表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃人遊戯譚『ヴァラエティーパラシス』~人とAI率いる俺が廃人へと至る道  作者: 流体紀行
βテスト『学園ラヴェルとヴァラエティーパラシス』
26/110

ラウンドエイプキング戦②

 (流星、何だってそんな頑張る?二大MMO以外で頑張ったって全く無駄だ。フェスやクラッツじゃないものの大半はサ終する運命。そしてサ終したらこれまでの全部が無駄になるんだぜ。だからせめて効率考えろよ。いつ終わってもいいよう軸足を抜けるようにさ)


 あれからもう8時間。未だ戦っているため正直休憩したくて溜まらない。疲労も限界で現実での疲れがゲーム表層に現れ始めていた。学園が定めている連続プレイ時間は10時間。なのでほんとギリギリである。


 エイプキングもボロボロだ。肩に矢が刺さり、全身は傷だらけ。それでも瞳から光は失われていない。敵ながら天晴。まあゲームだが高性能であるキッカを見ていると相手も褒めたくなってしまう。


 エイプキングの体力はレッドラインに入っている。だからこれが最後の攻防になるだろうと剣術士の俺は柄を深く握り直した。


「剣術二式『一刀閃火』っ」


 咆哮。足元のギアを弾けさせて俺は一直線に突き進む。あれをやる。一度しか見ていないが有栖川の動きを思い出す。流れるようにスキルとスキルを繋ぎ合わせてみせたあの〈重ね〉の動きを。


 直線的な俺の攻撃を見てエイプキングがとった選択肢はカウンター。引き絞るようなモーションに入っている。


(まだ……まだだ……まだ……っいけ)


 一刀閃火のスキルによって鞘から剣が抜き放たれる。綺麗な空振り。迫る拳を瞳に収めつつ三式の軌道にピタリと重ね合わせる。


「剣術三式『山茶花(サザンカ)』っ!」


 発動。スキルの力によって慣性が殺されピタリと止まった俺の体が山茶花の軌道を描き始める。足払いは当然不発だが懐に潜り込んだ。ここまで有栖川の動きとピタリと一致。が、ここで職玉を潰す。なるのは弓術士。弦を限界まで引き絞る。


「弓術一式『バーストショット』」


 射っ!!と打ち出した矢はエイプキングの目に下からぶち刺さった。規制が入り、血は出ていないものの赤い粒子で表現され中々にエグイ。悲鳴を漏らし倒れ込もうとするエイプキング。その片目が血走っていて、俺は慌てて第二矢を放った。


「弓術二式『バックショット』」


 弓術二式『バックショット』は打ちながら飛び下がる攻守一体型の弓術士スキルだ。ヴァラパラでは死が迫るとスロー演出が入るようだ。プレイヤーの思考を速めて見せる今流行りの見せ方。捉えるもの全てがゆっくりになった。


 やはりエイプキングは尻尾からのスキルを放ってきた。信じられない速度、スローモーションの中でも普通に見える。身を(よじ)ってしまいたくなるが体は動かなかった。


(紙一重だったな)


 エイプキングの攻撃は俺の弓を破壊するに留まった。運が味方した。この戦い少しでもズレていればどっちに転んでいたか分からなかった。俺は大縄跳びと例えたがまさに綱渡りだった。


(お前はすげえボスだった。このゲームで最初にたちはだかったお前の事は一生忘れねえ)


 演出が終わりドシャリと俺の体が地面を転がった。武器を失った。体力もない。物資も尽きた。限界だ。ボスは勝ち誇った笑みを向ける。


「もしお前がプレイヤーだったならもう一人から絶対に目を離しちゃいけねえ。耳を澄ましその行動を探り続けなきゃいけない。確かにお前の方が上だった。でも悪いな。このゲームの俺には……相棒がいる」


「剣術一式」


 後方からキッカの声が鳴り響く、俺が首を軽く傾け空けてやるとその肩にキッカの足が飛び乗り、剣士ルックの彼女は蹴って高くジャンプする。


「決めちまえキッカ」


 この戦闘において俺をもっとも驚かせたのはAIキッカの成長速度である。闘いの中で学んでくれればいいとの思いで挑戦したが正直ここまでとは思わなかった。彼女は俺をよく見ている。その動きはまさに俺のトレースだった。


「『マギア一閃』じゃ」


 剣術一式マギア一閃。ギアを砕きながら、解き放たれた攻撃はボスの首に見事に刺し入る。そしてその小さな体がスキルの力によって巨猿を斬っ!!と切り抜いた。HPがゼロとなりエイプキングは光の粒子となって消えてゆく。その輝きの中でキッカがゆっくりと着地を決める。何というか様になっていた。


 しかし、潰れた右目を利用した死角外からの攻撃。偶然かそれともキッカ自身で考え狙ったか。だとしたら──


(もし……もしも、このゲームが覇権をとるようなことになったら新しい時代がくるかもしれねえ。AIと人で成り上がる新時代が。今こんなこと言ったらほとんどの奴が笑うだろうけど)


「勝ったのじゃあああああ」


 キッカが拳を掲げゴロリと転がった。


「ああ勝ったな」


 俺も仰向けになって空を仰ぐ。綺麗な大空だ。夜通し戦ってしまった。これだけの満足感を味わえたのはいつぶりだろうか。勝利のファンファーレを聞きながら俺たちは目を閉じる。


