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突破と深層ルール

 会話を切り上げた俺たちは遺跡を通って駆けていた。幾つかの魔物をやり過ごし、俺は身を隠しながらメニューを開いた。


「結構手間取ってるな。まだ赤のクリア者はいないみてえだ。まあ、青の方が圧倒的有利ってことかもだけどな」


 後ろの年玉に言えば、彼が黙って俯いているので俺は首を捻った。


「ん?」


「君は笑わないのかい?」


「笑う?何を」


「さっきはつい興が乗っちゃったけど、学園や運営が黒幕だなんて三文小説でも描かれない馬鹿な陰謀論さ。僕はこういう所があるんだ。いっつもちょっとした情報で妄想が膨らんでいって……。意気揚々と喋って……結局、違って」


「馬鹿にされるってか?」


 彼は弱弱しく頷いた。


「笑わねえって俺もわりとそういうの好きだしな」


「そうなのかい?」


「ああ、もっとアホな妄想したことあるぞ。人に言えねえレベルの。面白かった。話してくれてサンキューな年玉。勿論、これは誰にも言わねえ。っつうわけで良かったらまた聞かせてくれ」


 彼はぎゅっと手を握って俺の横に並んだ。その顔は背けられていた。


「桂木、て……底辺って言って悪かった。ごめん」


 そんなの俺は全く気にしない。俺はバシッと拳を叩いた。


「折角だし俺らで最初の突破決めちまおうぜ年玉。張本の分までな」


「別に死んでないけどね彼。でも、そうだね。そろそろクラスに僕の頭脳を見せる時だ」


 そしてBチームの包囲網を掻い潜り、俺たちは指定ポイントへとたどり着いた。

 教師御影が指定した場所は四画の小部屋で柱が立っていて、中心にボスが立っていた。


「なあ、俺ら赤だけ難易度高くね?」


「辿りつく方が楽だと判断したんじゃない?実際に僕ら二人で着いてるわけだし。ほらあそこだ桂木」


 俺たちが入った入口に緑線が格子状に張られている。


「ブルーチームの介入禁止ってところか」


「だろうね。ここに入った時点で勝ち。まああれに勝てればだけどね」


 あれっと指したボスの姿に俺は目を細めた。


「どう思う?年玉」


「カメレオンと……ワーウルフ後なんだろうねあれは悪魔の羽っぽく見える」


 年玉の評価に俺も賛成。やはりボスも混ざっていた。俺たちの武器は初期のハンドガンのみ。ぶっちゃけ勝ち目がなさそうだ。当たって砕けるしかない。


「行くぞ年玉。特攻しかねえ」


「ははっ一応言っておくけど頭脳には自信があるけど戦闘は自信ないからね僕は」


 うん、知ってる。口では言わないけど。狼のような体毛を持つカメレオンが羽を休めている。俺は多少はFPSの経験はあるがそこまで上手くはない。銃口をボスへ向ける。狙いをつけトリガーを引こうとした瞬間ボスが忽然と姿を消した。


