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ストラージュの真実と奇妙な指示

「あーマジで良かったクリアしてたことになってて。死んで最初からかと思って焦ったー」


「君が何言ってるか僕にはさっぱりだけど、とりあえず君が本当に狂った存在なんだって僕は再認識したよ」


「言ったろ?俺はプレイヤーだから死なないって」


ジトっとした目で見てくるミアに笑みで返してやった。


「稀人って皆こうなの?頭のネジ外れてないかな?」


 失礼な奴だと肩を竦めた後で俺は興味津々いった様子で此方を見ているトカゲ……じゃなかった水龍に顔を上げる。


「アンタも元に戻ったんだってな。もしかして肝心なところ俺って死んでて見れなかったんかなこれ」


「うむ、迷惑を掛けたようだの」


「まあ、俺はよくわからずぶん殴っただけだけどな。だから」


 助けたのはアイツっとミアを指せば彼女はエへへーっと照れていた。


「どうだろうがお前たちに助けられたのは事実だ。しかし、稀人とはな。そちらのお嬢さんも難儀なものだが……これはまた珍しいものだ」


「そうか?ミアは兎も角俺は外に出りゃ腐るほどいると思うけどな」


 そうは言いつつやっぱり俺という一プレイヤーしかいないという体で話が進んでいるのかなって思う。ただちょっと首を捻るのがギルドやモブはプレイヤー達が沢山いると理解していた点だ


(ミス?いや、そこまでの整合性求めるのはやりすぎか?全モブの台詞合わせるとか無理ゲ―か)


「この者急に黙り込んだが?」


「こういうとこあるんですよ彼。で、ん?何か言ったって言ってきますから」


「ん?何か言った?」


「ね」


 何かジト目で見られている。


「オホン話戻すけど何で龍のアンタはあんなことになってたんだ?普通に喋れるみたいだし」


「食わされたからだ」


「何を?」


「ヒトをだ」


 少しだけヒヤっとした。


「食わされた?食わされたということは貴方の意思じゃないってことですか?」


「当たり前だ。どれだけ相手が矮小な存在であろうとお前らは言葉の通じる相手を喰らおうと思うか」


 はい、思わない。表情からそんな俺の考えを汲み取ったか龍の目はミアに向いた。


「お前はどうだ娘よ。貴様は魔物であろう。本来、人はお前の餌ではないのか?」


「僕は……食べません。それに言葉が通じるなら争いたくもありません」


「成程、人語を理解する魔物と出会ったか」


「知ってるのっ!?彼らが何故理解できるのか!」


 ミアは食いつく。彼女はずっと調べていた。


「単純に高度な知能を有しているから」


てっきりミアが魔物だから通じるという話なのだと思ったら純粋に魔物の中に理解できる者がいるようだ。どういうことなのかはさっぱりだが。


「だったらっ何故人を襲うのですか?特攻するかのように……。やっぱり魔物とはそういうものなの……人と争うために生まれた」


「いや、狂わせておるのだろう。先の私のようにな」


「一体誰がそんなこと」


「厄災グレゴア」


 厄災グレゴアと俺も小さく呟く。それは本物のエア姫から聞いた名だ。龍と巫女によって倒され、封印されたいう。


 やっぱり出てくるかという感想だった。美咲達が戦おうとしている裏ボスはグレゴアなんだろうと予想していたから。


「いや、やはり人がというべきか」


「どういうことなの?教えてっ教えてください龍さん」


 ふしゅううーっと鼻から息を出した水龍は軽く尻尾で地を叩き話を続ける。


「厄災グレゴアそれはお前たちももうその目と足で出会っているはずだ」


「え?」


「この地に住まうということは一度は中に入ったであろうからな」


「マジか」


 即気づいた俺に龍はその大きな上顎を引いて頷いた。


「そうだ。お前たちが恵と呼ぶもの。迷宮の正体が厄災グレゴアなのだ」


「嘘っ……」


 名前が一緒なのだ。全く予想していなかったと言われれば嘘になるが、そう来るとは思わなかった。


「奴は我が同胞の屍、ドラゴンゾンビ。あれにもう意思はない。本能に従い己の力を行使しておるのだ」


 そう言って龍は手を上げ、そこに装着された貝殻のような鎧を俺たちにみせつけた。


「龍にはシェルと呼ばれる物体を身に纏う力がある。奴はこれを用い迷宮そのものを纏っておるというわけだ。労力を支払うことなくより多くの人の魂を喰らうためにな。そしてその結果龍脈が穢れてゆく」


「迷宮のことはわかったよ。色々気になる事もあるけど理解した。じゃあ貴方が人によるものって言ったのは何?どうして貴方が人間を食べさせられているの?グレゴアを封印するためってわけじゃないんだよね?」


「その通りだ。既に亡くなっておるのだろうが、この国の王は全てを理解していた。理解した上で奴は富を選んだ。だが、迷宮を使い続ければこの大地が穢れ、ストラージュは滅びる。そこで龍たるわしを縛り付け、我が力を地に流すことでその緩和を図った。それを誰に吹き込まれたかは知らんがな」


「そんなっ」


「わしは謀られ我がマスターを食した。結果、マスターのマナはこの地に溶け込み我は契約石の力によりこの地に幽閉された。お主たちが壊してくれたあれだ」


「それはまた……えげつねえ話だな」


「この娘が贄とされたのはその契約石の力を落とさんためであろう。マスターの子孫。血の繋がりがなくともマスターのマナをお主から感じる。まあ魔物であり凡庸な存在でないようだがな。人とは残酷なものだ」


 確かに残酷だ。


「ヒトに恨みはねえのか?」


「勿論ある。(はらわた)が煮えくり返そうにな。だが、時がたちあの者達も死んだ。お前たちがまるで理解せずこれを続けていると分かった」


「随分と物分かりがいいんだな」


「ヒトは嫌いではなかった。マスターが人であったからな。ただ、我がここを守る理由はなくなった」


「まっ待ってください。貴方がいなくなったらどうなるの?」


「瘴気が溢れ、魔物は狂暴となりグレゴアも動き出すであろう。そうなればこのストラージュは理性無き魔物に呑み込まれ魔境となる」


「っ水龍様お願いがあります」


「お前はマスターのマナを継ぐ者であり、我を解き放ってくれた恩人。とはいえ余り大きいことは聞いてはやれぬ」


「一方的なものではなく取引を」


「……うむ、なれば聞いてはやろう」


 ありがとうございますっとペコっと頭を下げたミアはテテテっと俺の元へ駆け寄ってきた。


「流星、ここからの話はストラージュに住まない君には聞かせられない話もあって……」


「ん?わかった」


「ごめんね。でも、僕絶対この話上手く纏めてみせるから」


「ああ頑張れよ」


 と返したが俺は眉間に皺を寄せ出口に向かう。竜贄の儀とストラージュの過去が明らかになった。物語がしっかりとした足取りで終幕に向っているのが分かる。なのに何でだろう。俺はこのシーンに説明できない妙な違和感を感じていた。しかしその答えはでず、俺はミアと水龍の話が終わるのを待つため一旦プレイヤーだけが出るという奇妙な指示に従ったのだ。

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