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星読みのモグラとゴーレム廃棄場

 一面足元に白い靄が漂っている。それは奥に進めばどんどん濃くなってまるで雲の上を歩いているかのような光景となった。夜になり、空には一面の星空が瞬いている。


 俺は現実にある最下荘のあの景色をちょっと思い出した。


「ん?夜になるの早くねえか?」


「早いな。この地方の特色として描かれてんのかそれとも」


「イベントなのかってな」


 セリフの最期を高峰に奪われてしまった。まあ、一応リーダーなので遠慮はするし前を歩くけどもキッカは怖いということで俺の裾に捕まっている。


(ホント知らない人とPT組まないで良かったな)


「のう流星っ!もっとゆっくり歩かんか!落ちるのじゃ。空を歩いているのじゃ。落ちそうなのじゃ」


「大丈夫だって、足場あるだろ?ただの靄だって」


 とはいえ、どんどん靄が深まってきてちょっとだけ俺も怖くなってきたが。


「なあ桂木これヤバくねえか?マジでどんどん深くなってる」


 背が小さいのでキッカと高峰は腰まできてる。高峰のサポーターでありエルフのルフは……真顔でついてきてる。申し訳ないけど怖っ。


「地図では合ってるはずなんだけどな。このまま視界が塞がれたら流石に怖え」


「でもどこにも町なんて見えねえぞ桂木。バグじゃねえのか?」


「うーん……ん?」


 俺はあるものを発見し固まった。


「しっかし何なんだろうなこの足場。ガチャガチャしやがる蹴ってもテクスチャ貼り付けてんのか動かねえしよ」


「ぬ?どうしたのじゃ流星」


「桂木どうした?急に止まって」


 二人の視線を受けて俺はゆっくり指をさす。場所は天空。そこには──


「なななっなんじゃああれは!?」


「マジかっまさか俺らあそこに行くのかよ」


 三人で揃って大口を開けてポカンとする。その全員の瞳に映るものはきっと天に浮く巨大な城で一致しているに違いない。天空城の全貌が明らかとなりその名前がドガティカであると表示されるのであった。


 天空城ドガティス。突如として現れたのではなく、多分靄によって隠されていたのだと思う。


 スコップで抉りとったような岩の上に乗ったその城は謎技術で浮遊していた。見た目はファンタジーというよりスチームパンク。


 そう思うのは蒸気が至る所から出ていることと鉄でできているように見えるから。小さなプロペラが着いて回っているがあれで浮くとは思えない。


 兎に角、あそこに住んでいる者がいるとすればきっと技術力の高い者達なのだろうと俺は思った。


「ホントにあれか?桂木」


「地図ではそうなってる」


「どうやっていくんじゃ」


 ほんとキッカの言う通り。風も出てきて白靄が波のようにうねりだした。


「うおっどうする?一旦戻るか?」


「マスター」


 ここで口を開いたのがルフさん。ここまで全く喋らなかったので何だ何だと彼を見れば、ルフさんは丹精な眉を歪め顎でくいっと誰か来ますと俺達に告げた。バチっと何かが切り替わった覚えのある感覚が走って俺は納得した。


「ストーリーだな」


「ストーリーに入ったみてえだぜ」


「ストーリーじゃ」


「ストーリー?」


 小舟がやってくる。どういう訳か白靄の上をぎいいぎいいっと音を立てて進んでいる。小さな人影乗っておりシルエットだが大きな魔女帽子を被っているように見えた。トンガリ部分は萎れている。そして──ん?となった。


「あれ?何でお前らいんの?」


「何で桂木がいるんだ?」


「ぬ?流星お主、ストーリーは一人といっておらんかったか?」


「???」


 何か皆いる。混乱する俺達。そして、ルフさんはストーリーというもの自体を理解していないらしく、置いてけぼりで少し寂しそうな顔をしていた。


 とりあえず待ってみる。徐々に近づく船。そいつが目の前にきたことで船先立つ者の姿が月明かりを浴びて露わになった。


 紺色の帽子と星を模した装飾が施されたローブ。それを纏った人型モグラ。ふわふわの茶色の毛、尖った鼻先にひげが付いている。


 手と足は丸く大きく、それで土でも掘るのか鋭い爪がついていた。彼はそれで器用に竿を持っていて椅子に座り、どういう訳か釣り糸を垂らしている。


「モグラだ」


「モグラじゃの」


「モグラじゃねえか」


 そういえばこんなやつオープンムービーで見た気がすると思い出せばモグラが口を開いた。鼻がヒクヒクしてる。


「やあ、やっと僕が見える稀人と出会えたね。星の導きに従って君たちをずっと待っていたよ」


「僕が見える?」


 モグラが喋ったと驚くチビ二人の中で俺が思わず訪ねれば彼が頷いた。


「そう、稀人は沢山いる。この天に輝く無数の星々のように。けれど、僕が捉えられるのは君たちだけ。君たちが捉えられるのは僕という存在だけ。そう世界が定めているんだろう?」


