。見ての通りの土人族さ」


 待っててと去った彼を見送ると俺達は長机を間に挟んでそれぞれ鉄の丸椅子に腰掛ける。やっぱりスチームパンク。よくわからない機械仕掛けが至るところにあった。全部彼が作ったのだろうか。


「何か分かんねえけどすっげえ」


「ああ、カッケエな」


「そうなのかの?わしにはガチャガチャうるさいのじゃが」


 キッカがそういえばふっと高峰が鼻で笑った。


「お子ちゃまにはこの魅力はわかんねえよ」


「何を言うか、お主の方がお子ちゃまではないか。知っておるぞ、あの靄を被った時一番慌てふためいておったのをな」


「な!?おっお前だってゴーレムの頭でぴぎゃああとか言ってただろ」


「あっあれは不可抗力じゃ」


「じゃあ俺だって不可抗力だ」


「高峰、NPCと喧嘩とかすんなよ」


 フンっとそっぽを向く二人に呆れる。そしてルフさんは動く歯車をじっと見据えて動かない。今更だがこのPT大丈夫かと不安になってきた。


「やあやあー待たせたね。君たちは仲がいい稀人さんなんだね」


「待った。一個聞きたいこいつらも稀人?」


 俺がキッカとルフさんを指して言えばロシューは俺達にカップを配りながら肯定した。


「そう彼らも稀人。そういうことになっている」


「そういうことになってる?」


「僕にもわからない。でも、星はそう言ってる。それが世界の理であると」


 このゲームがやけに俺の心を捉えてくるのはやはり彼らが俺たちの事を稀人──地球人として認識したシナリオであるからだろう。だからただのプレイヤーとしてではなく桂木流星そのものに語り掛けられてる気分になる。


 聞きたいことが多くて纏まらない。そんな悩む俺を置いて高峰が話しかけた。


「なあ、モグラ。お前ずっと星が星がっつってるけど、マジで喋りかけてくんのか?」


「僕ら土人族には不思議な力があるのさ。占星術といって過去の声を聴くことができる星占いができるんだ」


「星占いのじゃ?」


「過去の声が聞こえるだって?」


「そう、だから土人族は過去に囚われているのかも知れないけどね」


 消え入りそうな声で囁いた彼はほんの一瞬切なそうな顔をするとまるでそれを振り払うように明るく振舞った。


「さあ、飲んでくれよ。それはドガティスの名産品なんだ」


 マグカップの中を見る。誰も口に付けていなかったのはオレンジ色の液体でゴボゴボいってるからだろう。意を決して飲んだ高峰が目を輝かせた。


「おお美味え「それは油」ぶぅうううう」


「うわっバッチいのじゃ」


「お前なんてもの飲ませんだよ」


 怒鳴る高峰に悪戯が決まったと笑い以外にもお茶目な一面を見せたロシュー。彼は


「平気さ。それは人体に影響を及ぼすものじゃない。ドガティスの飲料として使われているしあるものの燃料としてもしようされている」


 っといい、穴の開いた銀トレイにマグカップの中身を注ぎ込み始めた。


 そこに透明な管が取り付いていたらしくどういう仕掛けなのかオレンジ液体が部屋中を駆け巡ってゆく。それを俺達と眺めながらロシューは再び口を開く。


「そのことからこいつは命の水と呼ばれているのさ」


(命の水)


 そう呼ばれたオレンジの水はやがて壁端へと到着し、そこにあったゴーレムの頭に注ぎ込まれた。するとギィイインっと目に光が灯り、プシューっと蒸気を放つと、頭に付けられたプロペラが回りだしなんと頭だけで一人でに動き出した。しかも──


「エマージェンシーエマージェンシー。規定起床時間より大幅なズレ。ピューイのやる気が溢れた可能性。ピューイ早起きピューイ早起き」


「「喋った」」


 俺と高峰の言葉が合わさると、ぐんっと空飛ぶゴーレム頭が俺たちに向いた。


「未探知存在確認未探知存在確認。お客様襲来お客様襲来。ピューイ混乱ピューイ混乱」


「おもてなしなら僕がしたよピューイ。落ち着くんだ。彼らは稀人さ」


「稀人、ピューイ歓喜ピューイ悲壮ピューイ嬉しい悲しい嬉しい悲しい」


「そうだね。話していた通り僕とはここでお別れだ。でも、君は上に戻れる」


 軽くピューイを抱きかかえたロシューは俺達に向き直った。


「稀人、僕から頼みがあるんだ。この子を上に連れて行って欲しい。その代わり僕が君たちに行き方を教える。君たちは上りたいんだろう?そう星々もいってるからね」


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 ストーリークエスト『浮遊国家ドガティスへ』

 土竜族のロシューがスチームゴーレムの頭ピューイをドガティスへ送り届けて欲しいそうだ。彼の願いを聞けば浮遊国家への道が開かれる

 承諾    拒否

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 俺達は互いに視線で確認しあって承諾を押した。いっつも思うんだけどこれ拒否っている?っと俺は関係のないことを考えてしまっていた。


