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ラヴェルポイントとクラス対抗

 指示に従って進んだ俺たちが辿り着いたのはだだっ広い荒野のような場所だった。生徒達がいて学園の旗が立てられていなければ間違ったんじゃないかってくらい何もない。一体何が始まるのかと生徒達も気が気でないようだ。


 ちなみにキッカは連れてきていない。流石に遠慮したのか彼女はストラージュの町で待つことになった。というのもこのまま落ちてしまう可能性があるからだ。


(やっぱサポート収納だっけ?あれは取っといた方がよさそうだよな)


 キッカをだしっぱにするにしてもこういう時不便だ。製品版になったら絶対ゲットしようと決意を固めた俺はちらりとFクラスの面々を見た。


 ソロでやってたせいもあって結局マアトの天秤以外の彼らとはほぼ仲良くはならなかった。そんな俺に対して彼らは交友を深めたらしく皆結構喋っている。


 ああ、でもぼっちの眼鏡君は相変わらずのようだ。その横にショタ系男子の友人を引き連れているが変わってないっぽい。ゲーム内でも彼は電子ペンを持ってカリカリと何かを書いていた。


 暫く太一達と談笑しながら待ち続ける。するとブツというノイズが入り校内放送のような連絡が響き渡る。


「えーえー一年全員集合しました。一年生の皆さまは整列しそのままお待ちください」


 突如、ブオンと視界がブレたかと思えば、ヴァラパラだったはずの世界が学園ラヴェルの校舎に切り替わりどよめきが起きた。


「ほっほっほ驚いたかの。勿論、ここは現実ではない。ラヴェルを完全再現したサーバーにお主らを飛ばさせて貰ったんじゃ」


 そう声を放ったのは朝礼台に立つ我らが廃人養成学校ラヴェルの校長マグドールである。白く長い髭を持ち、堀が深い魔法使いのような見た目の爺さんだ。


 そんな彼が腕をあげパチンっと指を弾くと現れた宙に浮かぶディスプレイに彼の顔がでかでかと表示された。彼はカメラにパチっとウインクを決めると俺たちに向き直った。


「さて、どうじゃったかのニュービー諸君。このヴァラエティーパラシスを体験した感想は」


 じっと俺たちを観察し、何を見ているのかずっとうんうんと頷くマグドール。傍にあの眼鏡を掛けた教頭である泉先生がいて校長先生?校長先生?どうしたんですか?遂にボケたんですか?っという囁き声が入ってしまっていた。


「うむ、短いながら良き経験したようじゃ。このゲームを選んだわしの目利き流石という他ないのう。さて、このヴァラエティーパラシスはこの学園のメイン教材としてこれからも扱うことが決まった。今回のベーターはこれで終了となり正式発売は一週間後と連絡を受けた」


(一週間後)


 一週間後、一週間だってよっと周りから歓喜の声が上がっている。やはり多くの生徒がこのゲームに心を奪われたようだった。


「静粛に。気持ちはわかるがの静粛にじゃ。その間の期間から授業を始めることになる教員から連絡もゆくじゃろう。まあそれは現実に帰ってからゆっくりと聞くがよい。ではここからが本番じゃ」


 そういってパンっと彼が手を打つと、不思議な衝撃が駆け抜け皆は呆気にとられた表情でマグドールを見た。マグドールはニタリと笑った。


「わしは最初お主らにこう言うた。兎に角、上を目指せと。今からお主らにラヴェルポイントを配る。じゃがそれとは関係なく今一度考えて欲しい。お主らが思い描いた上とは……一体何であったのかを」


 彼はバっと巻物のようなものを取り出すとそれを横に振るった。それは空中でふよふよと浮き、振る舞いも完璧で彼は本当に魔法使いなんじゃと錯覚してしまいそうになった。


「お主らの中で最も優れていたと言わざる負えない者」


 少し変な言い回しだと思った。わざわざケチをつけるような……そんな言い方。マグドールは目を細め続きの発表を行う。


「ストーリー進行率トップ クエスト消化率トップ 獲得金額トップ 現行レベル マッピング共にトップ PT名【千里の風】 PTリーダー白虎理聖(しとらりせい)前へ」


(理聖)


 相田美咲と並ぶ俺のもう一人の幼馴染、白虎理聖。彼とは始業式で最悪の再会をして以来。まるで俺なんか興味すらないと言わんばかりに俺の横を通り過ぎてゆく。


 彼の身に(まと)った装備は一体どこで手に入れたというのか周りの者達と比べても明らかに上位のものだった。理聖が当然と言った顔でマグドールの前に立てば


(有栖川さんは?)(有栖川は最初だけ?)


