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廃人遊戯譚『ヴァラエティーパラシス』~人とAI率いる俺が廃人へと至る道  作者: 流体紀行
βテスト『学園ラヴェルとヴァラエティーパラシス』
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最下荘とランキング

 人は想像を超えた存在に遭遇した時、立ち尽くしてしまうのかも知れない。俺たちFクラスはこれからの生活で寝床となる寮を前にして言葉を無くしていた。


 例えるまでもなく残骸。何とか雨風はしのげるだろうが、人の住むような場所ではなかった。


「噓だ。こんなの間違いだろ」


「ううん、間違ってないよ。一応ほら、Fクラスって看板が掛かってる」


 誰かと思えばあのガリ勉君で、その横にいた幼く見えるショタっぽい男子生徒が指を指して答える。確かにここが俺たちの寮であるのは間違いないようだ。


「うーん。一応、覚悟はしてたけど、これは流石にうちの想像を超えてたわ」


 口元を引き()らせる新見さんに俺も激しく同意する。これでは学校生活ではなく、サバイバルである。


「ねえ、これって男子と女子別れてるわよね?こんなの……着替えとかお風呂とかどうするのよ」


 やや怒り気味に混ざってきたのは委員長っぽい眼鏡をかけた真面目そうな女生徒だった。というかあれだ。どこかのタイミングで俺たちは自己紹介をした方がいいかも知れない。正直、誰が誰やらになってきた。


(でも、何つうかリーダーになれそうな奴がいねえんだよな。俺らのクラスって)


 いるとすれば委員長っぽいこの子だが、この子も担う気はなさそうだ。当然、俺はそういうのは苦手なのでなる気はない。


 ゲームではリーダーを勤めていたこともあるがそれとこれとは別なのである。


「ねえ、皆。先生に直談判しにいかない?こんなの許されない「待って」」


 女生徒を遮ったナズナがじっと奥を見つめてぼそりと続ける。


「誰か来る」


 耳をすませば確かにこっちに来る足音があって、人影が見える。というかここ暗過ぎである。少し待っているとゾンビのようにふらつく二人組の影が俺たちの前で止まった。


「おや、怖がらせてしまったかな?君たちがFクラスでいいんだよね?」


「ですけど、えっと貴方は?」


 それは兄弟なのか。金髪碧眼という似通った特徴を持った外国人の男女で、多分、元は美男美女なのだろうが頬がこけていた。


「僕はロフト。こっちがパトリア。僕らは君たちの先輩で案内役さ。ようこそ僕らFランクの巣。最下荘(さいかそう)に」


「えっと……宜しくお願いします」


 最下荘(さいかそう)。そのネーミング。もっとどうにかならなかったのだろうか。


「どうだいこの自然。いい場所だろう」


「というか自然しかないですけどね」


 俺の言葉にロフト先輩はニヒルに笑った。


「残念ながら人は慣れてしまうものだよ。どんな環境でもね」


「あの……やっぱ食えない感じっすか?」


 育ち盛りなのでそれは勘弁願いたい。俺はかなり食べる方なので、実はナズナの話を聞いてからずっとそればかりを心配していた。


「いやいや、君たちは必要最低限の学生生活が保証されていて学活保護が受けられる」


「必要最低限?」「学活保護?」


 よくわからないと俺たちから疑問の声が溢れれば肩をすくめたロフト先輩が解説してくれた。


「これから案内するが、ここの中心に物質補給ができる場所があってね。勿論、今日入ったばかりの君たちには無料解放される。後で好きなものを選ぶといい。それ以降は当然、この学園でのお金『ラヴェルコイン』が必要になるけれど、稼げなくても支給してもらえる」


 どうやら飢えることはなさそうだとホッとする俺たちだったが、続くただというロフト先輩の接続の言葉に表情を固めた。


「その出元が上のクラスの稼ぎ金でね。差別は校則で禁じられているんだが、これが中々惨めものでね。ボディーブローのようにじわじわと効いてくる。ここを卒業してもずっとこんな生活が続くんじゃないかってね」


 同じFを知る者として、まず最初の一発がロフト先輩から放たれ俺たちは沈黙してしまった。


「だからFクラスの先輩として無駄遣いせずに為になるものにつぎ込むことをお勧めするよ。まあ、恥ずかしながらそんな事を言う僕は、未だにFのままなんだがね。さて、行こうか。男子はこっちに女子はパトリアについていってくれ」


