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表・boss水龍エゴ戦

 サポーターと違って通常NPCは職玉を使えないようだ。そのためリキャストタイム(スキル再使用まで掛かる時間)がプレイヤーより若干短く設定されていて、彼らの戦闘はプレイヤーでいうところの〈重ね〉を多用するスタイルに近い。


 まあ、先に進むと普通に使ってくる奴も出てくるかも知れないが、少なくともミアはそうじゃなかった。


「騎術二式『ナイトソウル』」


 騎士スキル、ナイトソウルは使用者近くにいる味方の防御を上げる技。範囲から出ると効果がなくなるが、一度外に出ても戻ればバフがつく。こんな感じで騎術士は味方を鼓舞する技が多いよう。その中でも特にヤバく俺が”壊れ”だと思ったのが──


「騎術五式『転地極走』」


 今、ミアが唱えたこれ。騎術五式『転地極走』。このスキルには前と後ろのプレイヤーつまり前衛と後衛を瞬時に入れ替えてしまう強力な効果がある。


 生憎、水龍のような巨体なモンスターには余り効果を為さないかもだが、小型中型モンスとの闘いを大きく変えてしまう力を持っていると俺は見ている。恐らくPT対人でもこの仕様そのままなら相当に悪さをするだろう。


(いや、流石に対人調整入ってるか。一番相性のいいジョブは)


「流星っ!」


 うん……今、組み合わせとか考えてる場合じゃなかった。ミアと俺との位置が入れ替わり、もう眼前に水龍が放った水弾が迫っている。俺はジョブを堅術士(ガーディナー)に変えていた。


「堅術三式『ジオ・ファラン』」


 機動力を代償に防御を高め、水龍の魔法を受ける。盾の上からでも十分な威力を感じよろけてしまう。厄介なのは奴がフィールド魔法で作り出したこの雨だ。こいつは威力が上がるだけでなく、滑りやすく更には視界も奪う。


 特に水魔法相性が良く小さいとマジで見辛い。あんな巨躯を持っているのに小粒な魔法を連打してくるのも狙い通りということだろう。作り手の(いや)らしさが垣間見えるというものだ。


「GoAAAAAAAaaaaaaaaa」


 止まったところへ噛みつき。小技から大技への繋ぎは魔物とはいえセオリーだ。ジオ・ファランによって鈍足化している俺は動けず直撃を受けるしかないが、チートな叫びがそれを防ぐ。


「騎術五式『転地極走』っ」


 バっと瞬間的に後方・彼女がいた場所へ移動する。まさに瞬間移動。俺の目には自分のいたはずの空間で竜の歯をギリギリで躱す彼女の姿が映る。


 彼女のようには動けない。この技受ける側もかなりの慣れが必要だ。しかしと俺は竜の額を突きささんとするミアの方を見据え思う──


(強い)


 と。リキャストタイムほぼなしであの技を連打できるのはチート級である。あんなことができてしまえば様々なスキルのデメリットを殺せるだろう。


 だからこの連続使用はNPC限定。プレイヤーはできないようになっているはず。


(プレイヤーと通常NPCのスキル仕様に違いがある……か)


 その意味を深く考えたかったがガンっとミアの剣が弾かれ、竜が羽を広げたのを見て俺は構える。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 ボス専用スキル マナバースト 

 体内のマナを爆発させ、後衛にまで届く大風を起こす。近接を吹き飛ばし、後衛すらも態勢を崩す

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 暴風が吹く。フィールド魔法『水の聖域』と合わせて転倒しやすい状態となり凶悪極まりない。俺は取り出した大盾を地面に突き刺し取り立てのスキルを発動させた。


「盾術四式『ジオ・グラビティー』」


 こいつは自らの体重を重くし吹き飛ばしを防いでくれる。ただホントに移動できなくなるため使いどころか重要である。吹き飛んできたミアをキャッチして、俺の後ろに回ってもらう。彼女も俺もびしょ濡れだ。


「大丈夫か?」


「あっありがとう。あれ凄く固い。僕の剣じゃ貫けない」


「あれを砕けば本当に止まるんだよな?」


「うん、それは任せて。これまでの研究がそう言ってるんだ。あれが竜を狂わせてるだって」


 ふと思いつく。ここまで優秀なAIならばワンチャンこういう攻略法ももしかしてできるよう設定してるんじゃないかって。


「なあ、ミア。もしかして……っとかってできたりするか?」


「え?できなくもないけど色々正気?」


「よし!じゃあいっちょやってみるか」


「ああ、ちょっと!」


 答えが返ってきたがぶっちゃけできるか不明。ただ、言ってストーリーなので色々試すのはありだし、何となく流れ的に俺はトドメをミアに決めて欲しかったのだ。


◇◇◇


 ジオ・グラビティーの効果が切れたと同時に左右に分かれて俺たちは大楯から飛び出す。そこへ尻尾の叩きつけが入り、駄目になった盾に黙祷する。笑いたければ笑え、レベルが低すぎて俺は大盾を持ちあげられないのである。


