ドロップとミミック
皆は黙って見守り、その静寂の中でカチカチカチャと繊細な作業が続けられる。何時になく真剣な表情のナズナ。無表情気味の彼女だがちょっと楽しそう。そう俺の目には映った。
「どうじゃ。どうなんじゃ」
「黙って 今集中してるから」
カチっと今までとは違う音が鳴ってナズナは目を見開いたキッカと視線を合わせそれから二っと口角を上げた。
「ふっチョロい」
「「「おおおおおお」」」
俺たちは身を乗り出す。俺たちにとって初めての宝箱である。
「うちらにとっての初宝箱やなー」
「初めの宝箱でそのゲームの運勢が決まるっていうぜ」
「何よそれ迷信でしょ?ねっ早く開けましょうよ」
俺はチラっと新見さんを見る。他の皆も見ている。このメンバーのリーダーは彼女に決まった。俺の名前も上がったけれど、抜けることも多々あるだろうということで辞退したのだ。
太一も同じ理由。多分、この女の子三人は暫く共に組むだろうと思う。
「えーでは誠に僭越ながらや」
「固い固い結たん」
「そーそーこういうのはバーンっと開けちまえって」
ええっとじゃあドーンっと声を上げて新見さんが両手で開けた。そう、この宝箱結構でかいのだ。
「これで薬草一個とかやったりしてな」
「いや、結構入ってるぜ。武器もある」
武器と聞き俺のテンションが上がる。
「おっ太一早く出してくれ。早く」
「ちょっと待って。丁寧に扱いなさいよ。ゲームとはいえ有名な人のデザインかも知れないんだから」
「わしは服がいいのじゃ」
「こういうのは大抵お洒落用じゃない、馬鹿」
何かワチャワチャである。纏めていくの大変そーっと見れば新見さんの口元が引き攣っている。リーダーをやってた身としては痛いほどわかるのでこっそりエール。
結構な収穫だった。盾、短剣、スッタフ、ブーツ。後、道具系と本なんかもあった。職玉が使えれば鑑定したのにとガッカリする俺に新見さんが苦笑する。
「うち、クールタイム終わるから。うちが鑑定するわ」
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ルクノ・シールド ランク rare
古代ルクノクス人が使用していた盾。表面にギアが付いておりそれを回すと効果が発動する魔道具。ギアが回転している間移動速度アップ(超微量)。
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贋作の短剣 ランク common
魔道具の短剣を模倣したもの。製作者の腕が悪かったのか魔力が込められていない普通の短剣。質劣悪で数度打ち合えばぽきりと折れてしまうだろう
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プーケのスタッフ ランク uncommon
魔物プーケが持つ杖。知力の高い彼らは人間の見習い鍛冶師レベルの技術力を誇っている。全魔法威力1,01倍。
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ハイランドブーツ ランク common
履き心地のいいブーツ。けれどちょっと匂う。淵には持ち主の名前が書かれている。何故誰かの持ち物が宝箱に入っているのか。謎である
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コリットの実 ランク common
ネジア地方に群生するコリットの木から採取できる実。料理で使えば辛みを与えこの世界の人々に愛されている。料理用アイテム。数を揃えれば取引としても好まれるだろう
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「「おおおおおおお」」
「煩い男性陣」
柊さんに叱られても動じない。それほど興奮していた。俺と太一はにちゃーっとした笑みで視線で語り合う。
「俺はもう駄目だ流星」
「太一俺ももう駄目だ」
「何よそのテンション。貴方たちちゃんと見た?ランクほぼ最低値じゃない」
分かってない。本当に分かってない。
「いいか?テトたん、ドロップはMMOの醍醐味の一つさ。それが低ランクのアイテムまで設定がしっかり作り込まれてるなんて日にゃ」
「神。この装備とこのアイテムを組み合わせて、そこにスキルも合わせたらーっとかやってるだけでマジで日が暮れる」
そういうの大好き。考えるだけで涎が出てくる。
「そういうものかしら?私としてはユニーク装備がポンっと出てくれた方が嬉しいけど」
「駄目駄目そういうのは後半でいいの」
「そーそー徐々に強くなってくのが最高のゲームの条件なんだって」
勿論、俺個人の考えなので他人に強要はしないけども。テンションが舞い上がってしまった。最近、見て用途が売るだけと分かるゲームが多いのだ。
運営はアプデ毎に実装したユニークでプレイヤーを吊るだけ、そうすると皆同じ装備になるのである。なのでプレイヤーはカラチェンで個性を付けるという涙ぐましい努力を……。
「まあ、うちは流星君達ほどやないけど話はわかるで。結局、うちが面白いって思ったゲームはゲーム内の経済が回っとったから」
「ゲーム内経済?」
まるで聞き慣れない言葉と言わんばかりにコテンと首を倒したナズナにうんうんと新見さんが優しく説明する。