 という声が聞こえてくる。それを消すようにマグドールが理聖に話しかけた。


「凄まじい進行速度であった。わしのレベルすらをも抜いてしまうとはの」


「先生のお言葉がヒントとなりました。レベルスポットの存在を教えて頂けたので見つけることができたのです」


「うむ、謙遜するでない。あれは簡単に見つけられるものではない。でなくては利用したのがお主だけとはならんだろうよ。見事であったのう」


「ありがとうございます」


 ペコリと理聖が頭を下げると見る者達から感嘆の声が漏れた。


「して白虎理聖よ」


「はい」


「楽しかったか?」


「は?」


 訳が分からないといった様子の理聖にマグドールは小さく頭を振った。


「いや、なんでもないのう。皆の者この者に拍手を。この者にラヴェルポイント3万ポイントを授与する」


 おおおおおおっと歓声が上がり、おめでとうという声に理聖が手を挙げて応えている。彼の仲間も鼻高々そうだ。特に司法とかいった女の子が自分の事のように喜んでいた。


「さてもう一つ大きなポイントを発表せねばならんようじゃ。名声番号25番フィールドボス単独撃破……えっと何々おっとこれはいかん匿名希望のようじゃ。恥ずかしがり屋かのう」


 あったなそんな放送と誰かが言い俺は別の意味でごくんと唾をのみ込んだ。ロリコーンの桂木流星とか普通にあの爺さんが言いそうで怖い。


「あの短期間でなかなかやりおる……とはいえ白虎君には及ばぬからのう……うむ、この匿名の者に一万ポイント」


 誰だ誰だと騒ぐ生徒達。ほっとする俺だったがふと視線を感じ顔を上げた。どうやらそれが俺だと気づいていたようだ。理聖がじっと俺を睨みつけていた。


(何が気に入らねえか知らねえが俺はこのプレイスタイルを変える気はないぜ理聖)


 俺と理聖が目で少しバチった後もラヴェルポイントの配布が様々な形で行われてゆく。裏ボスはあれだけ強かったが、学園の指令を無視した形となったため3000ポイントに抑えられた。俺は合わせて1万6000ptである。


「さてこのラヴェルポイントが何かを説明しておらんかったのう。このポイントは全学年で比べられる。おんしらが寮で聞いた放送がそれじゃ。その上位三十位に入った者がクランを創り持つことを許されておる。まあ一年で入れる者はほぼいないのでのう。気にせんでもええかもしれんが……。またこいつを元に校内で支給されるお金ラヴェルコインの額が決まる。それで色々買い物ができるのでのうカタログとか見てみるとよい。そして10万というptに達したものには」


 10万とは凄まじい額だ。ゴクッと誰かが喉を鳴らした。ゴソゴソと懐を漁ったマグドールがそれを突き付けるようにして俺たちに見せた。


「何とわしのプロマイド豪華三枚セットプレゼンじゃああああ」


 シーンとなり、マグドールは横に立つ真顔の教頭を見た。


「せっ生徒には受けが悪いみたいじゃが、泉君ならいるじゃろ?どうじゃ」


「いりません、欠片も」


「かっ欠片も。わしこれでもイタリアではナイスガイで人気だったんじゃが」


「私の目には枯れ果てた爺以外の何物にも見えません」


「いっ泉君、辛辣」


 ガクリとなったマグドールに溜息をついて泉が壇上に上がった。眼鏡をクイっと上げて彼女が説明を引き継ぐ。


「オホン、無駄な茶番が入りましたが忘れて下さい。話を戻しますね。ラヴェルポイントは今回のように様々な形で貴方を測り、付与します。授業でも入りますが、基本的には学内で行われる大きなイベントで獲得できるもの……と考えてもらって結構です。それでは次のイベント内容を発表したいと思います」


「いっ泉君ワシのプロマイド……踏んで……」


「黙れ爺。今、いいところです」


 彼女、結構キツイ性格っぽい。そして全部聞こえてるの気づいているのだろうか。結婚相手とかいなさそう。そしてこれ言ったら殺されそう。


「2か月後、このヴァラエティーパラシスを使った戦闘でクラス対抗試合を行う。それが貴方たちが次に行うイベントです」


 ドヤ顔でいう泉教頭。クラス対抗試合。キランっと彼女の眼鏡が光るのだが、まあそんなのないんじゃがなとマグドールは澄ました顔で言ったのだった。

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