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ダンジョンとビンタ痕

 ストラージュにはダンジョンが存在する。これはこの国特有のものではなく、大抵の国にはダンジョンがあるのだそうだ。というより、ダンジョンがあるところに都市を建てるのがこのヴァラティエの世界では常識らしい。


 理由はダンジョンがその周囲一帯に莫大な富を(もたら)すから。魔物はこの世界に住むものにとって忌むべきものであるが、ドロップ品を落とし、恩恵を与える存在でもある。また魔道具が出土することもあり宝の山。


 そしてどういう理由なのか迷宮の魔物は決して外に出てくることがない。まあこの設定はゲーマーからするとフラグにしか聞こえないけれど、序盤からクライマックスみたいな事は起きないだろう。名前はグレゴア迷宮。


「で、どうしたんだよそれ」


 俺がいるのはカフェ。美咲からいい場所だと紹介して貰った店である。太一達と待ち合わせしていたし、妥協案として一緒にした。せっかく希望通り来たのにキッカは何故かむくれているが……。


「流星はわかっておらんのじゃ。わしはカフェに来たかったんじゃないのじゃ。二人きりで来たかったのじゃ」


「そんなの私が許すわけない」


 キッカとナズナが何か言っている。そして珍しく仏頂面となった太一に俺はもう一度聞いた。


「で、どうしたんだよそれ」


「二回も聞くなよ。無視してる時点で話したくないって気づいてくれよリーダー」


「いやでもさ。これからダンジョン行くわけじゃん。隣で戦うわけじゃん。見て見ぬふり無理だろ」


 太一の顔に薄いが赤い紅葉があるのだ。まるで女の子にひっぱたかれたかのような。もう気になって仕方がない。


「流星君、ここは一つ鑑定掛けてみ」


「結たんっ!!!」


 新見さんのアドバイスに従って秒で鑑定士に転職した俺はスキルを行使する。


「解術一式『キャスト・コード』」


『キャスト・コード』はアイテムは状態効果を暴く力があるスキル。


「ああっ」


 右手に光文字で作られた輪が宿り、それが回転し解析を完了させた。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 エア・ストラージュのビンタ痕 呪い

 エア・ストラージュの琴線に触れた者が受ける報い。継続時間一週間。呪いを解けば消えるが反省することをお勧めする 

異性に軽度のセクハラ行為を行うと罰として刻まれる紅葉

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 ぶはっと噴出してしまえば太一がギロっと俺を(にら)む。