 その頬の(くぼ)みは苦労の証。頑張んなきゃなと気合いを入れ直した俺たちは先輩達の優しい歓迎を受けた。


 それからすっかり夜になり、俺が欠伸をすれば連られて隣にいた太一もふわああっと大口を開ける。


「眠っむ。じゃあ、流星。俺もそろそろ戻るわ」


「おう、サンキューな。助かった」


 ここは俺の寮部屋前。廃墟の中は意外にもちゃんと部屋があって、まあといってもそれは石の牢屋みたいな殺風景なものだったが最低限のものが備え付けられていた。そして──まだ必要そうなものを中央にある供給場から俺たちは協力し合ってずっと運び出していたのだ。そのため既にクタクタである。


「俺も手伝ってもらったからな。言いっこなしってことで。なあ、流星」


「ん?」


「楽しみだな。これから」


 ニヤッと笑い拳を出してくる太一に俺も苦笑して拳をぶつける。俺たちはゲーマーであり、三度の飯よりもゲームが好きだ。このラヴェルでならまだ一般公開されてないゲームにもこれから触れられるはず。ワクワクが止まらない。


「ああ。じゃあ、また明日な太一」


「おやすー」


 プラプラと手を振って去ってゆく中学からの同級を見送って俺は扉を閉じた。自室。4畳半という狭さだが自分の城であることに変わりない。俺は焚き火のような赤い光が灯るランプを付けてみるも予想よりも明るくならずに少しガッカリする。


(あちゃーこりゃやっちまったかな。暗れーや。まあでも)


 雰囲気はいいと俺はぼふっとベットにダイブした。こういう生活に憧れていたのでちょっと楽しい。頑張ってラヴェルコインとやらを稼げばリフォームだってできてしまう。


 俺はスーッと新品の匂いを味わって、真横にあるベットのような機械に手をのばした。これは備え付けられていたものであり、人々を架空現実に連れていってくれる箱。世界トップVR企業タブ社によって開発されたゲーマーたちを魅了して止まないVRゲーム機『パンドラボックス』だ。


「やっべ」


 (まぶた)が落ちるのを気合いを入れて防ぐ。この後、学内放送があるということで起きていろと連絡があったのだ。少しウトウトしていれば、(ようや)く始まったようでラヴェルのテーマ曲が鳴った。その後に始業式で司会を勤めていた女性の声が続く。


「おほん、あ”-あ”-マイクのテスト中。はい、それでは第153回目ラヴェル学内放送を始めます。さて、まずは新入生の方々、入学おめでとうございます。そして在校生の皆さん。また新しいライバルの登場ですね。負けないように学業に励んで下さい。それではまず校内ランキングの発表からいきたいと思います。ランキング~~~キュービークっ!!!」


「テンション高けえなこの人」


「ラヴェルポイント128万……不動の第一位、三年Sクラスの海道豪鬼(かいどうごうき)君」


 しかし、この発表の仕方は(たぎ)る。


「いいな。わかってる。海道豪鬼か。戦ってみてえ」


「ラヴェルポイント103万……美しいものにも棘がある第二位、三年Sクラス草ヶ部函(くさかべはこ)。ラヴェルポイント83万……サボり魔なのに稼いでる第三位、三年Sクラス旋盤和樹(せんばかずき)。旋盤君、個人的にタイプです!きゃっ♡」


「……」


 つい、(しか)め面になってしまった。しかし、やはり3年Sクラスで総合ランキングが独占されている。


「まあ、そりゃそうか」


 勿論、学年別。クラス別でのランキングも発表されるが、こうして放送で発表されるのは全学年ものだけのようだ。その後も3年Sクラスの名前が呼ばれ続け


 そして──


「ラヴェルポイント32万……唯一2年からノミネート」


「おっ」


「第十位、2年Aクラス火乃崎火燐(ひのざきかりん)


 しかも、Aクラス。やはり成り上がれる。俺はぎゅっと拳を握り込んだ。


「さて、新入生の皆様、貴方方の教材が決定しました」


(きた)


「まだ発売されてない日本VRゲーム業界最大手ニンステーションによる最新VRMMO。更にあのタブ社が協賛。その名────ヴァラエティーパラシス」


「ヴァラエティーパラシス……タブ社が協力!?しかも、国産って!」


 ぞくんと心臓が跳ねる。作っていた拳を俺は枕に叩き込む。待望の日本産がラヴェルの教材に選ばれた。まだ触ってすらないが期待が溢れる。俺は目指す。学年トップ、いや、VRゲーマーの頂点ハイヒューマンを。俺の中にあるやや陰りがあった夢が今その輝きを取り戻そうとしていた。

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 流星ノート〇 パンドラボックス

 棺桶キャスケット型 アメリカの大企業タブ社によって開発された新時代の乗り物と称されるハイテクノロジー 電脳に接続することによりVR空間に旅立てる

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