知り合いとレイドPT結成
ギルド2階。そこの一室を予約することでPTホームとして利用することができる。通常VRMMOのPTはやはり男一色、女一色の割合が大を占めるけど俺たちは学生ということなので疎ら。ちょっと合コンっぽい感じになってしまう。
今回のレイドは3PT18人で挑むコンテンツ。そのため、俺たちが入ると美咲と有栖川を含んだ11名の学生に出迎えられた。
皆それぞれの装備に身を包み、俺たちを観察する。室内は予約した有栖川の趣味なのか高級感があってお洒落。刺さる視線の中で踏み出そうとすれば一番前にいた少年が俺たちに待ったを掛けた。
「ちょと待ったストップよろしく」
ピタリと止まり、見つめる。低身長で気が強そうな男子。ギザギザの灰色髪に武道家のようなダボっとした黒ズボンを履き、裸の上から一枚だけベストを羽織り、割れた腹筋を披露している。
「俺はA組高峰功。お前らは」
「俺はFの桂木「ああ、もういいよ。装備見ればわかるし」」
俺の自己紹介を遮って高峰は真ん中で退屈そうに席に座る有栖川に向いた。
「どういうことだよ?アンタが待ってろっていうからいう通りにしたら来たのFじゃんか。これならBの中井達を入れた方がよっぽど良かっただろ?ただでさえCとかDとか混ざって」
「私と美咲がこのPTの中で一番経験があるのです。必要な者を揃えただけ。それが気に喰わないというのでしたら抜けて貰って結構です」
「なっ……正気かよ。っ權田さんアンタも何か言ってやって下さいよ」
權田と呼ばれた者は熊のような大男。学生にあるまじきその筋肉隆々とした体を重装で覆い、タンクを得意とすることが見て取れた。彼は俺を凝視していて、俺もそれが知り合いであったことに驚いた。
「あっゴンタ」
ガタっと立ち上がった音に俺の声は潰され、ズンズンズンと近づいてきた權田に手を掴まれ、外へ出さんと引っ張られる。
「すまん、ちょっとこいつと話がある。悪いが少し待っててくれ。ほら、早くこいセイリュウ」
キョトンとする高峰君を放置して俺は自己紹介もできぬままに外に出されてしまった。
權田衛士、通称ゴンタ。俺が中学にやっていたライストでの知り合いで何度も戦ったしPTを組んだこともある。
「ちょっどこまで行くんだよゴンタ」
俺が言えば投げるように壁に押され指を突き付けられた。
「お前が何でこんなところにいるセイリュウ」
「何でって?言わなかったっけか?学校行くって。後、黒歴史思い出すからその名前で呼ばないで欲しいんだが」
中学の時、名前をアナグラムで登録するのが流行ってた。うん、それだけ。深くは語るまい。
「そういうことじゃない。何で貴様がFにいると聞いている?少なくともAだろ」
「知らね。先生に聞いてくれよ。何か試験でミスったんじゃねえかなってうお」
バシンっと權田に背を叩かれ、踏鞴を踏む。
「何すんだよ」
「なら、早く上がってこいセイリュウ。お前は俺のライバルだからな」
「ライバルって全然プレイスタイル違うだろ。後、セイリュウ言うの止めろって俺は流星だってば」
「変えるのは無理だ諦めろ。お前が名を変えるのが悪い。ほら、さっさと戻るぞ早くしろ」
お前が呼んだんやろがいっと若干プチりながらも俺はハっと気づいた。
「じゃあ、俺もゴンタって「次人前でその名で呼んだら殺す」」
「ええ……」
ザ理不尽。ただ、これでいて面倒見がよかったりする。それが權田衛士という男である。
◇◇◇
「そいつはFだがまあ使える男だ。有栖川が正しい。ここは従っておけ高峰」
「ええ……」
急に戻ってきた權田にそう告げられ武道家男高峰が呆気に取られて固まっている。俺たちFの自己紹介も終わり、チラっと残りの生徒を見れば一番手前に座っていた腰まで流れる金髪を持つエルフのような女性がそれでは私がと手をあげた。
彼女は学者のような恰好をしていて金縁のモノクルを身に着けている。鑑術士装備をここまで揃えている生徒は初めて見た。
「私はC組、慧木麒麟と申します。見ての通り鑑術士を好んでいます。以後お見知りおきを」