「だから嫌だったんだよぉー。流星に知られるの。お前戦ってる最中に噴き出したらマジで怒るからな」


「いや、悪い悪い。こんなのあるんだなって。でもお前何したんだよ」


「別に何もしてないさ。ただ、クエスト受ける時に金貨押しのけて、報酬は金貨じゃなくて君がいいって言ったらこうなったんだよ」


「ばーか。アニメの見過ぎなのよ貴方は」


 柊さんの口撃に太一は撃沈し頭を抱えた。


「あああ俺エアたんに嫌われちゃったかも」


「どうかしらね。まああの子が気になるってのは私も同意するけどね」


「ストーリーも普通に気になる感じやなー。VRMMOのストーリーなんてあってないようなもんが常識やから、うちはオマケ程度やと思ってたけど」


 新見さんの説明に俺もうんうんと頷く。


「今まではクエストでちょっと描かれるくらいだったしな。明らかに昔のMMOくらい気合入ってそうだよなこれ」


「また凄いゲームが出てきたもんやな」


「凄すぎてこのβ(ベーター)で息切れしないかが心配だけどな」


「確かにせやなー。恐ろしいほどお金掛かってそうやし、その割に宣伝してないって皆言うてるしー」


 俺が思い至っていた疑問はやっぱり他のプレイヤーも感じていたようだ。これに関して掲示板に投げてみるのも面白いかもしれない。


「話変わるけど桂木君よくこんなお洒落な店知ってたわね。意外だわ」


「それどういう意味だよ柊」


「ごめんうちも思ったわ」


「私も」


「のじゃー」


 女性陣からの評価が酷い。せめてキッカは俺についてくれよ。


「失礼だなって言いたいところだけど、美咲から聞いたんだよ。いいとこあるって」


「美咲?」


 ナズナがコテンと首を倒して聞き、何でか言いにくいなと俺は頬を掻いた。


「あっと……ほら紹介されてただろ?始業式の時に、次席で有栖川の隣にいた青い髪の」


「お前流星!あの子とも知り合いなのかよっ!聞いてないぞ」


 そりゃあまあ言ってないし。


「流星それどういう知り合い?」


 ナズナさん何か怖い。


「ただの幼馴染だよ。ホント小さい時以来会ってなかった。後、理聖ってのも俺の幼馴染だ」


 フラっとしながら太一はガっと俺の肩を掴んだ。


「幼馴染だとっお前はラノベの主人公かよっ」


「ごめん太一。俺ラノベわかんねえ」


 糞がっと太一はふて寝した。長い付き合いだがこのノリだけは付いていけない。


「Sクラスに知り合いがおるのは羨ましい限りや。でもええんか?うちらとダンジョン行くって話。その子らと行かんでええんか?」


「んーマジで会って無かったしな。それに同じクラスでやった方がいいじゃねえかなって。勿論、お前らが嫌じゃなかったらだけど」


「嫌な事あるかいな。大歓迎やわ」


「そうね。私たちも前衛不足感があったし」


「まーなー悔しいけど流星がいたらなって場面は結構作っちまったのは事実だしな」


 瀬良太一と一緒にやるのはドラクロ以来。楽しみである。


「よろしく太一」


「よろしくだリーダー」


「流星」


「ん?」


「もうソロは止めるってこと?」


ナズナがコテンと小首を傾げた。


「いや、やれたらやるけど当分は組むって決めたんだわ」


「一応、その判断を下した理由聞いてええかな?」


「ボスはいいんだけど、雑魚戦がな」


「そーいえば流星とキッカちゃんは町に来るのに時間かかってたか」


「ただただ雑魚との闘いが時間掛かってさ。戦闘の度に職玉のクールタイム待ちを余儀なくされたんだわ」


「あー」


「あれは地獄じゃったのじゃ」


「スキルとジョブが増えてくると話変わってくると思うんだけどな」


「現状、序盤で取ったジョブしか増えてないものね。掲示板にこの国で騎術士が取れるって話が上がってたらしいけど」


「騎士っ!?」


「ええ、Sクラスで取ってる人がいたらしいわ。どうやって成れるかまではまだ流れてないけど」


「騎術士か、防御タイプのスキル覚えんのかな」


「ほんと、男の子ってそういうの考えるの好きやなー。うちは攻略サイトのお勧めで済ませてしまうわ」


「ロマンねえぞ新見」


「そうだぞ結たん」


 太一と揃って言うが新見さんはただ肩を(すく)めた。


「はいはい、そうやSの話で思い出したけどな。有栖川さんら苦戦しとるらしいわ」


「へー挑んでるのストーリーボスだっけ?んな強えの?」


 フィールドボスを楽に突破した奴らが手をこまねいているなら相当である。


「いや、ストーリーボスは倒したらしいんやけどな。なんかまだ戦ってて方針めぐって揉めてるとかどうとか」


 ボスを倒したのに戦ってもめてる?


「何やってんだあいつら」


「流星君、Sに知り合いいるらしいから今度機会あったらそれとなく聞いといてな」


「ああ」


(ん?)


 返事をしたものの。首を捻る。新見さんの情報集能力が凄い。当たり前のようにスパイにされていた。もしスカウト(密偵)みたいなジョブがこのゲームにあれば彼女はそれに向いてるかもしれない。


─────────────────────────────────────

流星ノート〇 ダンジョン

 恵みを得るためにダンジョン近隣に町を建設する設定は多くのMMOで採用されているテンプレートである。再利用しやすいダンジョンは多様される傾向

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