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ゴブリンノーブルと集団戦闘

「うおおお」

「ヤダ怖い怖い結構怖いわよこれ」

「テトたん落ち着け俺がいる。テトたんならどこに捕まっても構わない」

「瀬良君!こっちきたら蹴り落とすから!絶対蹴り落とすわよ」

「落下したらどうなるかうち知りたいし、一回やってみ」

「風気持ちいい」

「のじゃあああ」


 誰が誰やら。開幕わちゃわちゃだが、俺たちF組は揃って空を飛んでいた。ストラージュから離れた位置にあるグレゴアの迷宮に向かうことになったのだが、特殊な移動方があると情報を手にしたので行ってみると何とストーリー報酬である〈水飛竜の翼〉を借りることができたのだ。それを使って高台からグライダーのように滑空しているというわけである。


 割と高いし早いしで怖い。ただ、これは絶対に手に入れたい代物だと目的地に着地した俺はストーリークリアでのゲットを決意する。俺が一番乗りだったが近くに皆降りてきた。そんな俺たちを出迎えるのは巨大な入口の迷宮。

 

「こいつがグレゴアの迷宮か」


 不思議な造形で何だか生きているかのような気配を感じるのだった。


◇◇◇


〈グレゴアの迷宮3層〉


 剣が交わり火花散る。インパクトの瞬間、筋力、武器攻撃力が合算され衝撃となってシステムによって表現される。


 押し負けることは想定内だが、その大きさは想定外だった。弾かれた俺は激しくバランスを崩す。


「ぐっ」


「gigya!!!」


 対面するモンスターは、ゴブリンノーブルというLV8の格上。浅黒い肌を持つその鷲鼻(わしばな)の怪物はボロ布を(まと)い、緑の線が入った双剣を持っていた。そう、二刀流。その振るわなかった側の剣を容赦なくゴブリンノーブルが振り下ろす。


「シフトっ!」


 咆哮と共に俺の後ろから抜けてきたのは瀬良太一。その姿は盾職・堅術士(ガーディナー)。ライフストリーム時代では彼はタンクとして活躍していた。シフトと叫んだが技ではなく位置取りのこと。タンクが前に出るから入れ替われという合図。


「堅術三式『ジオ・ファラン』っ」


 吠える太一。その体が青く輝く。堅術三式『ジオ・ファラン』は防御力を上げ、攻撃と移動力を下げるバフとデバフをその術者に与える防御スキル。それを使ったということはただ盾を構えるだけでは耐えられないと彼が判断したのだろう。


 ガインっと完璧なタイミングでパリィを決めた太一。それでもレベル差によるダメージを負いながらエフェクトが表示させて彼は攻撃を弾き返す。だが──


「なっ」


 このゲームでは魔物もまたスキルを使用する。魔物は技名を叫ばないため輝きと構えで判断しなくてはならない。ログを見てからでは遅い。輝きは右手、いつの間にか剣を逆手にして持っている。


(横凪)


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 双術5式 ベノムロール

 ダメージが入った直後ダウンしてなければ反撃できるカウンタースキル

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


「剣術三式『山茶花』っ」


「うおっ」


 『山茶花』は足払いを行いその後切り上げに移行する技。俺はそれを太一に使用して彼を転ばせる。それによりゴブリンノーブルの横凪が空を切り、俺の振り上げも空を切った。刹那(せつな)、互いに(にら)み合う。


「流星っ!!!」


 ナズナの呼びかけに即時反応して俺は職玉を潰し、弓術士に転職。スキル発動させるために弓を引き絞る。


「弓術二式『バックショット』」


「弓術三式『ホークポイント』」


 ナズナも弓術士。俺とナズナが唱えたスキルは別々であったものの見事に声が被さった。


 『バックショット』は矢を放ち後方へ飛ぶ攻守一体の技。これを利用して攻撃と同時に俺はバックステップを踏み、射線を空けた。ナズナは俺の背後にぴったりと位置どりしていたため魔物からはいきなり現れたように見えたろう。


「GAaaaa」


 俺が放った一本目は弾かれるが、そこへ本命──二本目となるナズナの針を通すかのような攻撃が放たれる。『ホークポイント』は命中率の高い攻撃技。レーザーポイントによって正確に狙いを定めることができる。彼女が選んだのは額。


 ズダッとぶっ刺さり魔物の頭が後方に弾ける。けれどこのゲームの敵AIは並々ならぬしぶとさを持つ。ナズナが最もダメージを与えてしまったためヘイトが急上昇。


 倒れ込むゴブリンノーブルはスキルを使用して双剣の片割れを彼女に向って放り投げた。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 魔物スキル ぶん投げ 

 手に持ったものをぶん投げる。シンプルだが持ったものによっては凶悪

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


「蒼龍さんっ!!!」


 魔法準備に入っていた柊の悲鳴。ナズナも目を見開いて固まっている。これは避けれない。一乙(いちおつ)か。誰もがそう思った瞬間、キッカの咆哮(ほうこう)(とどろ)いた。


「武術一式『破天掌』じゃ」


「え?」


 キッカが掌底を放った相手はナズナ。ゴっと攻撃を受けたナズナが吹き飛んだ。ビっと親指を立てるキッカに口元が引き()る。


(いや、確かに(かわ)しはしたけどさ)