「うちらの現実と同じようにゲーム内でもアイテムに価値があったら経済が回る。価値っちゅうのは欲しいっちゅうこっちゃ。魅力があるっていうことや。その数が多いほどマーケットは大きくなり、人の流れを生む」
その通り。MMO慣れしてないと分かりにくいかも知れないがこれは本当に物凄くでかい。
「ユニークアイテムにだけ価値があったら、当然、ユニークアイテムだけ狩る。そうしたプレイスタイルしか生まれん。でも多くのものに価値があれば」
「色んなやり方ができるのじゃ」
そういうことやなっとキッカの頭を撫でる新見さん。
「MMOっちゅうのは結局は多くのプレイヤー、人間を同じ空間に集めとる。だから、MMOとして優れてれば優れてるほど人社会の縮図となる……まあこれはうちのオトンの決め文句やねんけどな」
人社会の縮図。その言葉がちょっと刺さり俺は考え込む。
「新見さんのお父さんって商人だったかしら」
「せやで、ウンディーネ。まあ廃人の成り損ないやけどな。まあ兎に角、ランク低いアイテムでも基本は持っといた方がよさそうやね」
「だな。どんな化け方するかわからねえし」
「で、ごめんちょっと言うの遅なったんやけど実はさっきのモンスタードロップしてて」
「え?あったっけ?」
「いや、ごめんな。うち取ってしもたんや。リーダーポケットに入る仕様になってたっぽいんよ。多分、設定できると思うからまたお願いや。んでドロップ品なんやけどスキルーカードでな」
「スキルカードまじか」
「俺らめっちゃついてるじゃん」
スキルカードは低確率でドロップするかなりの貴重品。本来、喜ぶべきなのに歯切れの悪い新見さんに疑問が沸く。
「何か問題?」
「えっとまあ見て貰ったら早いと思うわ」
懐から取り出してパチリと置いたそれを皆身を乗り出して確認する。多分、皆同じことを思ったろうが太一が代弁してくれた。
「なんだこれ」
っと。
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ゴブリン・ハウル 隣り合うフロアに存在するゴブリンを呼び寄せる
人間使用不可
一日に一度しか使用できない
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その内容に俺たちは揃って? を浮かべる。スキルカードはプレイヤーにスキルを覚えさせるアイテム。そう思っていたのだがここでプレイヤーが使用できないだろう魔物の技がドロップした。太一の眉間に皺が寄る。
「プレイヤー使用不可だろこんなの。どうやって使うんだこれ?」
「わかった。サポーターに使うんじゃない?」
人じゃないものもいるしと柊がいうが俺は首を振った。
「いや、それだとサポーターのスキルカードって書くと思う。こいつは正真正銘魔物のスキルカードってことなんだろ」
「なら、魔物使いのジョブがあるってことちゃうか。魔物捕まえて仲間にしてスキル覚えさせてーみたいな。この国のお姫様も魔物の言葉が分かるって話やし」
確かに一番ありえるが、このゲームには既にサポーターという優秀なコンパニオンが存在する。中盤ならまだしも序盤からそんな仲間をぞろぞろと引き連れるシステムにするかは疑問だ。それとあともう一つ気になる事がある
「それとさ。この隣り合うフロアってことは迷宮限定ってことだよな?しかも仮にゴブリンを仲間にしてスキルを使ってもらったとしてさ。隣り合うフロアにゴブリンいねえとこないってことだよな?それって流石にピーキー過ぎねえか?」
確かにと皆納得したようだが、黙り込んでしまい。新見さんがお手上げだと声をあげる。
「わからんなー。これも売らずに保留ってことでええかな?一応、PTの取得物にするけど取りあえずはうちが持っとくって感じで」
「俺はおk」
「私も」
全員から同意を貰ってぐうっと新見さんが伸びをした。それを見てナズナは聞く。
「どうする?まだやる?」
「いや……何つうかそんな空気じゃなくなっちゃったな」
「そうね。私も気が抜けちゃった。PTとしての感覚は掴めたし、一旦解散して各々ストーリーを進めるってのはどうかしら。ずっと一緒も息詰まるだろうからボスとかそういう時に集合って感じで」
「「賛成」」
正直、迷宮に籠って装備ホリホリしたい気持ちもあるけれどストーリーも進めたい。
「ほなら帰還符で帰ろか。まあまたすぐグレゴアに戻ってくるかもしれんけど」
「ん、何でだよ?」
「あーっとあんまり言うとネタバレになるかもやからちょっと言うとここに出る魔物がストーリーと関係してくるみたいやねん」
「なんて奴?」
「えーとなーミミック」
新見さんが笑みを深めてそう言った。
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流星ノート〇 レアリティー
Common, Uncommon, Rare, Super rare, Hyper rare, Ultra rare, Epic, Legendary
と左から順にレアリティーが高くなる
魔物のスキルカードでもこれが採用される。(ホロ、シクが存在)
〇 帰還符
迷宮から脱出できる。メイズマークとも呼ばれ、次回そこから再開が可能




