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裏・エピローグ 前に進む者達

 それから暫くたってお国の兵士がやってくるとエアの命令によってミアの遺体は運び出された。丁重に保管し、水龍と相談するとのことだ。少しだけボンヤリしているとエアが俺の元へやってきた。


「稀人様、この度はあの子の思いに沿っていただきありがとうございました」


「いや、俺がやりたくてやったんだ。礼とかいいよホント」


「それで此方はミアからの」


 そういって手渡された金貨袋を受け取る。20万パラシスコイン。ミアが冒険者として稼いだお金。


「私はあの子の意思を継ごうと思います。でも、それは憐れみではありません。私がやりたいと思ったからです。あの光景を見て魔物には対話できる者もいると私は知った。何年かかっても例え無理であっても私は人生を楽しんで目指していきたいと思います。争わずに済むのなら越したことはないのですから」


 そう微笑んだエアがミアのものと重なって、俺は金貨袋を投げ返していた。彼女はぎょっとなって受け取り何故と首を傾げた。


「だったら、アンタがそれを使うべきだ。ミアもそんために溜めてたんだきっと」


 まあカッコつけたがぶっちゃけるとだ。


(んなお金で装備買えねえよ俺は)


 である。モヤっとするものを心に抱えるくらいならこれくらい素材狩りで俺は貯める。


「はい。そうだ!では稀人様此方をどうかお持ちください」


 そういって彼女が首から外し渡してきたのはミアの騎士の証であるペンダントだった。


「あの子も旅をしたかったでしょうから、よろしければ稀人様の旅に」


「んーじゃあ、ありがたく貰っとくよ」


「それでは稀人様此度は本当にありがとうございました。何かありましたら……いえ、何もなくても是非お城にお越しください。エア・ストラージュは貴方を歓迎致します」


 それではと別れの挨拶をし去ってゆく彼女を見送れば今度はアッシュがやってきた。


「世話になったな稀人」


「お前の事は世話してねえけどな別に」


「ふっ最後の最後まで気に喰わん奴だ」


「それくらいの距離感でいいだろ?俺らは」


 そういうとふっと彼は笑った。


「そうだな。腹立たしいがお前と同じ意見だ」


 少し間があってからアッシュは語りだした。


「俺は魔物の監視役に選ばれた。そいつはひたむきでいい奴で……でも俺の直感で死ぬと分かった。どう足掻いてもそいつには死がまっていると」


 アッシュの白髪が風で揺れた。


「だから少しでもいい結末を。俺はそう思った。そんな時だ。鍵であるお前がやってきたのは」


「満足のいく結末だったか?」


「さあな、それは当事者が決めることだ。傍観者は所詮傍観者。どれだけ多くの者が悲しいと断じようとな。それは当人が決めること」


 確かにその通りだと思う。ハッピーかバッドかなんてより、彼女が良いと思って逝けたか悪いと思って逝ってしまったか。そっちの方がよっぽど重要なんだと俺も思う。


「ただ……お前とミアは」


「ん?俺とミアがなんだよ?」


「いや、止めておこう」


「はあ?」


 そこまで言っといてと俺は思うが彼はコンコンっと自分の側頭部を叩きニヤッとした笑みと共に二本の指で俺を指した。


「俺の直感が言っている。お前は先を言われることが嫌いだってな」


 いや、確かにネタバレ嫌いだけど流石に寸止めはモヤっとする。アッシュは馬を呼び寄せて跨ると俺に最後と言葉を告げた。


「稀人、俺たちは前に進む。だが、それは失わぬためにだ」


「お前それ俺の言葉……」


 俺を無視してそのまま去ってしまった。