 俺のやり方をマネたのだろうが、あれはやり過ぎである。注意しないといけないだろう。でも今はと俺は杖を構えた柊さんを見た。


「柊さん」


「分かってる。紫電纏いし精霊よ 我が願いを届け 死魂の鐘を打ち鳴らせ 雷鳴低位 ライトニングベル」


 魔法は詠唱を正しく唱えなければ発動しない。その速さと正確さはこのPT随一の柊テトラ。RIIIIINという甲高いベルの音を鳴らす紫電が直撃し、パアーンっと耳を(つんざ)くような破裂音を響かせた。


 プスプスと焦げ臭い匂いが漂い。黒焦げとなったゴブリンノーブルはガパっと口を開けた。魔物の身が発光し、そこへ新見さんが踏み込んだ。


「悪いけど呼ばせへんで 剣術一式『マギア一閃』や」


 シャンっと払った彼女の剣がゴブリンの首を捉え、規制の光と共に断ち切った。音もなく彼女は納刀する。中学まで剣道をやっていたせいもあるのか動きがスキル以上に様になっている。


「ゴブリンハウル。仲間呼び持ちの話、聞いといて良かったわ」


「流石は結たん情報通」


「周辺フロアのゴブリンを呼び寄せるだっけか?呼ばれてたら全滅だったな」


「はーこれが雑魚戦って嘘でしょ。信じらんない」


 勝利したことで緊張が解れ、全員口が軽くなる。流石、ラヴェルの生徒である。Fとはいえこの実力。全国から集められたゲーマーなだけある。とはいえ、既に二回全滅してたりする。迷宮も優しくなかった。


「キッカ謝って」


「なんでじゃ!助かったじゃろう!」


「助かった。でもあれはない」


「そうだぞキッカ。あれは駄目。やり過ぎだ」


「じゃが流星もっ」


「いいか、俺はちゃんと配慮してる」


「いや、流星。お前も大概だからな」


「ほんまや、味方にスキル撃って回避させるとかようそんなん思いつくな」


「え?常識じゃね?」


「「「絶対ない」」」


 ハモって否定されてしまった。俺はしゅんとする。でもできるのだから想定してるはずなのだ。


「まあでもそれくらいせんと格上と闘うのは厳しいってことやね」


「ねえ、このゲームちょっと難し過ぎない?」


 確かにこのバランスでリリースされればライト勢は即消滅するだろう。


「レベル上げれば楽になるんじゃねえかな。多分、この必要経験値設定って俺ら用の調整だろ?なあ流星」


「まーそうだろうな。学園が俺たちの実力を測るために辛めの設定にしてるとしか思えねえ。レベル補整が高いんだろ。まあ、俺としては難しいのが好みだけど」


「私も難しい方が好き」


「わしは流星とおれるならどうでも良いのじゃ」


「おーおー流星君は好かれとるねー」


 ニシシと口に手を当てた新見さんを一瞥(いちべつ)する。


揶揄(からか)うなよ。でも、悪いな。俺だけキッカ出させて貰って」


「それは全然言いっこなしや。流星君サポーター収納持ってないんやし」


「そうね。経験値はちゃんと入るから安心して。それにこの子を閉じ込めるってのはちょっと抵抗あるもの」


「私も……そう思う」


 彼らの言葉に甘えよう。いつか彼女たちのサポーターも見せて貰いたいものだ。


「おーい、結たん達こっち来てみろって」


 いつの間にか太一がいない。


「アイツ勝手に動きやがって今エンカしたらどうすんだよ」


「宝箱あった こっちこっち」


 宝箱という言葉に俺たちは見合って全力で駆けだす。モンスターと会ったらどうするのかとか秒で頭から消える。やっぱ学生である俺たちはものに吊られやすい。


 迷宮でアイテムを取得する方法は二つ。モンスタードロップと宝箱である。ほぼ鍵が掛かっていてキーピックと呼ばれるアイテムを使用して開ける。


 罠とかもあるので本来は魔法などを使用して安全かどうかを確認せねばならないが今の俺たちにそんなものはなかった。そして諦めるという選択肢もなかった。


「どういけそう?瀬良君」


「余裕余裕。いいかテトたん。この宝箱は木箱。残念ながら低級だな。ただ難易度は簡単だ。そしてこういうのは端からゆっくりやっていくのが定石」


 バキっ


「………」


「………」


「新しいの貸して瀬良君」


「はい」


 しょぼんと三角座りした太一。あれはカッコ悪い。


「私はこれでも職人を目指しているの。繊細な作業は得」


 パキッ


 柊さんは頭を下げながら最後のキーピックを俺と新見さんに差し出した。


「うちーこういうの苦手で」


「俺も無理だ。高いところからドーンってやっちまうタチだ」


「情けないのー何人も揃って。ここで真打ち登場というわけじゃな」


 髪をファサーっとやるキッカの肩を俺と新見さんが(つか)んだ。


「キッカちゃんはまた今度やね」


「キッカは今度な。後、一本しかねえから」


「なんでじゃあああああ」


 皆の視線がナズナに集まり彼女はコクリと頷いた。


「私がやる」


────────────────────────────────────

流星ノート〇 インパクト計算

 角度、体勢、ステ値、威力によって反発係数(はねかえり係数)が算出され、弾かれ方が変化する。現代MMOでは技の起動は軌道型が採用されることが多いため、崩すことは有利に働く


     〇 キーピック

 ゲームでよく登場する解錠アイテム。レアリティーが存在し、下位のピックでは上位の宝箱に挑戦することすら許されない。施錠されていないものは稀であり難度がそこそこのミニゲーム

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