 ドガティスへと至る道はエレベーターだった。隠蔽魔法で隠されておりストーリーを受けることで可視化されるという仕組み。隠蔽魔法というとストラージュで龍贄の儀のことを思い出す。


 全く別の力なのかそれとも……


「あんまり聞きてえことは聞き出せなかったって顔してんな桂木」


「ああ」


 ロシューにどうしてロシューが隠蔽を解除できたかも含め色々と尋ねたが上手くはぐらかされてしまった。まあ、そうなっているものと思って諦めるしかない。グングンと登ってゆくエレベーター


 透明なガラス張りなので下が丸見え、ふぉおおおっとキッカは感嘆の声を上げているが高峰のサポーター、ルフさんは高所が苦手なのか額を付けてぶつぶつ言っている。


「アイツ……あのモグラは何してんだろうな。稀人待ってたって言ってたがそれだけじゃねえだろ」


「わかんねえな。ただ、少なくとも楽しいことじゃないのは間違いないだろ」


「ピピピ。探索、探索、ロシュー探し物」


 そういえばこいつがいたと俺が上を見ればゴーレムの頭が飛んでいた。名をピューイ。ロシューに託されたもの。


「探し物?」


「ずっと ずっとずっとずっとロシュー探してる ピューイ予想 ロシュー ピューイのマスター同じ ロシュー 自分のゴーレムきっと落とした ずっとずっと探してる」


 ゴーレムを探している。そういえば釣り糸で彼は拾い上げていた。まあ、きっとそんな単純な話じゃないんだろうけど……。


「考えてたってしゃあねえって桂木。進んだ方が話はわかる。ほら、もう付きそうだぞ」


「ん、ああそうだな」


 考え込んでしまうのは俺の癖。確かに高峰の言う通り進んだ方が早い。ふと見ればルフさんの膝が軽く震えている。もう着いてしまうからあれだが高峰もサポートケースに入れてやればいいのにとちょっと思った。


(まあ、サポーター気遣えとか俺の方が変か)


 なので我慢。その後は外を見て俺達が通ってきたロゴス三爪渓谷が見えたのじゃっとキッカが興奮したところで俺達は浮遊国家ドガティスに到着した。


 エレベーターが止まったその瞬間はまるで衝突のようであった。


「うおっ」


「のじゃ」


「うわっ何か口ん中入った」


 ぶわっと埃が舞って、真っ暗になり俺達は混乱した。


「んだ!?壊れたんじゃねえのか?これ」


「真っ暗じゃー何も見えん」


「エマージェンシーエマージェンシー ピューイ発狂ピューイ発狂」


「いや、これあれじゃねえかな。ずっと使われてませんでしたよ的な演出」


「もう無理だ。高い。落ちる。そして俺は死ぬ」


 ルフさんの声。ルフさんがヤバい。そしてピューイが糞煩い。まさにカオス。そのまま収拾できずぐちゃぐちゃで俺達が話しているとガゴンっと音が鳴って扉が開き始めた。耳を澄ませば外もガヤガヤしてるようだ。


 おっ空いたぜっと勢いよく飛び出した高峰が両手を上げる。状況を見て俺も両手を上げながら外へ。キッカは何故かドヤ顔、そしてルフさんは産まれたての小鹿のようだった可哀想に。ちなみにピューイの野郎は俺の後ろに隠れた。ちゃっかりしてる。


「なんということだ下から人が」


「何年ぶりか」


「魔物が化けているのではないか」


 周囲を囲む土竜人達が言いたい放題。すげえ一杯いて手前の兵士っぽいのが槍を俺たちに突き立てているため動けない。っつかこの槍スチームパンク系でカッコいい。


(後で店いこっと)


「おいっ聞いているのかお前」


 意識を戻せば俺と言わんばかりに槍先が喉元まで来ていた。


「えっとはい聞いてます」


「貴様っ何者だ」


「俺か?俺は桂木流星だ」


「いや、桂木そこは稀人だろ絶対」


 ドヤったのにミスった。確かに進まずジーっと土竜が睨んでくる。これずっと放置したらどうなるんだろうか。


「桂木、そういうのは一人ん時やれって」


「ん?ああ悪いつい。オホン、俺はまれ「何事です!!」」


 俺の言葉を塞き止め、姫様、姫様だっと周りをざわつかせやってきた者。ドレスを身に纏ったその正体は──


「モグラだ」


「モグラじゃな」


「モグラじゃねえか」


 やっぱりモグラだった。

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