 俺はアイテムボックスからあのダンジョンで得た盾、ルクノ・シールドを装備して駆ける。こいつは表面についたギアを回せばその間、速度がアップする魔道具。とはいえランクはレアなのでその効果は気休め程度といったところ。


(よし)


 龍はミアに狙いを定めた。与えたダメージが多いためヘイトが向かっている。けれど、流石ヴァラパラ。ミアを襲いながらも俺に警戒している気配が見て取れる。じっと戦況を見つめた俺は手に持った職玉を収納した。


 職玉は使わない。このジョブで倒すと決めた。この盾の堅術士(ガーディナー)で最後まで彼女をサポートする。


「頼むぞミア」


 この作戦の要はミア。彼女の負担は大きい。何せ彼女につけた注文はできる限り反撃せず、竜を引き付け、回避を行えというものなのだから。


 彼女がダメージを負うたびにヤキモキする。けれど、ここ。自分が今いるこのポジションをとる事が重要だと俺は堪える。あの技を待つ。早くあの技を……。忌々しげに竜が翼を広げた。


(きた)


「ミアっ!!」


 合図を送ると彼女は全力で駆けよってくる。盾を上に構えれば彼女はその上に足を

乗せた。


「堅術一式っ『シールドバッシュ』」


 彼女のジャンプを補助しぶち上げる。堅術一式はこういう使い方も可能。直後、龍によるマナバーストが発動。それに合わせて俺のクエスト報酬でもある〈水飛竜の翼〉をミアが広げて見せた。下から暴風を受けてミアの体が空高く舞い上がる。


 試したのはNPCへの交渉だ。できるか不明だったが上手くいった。あれは俺に渡す予定のストーリー報酬。持ってるなら使ってくれという要求が通った。まさに高性能なAIを有したこのゲームならではの攻略法だと思う。


「やっぱな」


 そして、自分の方にも風が来ないことに俺は口角を上げた。マナバーストは真後ろにだけ範囲がない。一発目で雨の動きで気づいた。宙を舞うミアに竜が口を開ける。


「させねえって堅術二式『ガウル・カウル』」


 ヘイト向上技によって俺に意識を取られた竜が忌々しい目を向けた。


「今だミア」


「騎術五式『転地極走』」


 そのまま決めて欲しかったが俺とミアの位置が入れ替わる。上空、〈水飛竜の翼〉を慌てて掴み見下ろす形となった俺は笑った。


「上下も可能とか。NPCじゃなきゃバランス調整行きだなこのスキル」


 ミアを見ていた龍がゆっくりと顔を上げる。恐らくガウル・カウルの効果が残っていると思われる。まあこの辺の検証は今度かと俺はパっと手を離しスキルを使用する。


「堅術四式『ジオ・グラビティー』」


 空中で体重を得た俺は勢いよく落下する。龍は迎え撃とうとするがもう遅い。


「俺らの勝ちだ。堅術一式『シールドバッシュ』」


 見事に龍の額を捉え、落ちる勢いも加算した威力をもって俺はコアを砕いた。うん、ミアに決めさせるとか言っておいて思いっきり自分が決めてしまった。中々思い通りにいかないものだ。そして俺は気づいた。あっ落下ダメ忘れてたと。


「やべえ!やったこれ」


 地面に激突して俺の視界が暗転する。そう、俺は一番いいところで死んでしまったのだ。ホントこれがゲームで良かった。そしてオートセーブが入ったと願いたい。

─────────────────────────────────

流星ノート〇重さ威力

威力はインパクト計算。上から下への攻撃は角度、速度だけでなくweight(重さ)が反映されるがweightによる増加量はかなり抑えられ見た目よりは地味な加算であるためあまり多用されないだろう

     〇騎術五式『転地極走』

強力かつ使い勝手のいい技でヴァラエティーパラシスを代表するスキルとなる。縦軸移動が強すぎると判断されβ以後下方修正 横軸移動やリキャストの増加などとにかく修正され続ける技である

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