 ややスローに喋る彼。だからだろうか言葉の一つ一つがジワりときた。


「なあモグラお前本題うおっ」


 高峰が話を進めようとしたが、凄い靄の大波が起こって思いっきり俺達は靄を被ってしまった。中は真っ白で何も見えなかったがゴポポポっと海にいるような音が鳴った。ザパンと顔を上げる。


(こっわ)


「ぷはっんだ今の」


「真っ白じゃったのじゃ」


「僕を取られると思って彼らを怒らせたかな。白巻きが始まったようだ」


 白巻き?彼ら?分からない事だらけだが、少年が示すものを見て俺達は言葉を失った。白い螺旋の渦があちこちで起こり上空に巻き上げている。しかし、その光景は余りにも神秘的だった。


「綺麗じゃ」


「綺麗だな」


「森はないが……俺も美しいと思う」


「そうか?」


 高峰お前美的感覚と見れば彼は肩を竦めた。


「綺麗か。そうだね。ある意味……そう見えるかもしれない。でも、もうすぐ君たちにも見えるはずさ。覆われた奥にあるものが」


 覆われた奥にあるもの。俺達は彼の言う通り見続け、そしてその顔を次第に強張らせた。そこにあったのは


 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔


 顔という絨毯。それが俺たちの足元を含めどこまでも続いている。ひっと悲鳴を上げたキッカを軽く支え得てやり、俺は足元を確認した。


(こいつはゴーレムか?)


 その頭だけ。それが大量に落ちていた。これが人の頭であれば俺達は卒倒していたかもしれない。


「ここは白靄モールス。上にいるゴーレム達の廃棄場なのさ」


 廃棄場。モグラのその言葉を証明するかのように上からまた新しい頭が落ちてきてガンカンカンと砕けながらゴロリと転がり、地面の仲間入りを果たしたのだ。


 ◇◇◇


「いやー助かるよ。申し訳ない。僕は歩けないから」


 モグラは足を悪くしていて、更に白い靄の上しか船は動かないらしく彼を背負うしかなかった。おんぶしているのは俺。向かうのは彼の家で俺の背中から案内してくれている。目の前から垂れる糸が邪魔だ。


 それを暗に示したが彼は頑なにそれを止めなかった必要だからと。


「なあモグラ、本当にこっちなんだろうな?」


「大丈夫、迷うことは無い。星の導きが教えてくれる。僕の家で君たちをもてなすよ。君たちも色々と気になるだろうけど話は着いてからここは危険なんだ」


 う”う”う”っとまだ怯えるキッカが俺の裾を握っている。背負ったモグラも小さいので何か保父さん感半端ない。そういえばこのモグラは幾つなんだろうか。キッカといいNPCの年齢ってわかりにくい。


(ってか実際に生きてねえからただの設定か)


 自分で納得した俺は視線を落とし、彼女に聞く。


「キッカお前大丈夫かよ?無理なら入ってるか?着いたら出してやるぞ」


「だっ大丈夫じゃ。こんなの全然怖くないわ。ふっ良いかこういうのにはコツがあるんじゃ。上を向いてたら大丈っ!?ぴいあああああ」


 掛かったと釣り竿がしなり、びよーんっと俺たちの前で頭が釣れてキッカが悲鳴を上げてしまった。揺れ浮くゴーレムの頭に俺たちはぎょっとするがモグラは慣れた調子で淡々と俺たちに告げる。


「あーやっぱりあったね。良かったまだ残ってるようだ」


「えっと……」


 ゴーレムの頭が俺の視線で止まり、何か見つめ合う感じになってしまった。前が見えないと手を伸ばそうとするとモグラが慌てた。


「あっダメダメそのままで彼も僕らの顔が見えていた方が安心するだろうからさ」


 安心する?意識あんのこれ?っと俺が見つめれば丸い光のようなゴーレムの目がそれに応えたかのようにチカチカっと輝くのだった。

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