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廃人遊戯譚『ヴァラエティーパラシス』~人とAI率いる俺が廃人へと至る道  作者: 流体紀行
βテスト『学園ラヴェルとヴァラエティーパラシス』
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新見結とライフストリーム

「はあ……」


 俺たちFクラスは全員揃って寮がある場所に移動していた。もう日暮れのため暗くなっていて校舎には電気が付いている。異常な待機時間とお腹が減ってるわでFクラス全員が既にへとへとだった。


「はあ……」


「おい、溜息辞めろよな太一。折角の日なのに暗くなっちまう」


「だってよ~流星~。思ってた入学と違えよ。こんなのってねえよ。酷すぎるぞ。俺と契約しろってんだ」


「またお前は訳の分からんことを」


 太一は今や死滅してしまったアニメオタクである。アニメは時代の変遷(へんせん)と共に作られなくなったので、彼の知識はかなり古くて伝わらない。まあ、VRMMOの発展により俺たちの生活自体がそもそもアニメのようになってしまったのだ。


 これは必然というやつなのだろう。


「なあ、ここまで生徒を放置するってさ。学校として問題あんだろ」


「うんうん、うちもそう思うわ」


 太一の愚痴に答え、歩く俺たちの間から女の子の顔がにゅっとでてきてぎょっとする。明るめブラウンの長いツインテールが揺れて、悪戯好きそうな瞳が俺たちを掴んで離さない。少し大きめの胸に目がいけば、ドンっと肩を組まれて俺たちは照れた。どうやらこのツインテさんはサバサバしたタイプの女の子のようだ。


「えっと……」


「うちは新見結(にいみゆい)。宜しくなー。流星君と太一君。ああ、名前はナズナちゃんから聞いたんよ」


 そう俺たちに微笑んだ新見は顔に力を入れてナズナを真似る。


「少なくともあいつらは悪い奴じゃない……。って言ってたわ」


「はは、似てる似てる」


 ちなみに、ナズナはこの場にはおらず、少し離れたところで同じような桃色髪の小動物系女子と楽しげに話している。案外、彼女はコミュ力が高いのかも知れないと俺は視線を切った。


「まあ、兎に角よろしく新見さん」


「よろしく結たん」


 太一の顔が既に(とろ)けていたが俺は見なかったことにした。太一は惚れやすいのだ。新見さんは関西の出のようだ。


「それでな。今、皆に声かけてるんやけどクラス全員で直談判して」


「それは止めて置いた方がいいんだな」


 またまた乱入者。だが、その声はまさしく上から降ってきて俺たちは揃って振り返った顎をあげた。自然と口が開いてしまう。そこにいたのは電柱のように背が高く、顔まで細長い男子生徒。


 とても目立っていたので始業式からその存在には気づいていたが、改めて前にすると驚いてしまった。


「確か塔鉄君やんね?」


「んだな。塔鉄伝朴(とうてつでんぼく)。よろしくなんだな」


 俺たちは軽い自己紹介を終えると新見さんが聞く。


「それで?止めて置いた方がいいってどういうことなん?」


「VRMMOが社会問題になってるっていうのは君たちも知ってるんだな?」


「そりゃあ」


 まあと俺たちは顔を見合わせて頷く。VRMMOは年々問題視されている。


 だからこその学校であり、資格制が導入されたのである。俺たちはそれを取るためにここに来ていてそれも目的としている生徒は多いだろう。


 ちなみに、資格が無ければ長時間のプレイが違反となり、まずハイヒューマンになるのは無理だと言われている。勿論、別ルートも用意されてるがやはり学園での取得が一番最速で楽。


「その中で特に注目されているのが破綻者の存在なんだな」


 破綻者。それは読んで字のごとく破綻し生活できなくなったもののことを指す。トップ層でなくともVRMMOは飯を食べるには困らないくらい稼ぐことができる。


 それに配信、攻略サイト経営、装備作成・デザインと収入源は多岐にわたる。が、当然誰でもというわけではない。稼ぐことができなくなり、それでも夢を追い続ける者。それが破綻者だ。ゲームを仕事にするというのは見切りをつけるのが難しい。