「は?」


「後ろだっ!!桂木!!」


「!?!」


 相手を見る事なく前に飛ぶ。するとガッと音が鳴ってまたダンッ!!っと地を蹴る音が鳴った。多分、もう移動した。


「上から下っ」


 年玉の言葉を信じて転がる。ズドっと長い舌が地面に刺さり、着地したのが見えた。ギョロリと爬虫類の瞳が動く瞬間まで捉えたが俺は再び構えれば消えていた。


「早すぎるっ俺には無理だ」


「ぐあっ」


「年玉!?」


 年玉が地面に倒れた。ボスが移動する線が見えた。効果があるか不明だが、俺はスモークを放る。モクを焚き、彼の元へ駆け寄った。


「大丈夫か?年玉」


「ああ、腕で良かったよ。想像以上に厄介な奴だね」


「ちょっと厳しいなこりゃ」


 せめて装備があれば何とかなるかも知れないが、まあここまでこれただけ十分ともいえる。俺は少し諦めかけたが、年玉が俺の服をガっと掴んだ。


「桂木、僕を信じられるかい?」


「ああ」


「作戦を思いついた。上手くいくか分からない賭けのようなものだけど。アイツに勝つ手段だ」


 本気の顔となった年玉。モクの中で俺は彼の作戦を聞いたのだ。


 ◇◇◇


「ああああ」


 咆哮するのは年玉。彼は全力で逃げるように駆けてゆく。それを眺めるのは柱にロープで括りつけられた俺。俺は信じ、身を捩ることもすらしない。


「ぐあっ」


 ボスに足を射抜かれて部位破壊となり年玉君が倒れ込んだ。


「やめろおおお来るなアああああ」


「kikekikekikekike」


 初めてのボスの声。まるでユーザーの恐怖を喜んでいるかのよう。頭の中で先の年玉のとのやり取りが反芻(はんすう)された。


 ”いいかい、桂木。先生の言う通りこのゲームは3つのゲームが補完し合うことでできてる。1つ目、2103年発売ゲイルドオンライン、二つ目2174年発売白夜鬼。3つ目2189年発売ダークルード”


 ”お前何で”


 ”ここまでのプレイでやっと把握できたよ。100年代のモンスターは今ほどAIが発達していない。だから、待機モーションで開発者は特徴づけた。それで分かった”


 ”まさか全部覚えてんのか?”


 ”僕を舐めないで貰えるかい桂木。僕はハイ・シルフに絶対にならなくちゃいけないんだ。でも、僕はこんな性格だから人の情報を集めることができない。この悪癖は治せない。でも、諦めない。常識?知らない。僕は別の形でそこに至る道を目指す。例えどんな代償を払ってもね”


「あああ”あ”あ”」


「kike」


 ”僕の役目は情けなく死ぬこと。白夜鬼は面白い。プレイヤーの悲鳴で魔物のテンションボルテージが上がる。僕がそれを最大にしてみせる。任せて。なんたって僕は弱いんだ”


 ズドっと胸を突き刺され年玉がデット。体が泡となって消滅した。


「カカカカ」


 年玉の狙い通り実に嬉しそう。バフが掛かったようで赤いオーラをカメレオンのボスが纏った。


 ”いいかい?僕が死んだら君の出番だ桂木”


 だから、俺は腕を固定して銃を構えその腕に包帯を巻きつけたのだ。


 ◇◇◇


 喜々としたボスと柱に巻かれた俺が対峙する。


 ”ボルテージが上がり切ったボスは上位の技しか放ってこなくなる。本来はより強力になってしまうけど、ゲイルドオンラインのマップ特性。オブジェクト破壊不能を利用する。後ろからの攻撃を絶対に防げるなら後はダークモセスのボス技だけに気を払えばいい”


 ”避け方は?”


 ”無理。ただ、HP1にする技だから耐えられるはず。死んだら御免。そして生きたとしても、君は四肢が破壊され動けなくなる。”


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 死ノ円舞曲  VRMMOダークモセスの邪っ子のスキル 

 激しい連撃を行いプレイヤーのHP1にする 回避不能 盾ガード可

 必ずプレイヤーのHPを1で止める設定プログラム

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 ボスのラッシュ攻撃が始まった。不可視の連撃に呻くしかない。破損、破損、破損と表示され、体から感覚が抜けてゆく。


 ”見極めるんだ 技の終わり その刹那のタイミングを 邪っ子のプログラムが入っているなら技が決まった最後、化け物は一瞬”


(歯を見せて笑う)


「修復」


 腕に巻いておいた包帯の力を使用して腕の感覚を取り戻す。ニっと化け物が口角を上げた。本来はできないのに無理やりそうさせられているような歪な笑み。口の中の白が見え──


 ”3つ合わさった弱点は”