固っ。皆そう思ったか一瞬シーンとしてコテンっと慧木さんが傾げた。ちょっとクール系の天然さんっぽい。続いてその横の太っちょの男子生徒が自分の紹介に入る。
「僕も彼女と同じC組だね。得意ジョブは分からないけど前衛は苦手。やれって言われたらやるけど……余り期待はしないで欲しいかな。ああっ!名前は福笑笑福。親しい人は僕をダイフクって呼ぶけど、そのあだ名はあんまり好きじゃないかな」
それから全員の自己紹介が終わりメンバーの内訳はこうなった。
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第一PT 第二PT 第三PT
Sクラス 有栖川胡桃 Sクラス 相田美咲 Fクラス 桂木流星
Aクラス 高峰 功 Aクラス 權田衛士 Fクラス 瀬良太一
Cクラス 慧木麒麟 Cクラス 福笑笑福 Fクラス 新見結
Dクラス 男子生徒 Dクラス 男子生徒 Fクラス 柊テトラ
Eクラス 女子生徒 Dクラス 男子生徒 Fクラス 蒼龍ナズナ
??? Eクラス 女子生徒 サポーター キッカ・MarkⅡ
◆───-- - - - - - - – --───◆
「いや、おかしいだろ!」
これにお怒りになったのはあの武道家高峰君である。やっぱりヘイトは主に俺たちに向いている。誰か堅術二式ガウル・カウル唱えてくれないだろうか。
「こいつら一緒くたにするとか捨てPTでも作る気なのかよ」
「いや、アイツがいるというのなら大丈夫だろう」
「權田さん!アンタおかしくなってません?」
そこでスッと慧木さんが手を挙げて彼女に注目が集まった。
「私はこの方々の実力を存じ上げませんが、余り戦闘に自信がないということなのでしたらよく知った者同士で組んでもらった方がまだ連携が取りやすいかと思います」
「そうだね。これでやるなら僕もその方がいいって思うかな。それより気になるのが17人で一人足りないってことなんだけど」
ふっくら男子、笑福君が皆が気にしていた部分を指摘する。自然と有栖川に視線が集まり、受けた彼女は深く息をついた。
「私のサポーターですわ。最後の一人として入れるのは」
有栖川さんの!首席のサポーターっとレイドメンバーがガヤつくが、高峰君がガンっと卓を蹴ってその雰囲気を散らした。
「はっサポーターとかどうだっていいだろ?所詮AI、いずれ人に付いてこれなくなる。使えて素材狩りくらいもんに必死になる神経がわからねえ」
恐らくそれはほとんどの生徒が言わないにしても思っていることだろう。だから、出さない。人と連携をとる方が重要だと考えているから。
実際、これまではそうだった。ただ、俺はこのゲームのAIなら人の領域に踏み入れるのではないかと思っている。
だから、俺はキッカを育てるのだ。誰に何と言われようとも。ぎゅっと手を握り縮こまるキッカの目を大丈夫と見てやれば彼女はうむっと頷いた。
「あの、これ言っていいかわからないんだけど……」
そこに割って入ったのはD組の女子。その子がチラチラと俺を見て言いづらそうにしている。
「あの小さい子のマスターって……その……噂のロリコーン」
心の中の俺が天を仰ぐ。ストーリーの熱さでおもっくそ忘れてたと。不味い、欠片もいい訳が思いつかない。ゲームなのに冷や汗が溢れてくるようだ。
興味津々でこちらを窺っている面々の中にF組の連中がいるのが腹立たしい。
(さよなら俺の学生生活)
俺は全てを諦めたが今度はキッカが俺の目を大丈夫じゃと視線を飛ばしてくれた。そうだ。俺には相棒がいるのだ。共に手を取り合って死線を越えてゆこうじゃないか。
(ここは頼んだぞキッカっ)
「それはわしが説明しようなのじゃ」
わし?のじゃ?っと捻る生徒たちをしり目にキッカは己がつるぺたを服の上から叩いて宣言する。
「こう見えてわしは成人しておる。立派なレディというわけじゃ」
前に0歳児って言ってなかったか?何だろう途轍もなく嫌な予感しかしない。
「つまり何をやっても合法じゃあああ」
もう地獄。