「ったく 人のを使うな恥ずいだろ じゃあな壁凭れ野郎」


 さてと俺はペンダントのステータスを開示した。ジャラっとしたチェーンに緑の宝石が入ったアクセサリー。


「ミアのペンダント 効果なしの売値ゼロ、こりゃ記念品だな。あーあ、あれだけやって記念品一個になっちまったか」


 まあ、全く後悔していないが。ホントこの熱量のまま終われて最高だった。


「次のストーリーも楽しみだなこりゃ」


 エンディングが流れ余韻に浸っているとパッと雰囲気が変わり、ストーリーが完全に終わったと理解した。


 キョロキョロと周りを見渡せばしゃがみ込む有栖川を発見した。どうやら二人きりっぽい。まあ挨拶くらいしとくかと俺は彼女に近づく。


「お疲れ有栖川。お前のお陰でクリ」


「こないでくださいっ!」


「ア……」


 強い拒否の声に俺は驚き足を止める。そして、気づいた彼女が泣いていると。


「どうして貴方がここにいるのですっ桂木流星っ」


「いや、俺一人で見るためにチャンネル変える癖があって……多分、偶々一緒になったっぽいなこりゃ」


 ダンジョン前も混みやすいのでチャンネル式である。二人とも変えて奇跡的にそれが被ったのだろう。まあ、偶にある。


「っこの馬鹿っ!チャンネルが幾つあると思っているのです!何で同じものを引くのですっこのストーカー」


「いや、んなこと言われてもさ」


 これは距離を置いてやった方がいいかと思い、離れようとするが彼女が話しかけてきたため俺はそのタイミングを逃してしまった。


「私は泣いてません」


「おっおう」


「泣いて無いのです う”う」


「分かったから落ち着けって」


 彼女は目に涙を溜め、唇を噛み締めていた。


「ゲームで泣くなんてありえません。彼らは実在しないのです。これはただのお話なのです。そんなものを悲しむなど馬鹿げています。無駄な行為。必要のない行為。そんなもの弱き者の行為です」


 そうだろうか。俺もうるっときたが俺はそれを弱さだとは思わない。


廃人(ハイヒューマン)を目指すものとして恥ずべきものっ!なのに涙がっ溢れう”ううう」


 完全に泣き始めてしまった。俺は頭を掻く。ゲームばっかだった俺は泣いてる女の子の対応なんてわからない。ただ──


「なあ、有栖川。昔の人はさ。それこそVRMMOなんて無かった時代の奴らはさ。映画とかアニメっつってただの映像、それこそ紙芝居みてえなもので描かれた空想の話を見て実際に涙したり笑ったりしたんだそうだ。だから、別に俺らが人間っつうならいない者に涙することは別に変なことじゃねえ」


 ずびっと鼻を(すす)る音。綺麗な顔がゲームの中なのに涙塗れになっている。でも、カッコ悪いとは思わない。


「俺たちがどんだけ進んでもそれは捨てなくていいんじゃねえかなって思う。強さ弱さの話とはまた違う。それでもお前が恥ずかしいって思うなら、俺は笑わねえし、ここであったことは誰にも言わねえって約束する絶対に。だから泣いちまえって」


 余程このストーリーが彼女にぶっ刺さったのだろう。ボロ泣きする有栖川。普段の(りん)とした雰囲気はどこへやら何だか普通の女の子っぽい。


(意外と無理してたりすんのかなこいつ)


 しかしと俺は天を仰いだ。


(これ俺チャンネル変えてこのままスッと出てったら酷い奴なのか?それともいた方が空気読めてねえ奴?ヤバいぞ全然わからんぞ。姉貴よ弟を助けてくれ)


 姉貴召喚呪文があればいいのに俺も別の意味で泣きそうだった。


 ◇◇◇


 とりあえず動かず待ってみる。というよりもはやここ離れるわって伝えられる雰囲気じゃなかった。ボーっとしていると徐々に泣き止み彼女がディムロでツンツンと俺の肩を叩いてきた。