「歯」


 俺はドパァンっと弾丸を放ち、見事に命中させたのだった。弱点3倍。倒せるはずという彼の言葉通り3つの魔物の悲鳴を轟かせた混合の怪物は弾けて消えた。


「うっしゃあ」


「は?」


 思わずガッツポーズすれば背景が真っ白になって、呆けた顔の御影先生に出迎えられた。作ったとか言っていたのでゲームマスター部屋なのだと思う。


「マジかよお前初見で突破か!」


「いや、年玉のお陰ですマジで」


 年玉?っと捻る御影先生にほら眼鏡のというとあーあの弱そうなっと彼女は納得し、彼が全部のMMOを見抜いたと言えば驚いていた。


「ほー一回で全部暴きやがったか。なんだよ良い奴ら揃ってるじゃねえか。あの爺もまだ目だけは腐ってねえらしいな」


「って訳なんで俺は大したことしてなっう」


「餓鬼が遠慮してんじゃねえって。お前も猛攻の中で抜いたんだろ?」


 っと御影先生に腕を回された。意外とあれが大きい、そして三つの作品が合わさってるお陰なのかゲームなのに柔らかい。


「てめえ名前は?」


「かっ桂木です」


「よし桂木、俺と一緒にFPSやるぞ今から」


 彼女はニコやかにいい、それは遠慮しますと俺は彼女に告げるのだった。


 最初の出会いはあれだったけど、見様御影はいい教師だった。教室に戻った俺は年玉、張本と共に皆を前にして教壇に立たされる。


「てめえらこいつらが紅組トップで抜けた面子だ。ラヴェルポイント1500 とりあえず拍手しとけ」


 パチパチパチっと拍手され年玉と一緒に照れる。張本は僕落ちただけなんだけどと苦笑いして遠慮していた。今回のMVPは間違いなく年玉だろう。


「でっこいつらは混ざったMMOを全部見抜いちまったわけだが……。流石にてめえらにそこまでは要求しねえ。お前らには一週間、多少ルールは変えるが今日やって貰ったことを繰り返して貰う!! わけだが」


 と彼女はプリント3枚を生徒達に配った。


「そこにはVRMMOの名前が記載されてる。お前らはどのVRMMOがどのルールで作られてるかを肌で探って書き込め。それがこの授業の目的だ。返事」


「「「はい」」」


「ゲームには作った奴がいる。そして必ず、そいつらはルールを決める。そいつを深く理解できるようになれば〈重ね〉っつうのができるようになるし、エフェクト一つで目潰しだってできる。石を投げればどういう軌道を描くのか、壁にぶつかればどの程度跳ね返るのか。それはスキルよって変わるのか?そういうプレイヤーには知らされない理(深層ルール)を暴くことがトッププレイヤーとして最低条件だ。


「深層ルール……」


「精々頑張れ、俺が24時間FPS生活に戻れるようにな」


 そしてと御影先生は張本の頭を掴んでこう続けた。


「こいつらにはバウンティーを掛ける。狩った者はラヴェルポイント500。ようするにだ。全員で狙ってこいつらを殺せ」


 ギラついた同級生の視線が俺たちを突き刺す。そして教室に僕落ちてただけなんですけどっという張本の悲鳴が轟くのだった。


 こうして、俺たちの学校生活が始まった。狙われた俺たちはボッコボコにされながらもあっという間に一週間が過ぎ……そして俺達は──


 ヴァラエティーパラシスサービス開始の日を迎えたのである。


───────────────────────────────────

 流星ノート〇包帯を巻き修復と唱えることでプレイヤーは破損部分を回復できる。流星と年玉はこれを利用し、予め巻いておくという戦略をとったが、包帯を巻いている間は銃を撃つことができないため、この混合体の魔物にしか使えない謂わば死に技である。【余談】このFPSは御影が所属するクランによって開発されたものだがモデルのFPSが存在する。年玉はそれも抑えていたと後に彼が自慢げに話したという

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