 稼げていてもそのゲームの人気が急落し駄目になってしまう何てケースもある。またそういう者が現実社会に復帰するのも簡単ではないと言われていた。


「それがうちらとどう関係あるんよ?」


「このままじゃヤバいんじゃないか。現実に戻らなくてはいけないんじゃないか。そう考えなければならなくなる確率が一番高い者。それがFクラスなんだな」


「要するにもう崖っぷちってことか?」


 俺の言葉に塔鉄君の高い位置での頷きが入る。


「んだな。今は言うことを聞いて置いた方がいいんだな。退学になるかもしれないんだな」


「退学って俺ら入学したばかりだぞ」


 これに塔鉄が太一を見下ろす。


「君たちは2年の人数見たんだな?」


「いや、見てねえ」


「俺は背が高いから、はっきり見ることができたんだな。先輩達の数が今年と同じなら明らかに減ってるんだな。特にFクラスは三分の一に」


「それマジかよ」


 入学気分が一気に消沈する。まあ、それくらい厳しくてもおかしくない。ラヴェルの情報はそのほとんどが秘匿されている。既に生徒を振り分ける仕掛けが始まっているのかもしれない。しかしと、俺は軽くFクラスの面々を見た。


(こんなかの3分の2しか残れねえのか)


「退学になった兄貴が言ってたんだな。ラヴェルは夢のような場所であり、現実を教える場所であるって」


 夢から醒めさせる場所。どうやら寮はクラスの高位順に校舎から近くなっているようで別クラスの者達が次々と豪華な寮舎の中へと消えてゆく。当然、俺たちのクラスは一番奥。


 舗装が雑になり、校灯も少なくなって闇に包まれ始めている。それは確かにFクラスの未来を暗示しているかのようだった。


「でもよ。俺らライバルみてえなもんなのに。何で教えてくれるんだよ?」


 太一の言葉にそういえばそうだと俺が塔鉄を見れば彼は照れたように頭を搔いた。


「同じクラスメイトなんだな。いがみ合うより、俺は実力で勝負したいんだな」


「お前、いい奴だな」


「下心もあるんだな。流星君はあの竜の爪(ドラゴンクロー)のドラクロのリーダーだったんだな」


 懐かしい名前が出てきたなと俺は目を瞬かせた。


竜の爪(ドラクロ)?」


 首を傾げた新見さんに俺は答える。


「昔流行ってたライフストリームっていうゲームで俺たちが作ったクランだよ。ほとんど中学の面子でやってて。太一も幹部みたいなもんでさ。楽しかったな」


「ああ、最高だったな」


 まあネームセンスが中2だが当時は中学生だったので許して欲しい。


「へえ」


「とても有名だったんだな。大人ギルドにも負けてない中学生ギルドって人気で。色々話を聞きたいんだな」


「いやいや、そんな大した事ねえって。偶然、勝ったりしただけだからな?」


「何かようわからんけど、要するに男の友情っつうやつやね」


「いや、結たん。多分それ違う」


「ドラゴンクロー。流星私に言うことある?」


「おわっ」


 いつの間に傍に来ていたのか、今度はナズナが真下から覗き込んできたため俺の心臓が跳ねる。暗さもあって霊的なものに見えたのだ。何か同系統の女子が背後に張り付いている。例えるならば──


(妖怪、二人羽織)


「言うこと?お前に?」


 何だろうかと首を傾げればナズナがむくれた。


「流星の馬鹿……」


「え?」


「ついたぞ」


 ナズナが何か言った気がしたがクラスの声にかき消されてしまった。見れば暗闇の中に建物らしきシルエットが浮かび上がっている。これが俺たちの寮。それを見た俺たちの中の誰かが言った。廃墟じゃんっと。

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流星ノート〇 ライフストリーム

流星が中学時代に日本で流行していたVRMMO。日本政府も期待し投資を行っていた。がサービスは停止

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