 何だそのバッチイものみたいな扱いは。勿論、顔には出さないが。


「えっと、落ち着いたみてえだな」


「貴方にはまた恥ずかしいところを見せてしまいましたわね」


「そんな気にすんなって。俺は馬鹿だからすぐ忘れるって」


「まあ貴方が馬鹿なのは同意致しますわ」


「おい」


 どうやら調子も戻ってきたらしいと俺は彼女を見てつい笑ってしまった。


「貴方っ私のこと笑わないって」


「ああ、いや違う違う。泣いた事じゃなくてこれだよこれ」


 っと俺が指したのはミアのペンダント。そう、彼女も首に身に付けていたのだ。


「効率効率言うお前も記念アイテム取ってるのは意外だと思ってさ」


 まあそれだけこの物語に思い入れができたからだとは思うが、頬を染めた彼女はプイっとした。


「ユニークアイテムかと思っただけですわ。それに20万なんてもの私にははした金ですから」


「はいはい」


「何です!その態度はっ」


 殴りかかろうとする有栖川を躱して立ち上がり俺はパンパンっと砂を払った。


「じゃそろそろ行こうかな連れが待ってるだろうし。サンキューな有栖川。今回クリアできたのは紛れもなくお前のお陰だ」


「私だけではありません。あのメンバーだったからですわ」


「ああ、でも集めたのお前だろ?あの面子を集めたお前の功績はでけえよ」


 俺が手を差し出せば、嫌そうながら彼女はとってくれた。


「まっ受け取っておきます」


「おう、じゃな」


 そういってエリチェンしようとしたが彼女に止められてしまった。


「桂木流星」


「ん?」


「私は一年でラヴェル上位者、十帝に入り自分のクランを創る予定です。あの……だから私のクランに」


 俺は首を振った。


「悪い、俺もクラン作る予定なんだ。勿論、一年でな」


 そういえば、彼女はふうっと息を吐いた。


「全く有栖川家の誘いを断るのは貴方くらいのものです」


「そんな有名なのかよお前の家」


「ええ、それなりに。では私達はライバル。そのよしみとして一つだけ教えてさしあげます。私が重ねを得意とすることはもうご存じですね」


「ああ」


「私は感覚が鋭くどのゲームでも簡単にマスターしてしまいます。いえ、そうできるように育てられてきました」


「マジか」


 あれを英才教育で習得できることにまず驚きである。


「ですが、このゲームでは思うように進みません。何故だかわかりますか?」


「いや」


 サッパリわからないとすると彼女は片手を広げその笑みを深めた。


「このゲームが人の手によって作られていないから」


「は?」


「いえ、少し語弊がありますか。大枠は人が作っているのでしょうが恐らく大半をAIに任せているのでしょう。人工知能に投げている。であればこのゲームはパーフェクトバランシアとなる可能性が高い」


「パ?パーフェクトバレ?」


 聞き慣れない単語。有栖川はそんなことも知らないのかと肩を竦める。


「私たちゲーマーたちの描く夢。より完璧なバランス・公平性がとられたVRMMOのことですわ。実現不可能であると言われてましたがもしこのゲームがそうであるなら」


 歩き出した彼女は俺の横をすれ違うように肩を叩き、俺の耳元でささやいた。


「世界中、いえ全VRMMOからあらゆる廃人(ハイヒューマン)達がこのゲームに集結する」


 思わず目を見開く。全ハイヒューマンの集結。もしそんな事になればどうなるのか。群雄割拠、大戦国時代。もはや想像もつかない。


 ただ間違いない、凄まじいことになるのだけはわかる。俺の食いつきに有栖川がクスリと笑った。


「その中でも貴方のようなやり方が通用するというのなら私に見せて下さい」


 頭が沸騰するほどワクワクする。でも、とりあえず今はと俺はハンカチを拾い上げた。


「有栖川!鼻水だらけのハンカチ忘れてるぞ。すげえなこのゲーム、アイテム名がお前の鼻水だらけって出てる。どんだけ細かいだよ なっ」


 彼女の赤面顔が拝め、俺の頬に真っ赤な紅葉の呪いが掛かったとだけ書き記しておこう。


          ver1.0 水龍伝説とおてんば影姫 FIN

                ≪update≫

          ver2.0 スチームゴーレムと星読みモグラ

あとがき 

 もうちょい1.0は続きますが一先ず締め ここまで読んでくれた方々thanks

続きが気になるという方は評価、ブクマどうかよろしくお願い致します

今日はキリがいいので一回更新です。

廃譚の100年前に当たる全く別の新作デュアルミッシュを投下予定。そちらはサクッと読めるのでお時間があれば開始は1.5終わりから

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