ベーター組とすれ違い
ストーリーの裏ボス厄災グレゴア倒した俺は有栖川と別れ、Fクラスのメンバーで構成されるマアトの天秤と合流した。
太一はギャン泣きし、新見さんも柊さん、そしてA組男子組、權田衛士と高峰巧も何故かそこにいて彼らも泣き崩れていて色々大変だった。
もの悲しいストーリーに触れてこなかったから耐性が無かったらしい。そこからはMMOあるある──討伐記念撮影とか反省会とかアド交換とかまあ色々とやった。これも醍醐味だ。
「かあああ!やっぱ強いボスと闘って勝つとスッキリするなー」
背が小さい武道家スタイルの少年、高峰功がぐっと伸びをする。
「だな、くっそ面白かった。この感覚味わえたのはマジで何年振りかってくらい久しぶりだ」
俺がそう高峰君の言葉に同意すれば彼は俺を興味深そうな瞳で捉える。
「見てたぜお前、とんでもねえ奴だな。あの動きホントにFかよ」
「お前だって一人で捌いてただろ?見てたぞ」
小さいから小回りが利くのかジョブがないにも関わらず彼が回避盾のような役割を果たしていたのを俺はきっちり見ていた。
「当たり前だろAなんだからって言いたかったがあんまランクとか関係ないのかもな。悪かったよ、改めてよろしく俺は高峰功だ」
高峰功。思った以上に気持ちのいい奴だった。
「桂木流星だよろしく」
「流星、お前と一緒に一回やってみてえ。今度、ダンジョンでももぐらね?」
「いいねーじゃあ、先進んでダンジョンあったらそれいくか?一緒にやるのもいいけど、どっちが先に降りれるかって勝負もやってみてえな」
「おおおおーいいなーそれやろうぜやろうぜ」
ザンっと音が鳴って、振り返れば權田が地面に盾を突き刺しそっぽを向いていた。彼はぼそぼそという。
「そういうことなら俺も付き合ってやらんでもないぞ、セイリュウ」
「え?」
「權田さん素直じゃねえなホント。そういう時は一緒にいきたいって言えばいいんだって」
「別に一緒にいきたいとかそんなわけじゃない。ただ盾役が必要かと思ってだな。お前らは前衛タイプだ。ちょっとした判断ミスで危機を招きかねない。そこにもし俺という存在がいれば落ち着いて職を変えたり回復を行うことができるだろう。何、遠慮することはない。俺も二人の前衛を抱えてどこまで動けるかというのを丁度ホント丁度試したいと思っていたところだったんだ。要するにだセイリュウ……」
「んで?お前らF組はこれからどうすんだ?」
高峰がスルーした。後ろで權田がまだぶつぶつ言ってるから何か怖い。PTリーダーである新見さんがこれに応える。
「どうする言われてもな。普通に学校の指定場所に行くだけやけど?」
「んじゃ一緒に行こうぜ。もう終わりっぽいしな」
「終わり」
「先行した奴らの話じゃ。そこでβ版が終了するらしいぜ」
マジかっと思う。ここで一旦終わり。製品版はいつになるのだろうか。一週間、一か月、もう一日だって待てそうにない。とはいえ向かうしかなく、俺たちは揃って歩き出した。
「アンタいつまで泣いてるのよ瀬良君。ほらさっさと行くわよ」
「だってえええテトたん。エアたんがああエアたんがあああんなの可哀想すぎるううううううう」
太一はまだ発狂していた。そしてミアな。ややこしいから正式で呼んで欲しい。
学園が指定した場所はストラージュの町からずっと進んだ先。そのため一度町を抜けるために戻ってきたのだが、やけに俺たちとは違うプレイヤーの姿が目に付いて俺は首を傾げた。それを見ていた權田が囁くように教えてくれた。
「あいつらはベーターテスター組だ」
「へえ、いるとは聞いてたけど。俺たちの方が早かった……なわけねえよな」
ものにもよるが、大体ベーターテスターに申し込む奴はヤバいのが多い。
「ああ、別ルートで入ったらしい。学園側から指定があったのか、運営の考えかどういう理由かはわからんがな」
「ふーん」
「プレイヤー情報に詳しい奴らによると若手の有名どころが多いらしい。無名のゲームにここまで集まったなら運営側から招待状を出したのだろうとな」
「若手で有名か。話して見てえな」
「止めておけ」
何で?っと目で語れば權田が軽く顎を掻いた。
「俺たちは余りよく思われていないんだそうだ。ゲーマーが学校いくだなんてな。勿論、強引に絡まれることはないがこっちからいくとわからん。学生だとわかるこの状況、敢えてこのタイミングで揉め事を起こさんでもいいだろう」
「まあそうだな」
助かったとすれば彼は高峰と話し始め離れてゆく。するとチョイチョイっとキッカが手招きするので俺は向かう。
「どした?キッカ」
「どしたではないわ。お主わしに言うことがあるのではないかの」
いうこと?んーっと悩み、思いついたとポンっと手を打つ。
「ああ、凄かったなお前マジで。完璧なタイミングだった吃驚したぞあれは」
「遅いのじゃすぐ言うもんじゃ褒めたたえるもんじゃ。お主の周りにはいっつも人が沸きよってからに」
「しゃあねえだろ?俺は学生でお前はサポーターなんだから」
キッカと俺の間には越えられない壁がある。AIと人。それは仕方がないことだけど、あの物語を見たせいもあってもうちょっと優しくしてもいいかも知れないっと俺は思う。
「ぬうううう。大体の、流星。どう考えても前回わしの出番が少なかったと思うんじゃ。それはつまり言い換えるならお主がわしを蔑ろにしていたと同意ということっ」
「はいはいそれで?」
「つまりわしは要求するのじゃ。デート一か月を所望すると」
「馬鹿いえって。そんなところ学校の奴らに見られでもしたら絶対、ハイ・ロリコーンとか最低最悪なあだ名をつけられちまう。だから絶対駄目だ」
「むー」
彼女と他愛もない会話をして進む。直後、ぞわっとした感覚があって俺の口角が上がってしまった。
「む?どうしたんじゃ急にニヤけよって。ほう、さてはわしとのデートがそんなにも楽しみじゃと」
「違え違え。今、すれ違った奴とどっかで戦う気がしてさ」
「そんなことがわかるものなのかの?」
「いんや、ただの勘だな。さて堪能しながら行こうぜキッカ。ベーター版が終わったら製品版くるまでインできねえかも知れねえんだしさ」
「ふむ……ぬ?なんじゃと!?では、また当分会えぬのではないのか?」
「それはしゃあねえよ。俺開発者じゃねえんだから」
「駄目じゃ駄目じゃやっぱりキッカはデート一か月分を所望するのじゃああ」
じゃれ合うように俺とキッカはストラージュの町を進むのだった。