「ヴァラパラ、神ゲーだわホント」


 いや、多分まだ本編に入ってすらなくてシステム部分しか触れてないんだけど。これでゲームが本格始動したら一体どうなるのか。内容によっては本当にヤバいことになるかもだ。兎にも角にも俺とキッカは二人でフィールドボス突破に成功したのだった。


 ◇◇◇


「のっじゃじゃーのっじゃじゃーのっじゃのっじゃじゃー」


「落ち着けよキッカ。ここはまだフィールド、敵がくるかもだからな」


「よく言うのう。お主だってニヨニヨしとうくせに。大体、街に戻らんというたのはお主じゃろうに」


「言ったろ?もうすぐログイン制限掛かるって。町に戻ったらあいつ等に絡まれそうだしな」


 まだボスの場から俺たちは移動はしていない。彼女と俺のテンションが高いのは大量のドロップ品を検分しているからだ。これもまたソロ討伐の旨味。報酬の一人占めである。まあキッカもいるので二人占めになるのかもしれないが。


 有栖川、報酬ねえとか言ってたのにバッチリあるじゃないか。いや、彼女からするとこれは”ない”に等しいものなのかも知れないが。楽しまないと損だ。


 ごそごそと宝箱に顔をつっこんでいたキッカはお目当てのものを見つけたようで大声を上げた。


「のおほおおお宝石じゃあああ。綺麗じゃああ。わしに似合いそうじゃああ」


 レッドトパーズ :コレクション 希少性3 宝石 高く売れる


「あっそれ売りな」


「なんでじゃあああ!!!そこは……キッカ今回はよくやってくれた。お前がいないと勝てなかった。俺たちは二人で一つ。証としてこいつを受け取ってくれ。俺からの愛の結晶だ……じゃろおおお」


「妄想はそこまでにしといて周り見てみろよ」


 周囲には俺たちが闘いで壊した装備が散乱している。


「武器のほとんどがアイツに持ってかれた。赤字だよ赤字。楽しいけどやっぱ割に合わねえ。金策もしねえとだから今回は諦めてくれよ」


 ぐぬぬぬと唸るキッカ。なんだか悪いことしてる気分になってくる。


「キッカは頑張ったのじゃ……」


「まあお前は頑張ったよ。凄かった。今度、効果のある装飾品買ってやるからそれで我慢してくれ」


「やったのじゃああ。勝ち取ったのじゃあああ」


「全く超高性能なAIってのも考えものだよな」


 キャッキャと喜ぶキッカにちょっと真剣な思いで俺は聞く。


「なあキッカ」


「ん?なんじゃ」


「今回、結構な無茶やったが楽しめたか?」


 この質問をする度に俺は少しだけ緊張する。頭の中で過去の思い出が蘇るのだ。


 ”アンタ頭いかれてるんじゃないのっ!何でこんな無駄なことに拘るのよ”


 ”リーダーあんたが凄えってのは理解した。でもな、これに一体何の意味がある?俺らはついていけねえ。時間のあるお前とは違うんだ。抜けさせてもらう”


 キョトンとしたキッカはうむ、最高にじゃったとニヘラとした笑みをみせた。


「そっか」


「お主はどうじゃったのじゃ?わしとの初戦闘」


「んーどうだろうな」


「あああ人に言わせて自分が言わないのはズルいのじゃー」


 そんな風にキャッキャとしているとポンっと効果音が鳴って機械的なアナウンスが流れた。俺たちは口を(つぐ)み耳を澄ます。


「ラヴェル学園の生徒の皆様初めまして私は貴方がたのアナウンス係を担当する事になりましたテムシスと申す者です。以後、お見知りおきを。重要。貴方がたの中で称号を獲得した者が現れました。おめでとうございます。称号番号25番『フィールドボス単独撃破』」


 俺とキッカは顔を見合わせ、テムシスが続ける。


「説明。称号はそれ自体に能力値を上昇させるといった効果があるわけではありません。箔付けのようなものです。ですが、我が創造主様はこうおっしゃいました。一部の称号の中にはそれを持つことで進むイベントを用意したと。また貴方がたの校長マグドールがこう言っています。成績の参考にするだろうと。ですから見つけられた際には積極的に狙う事を私は担当としてお勧めします。そして、もうお気づきでしょうが本ゲームの始まりはそのフィールドボスの先からとなります。どうぞ、ご自身の足で踏みだし、ヴァラエティーパラシスの世界をお楽しみ下さい」


 ぶつんと切れれば俺にメールが届いた。それを読み始めればキッカの不思議そうな声が飛ぶ。


「何か届いたのじゃ?」


「ん?ああ、運営から。情報を公開するかどうかを聞きたいみたいだな」


「公開?そんな事やって大丈夫なのじゃ?というかやる意味あるのかの?」


「まあ、俺らの学校だけだし、名前と一部の情報だけっぽいしな。公開すると強い奴が寄ってくる」


(そうすりゃ上級生とも戦えるかもな)


 ということで承認を押そうとした俺だったがあるワードに気付きピタリと止まった。公開される中に何故かある称号、ロリコーンの存在に。これは外だけの話ではなかったのか?何でゲーム内に?一体どういう判定なのか。気になる事はあるが俺はメニューをそっ閉じしてすくっと立ち上がった。そして歩み出そうとすればキッカに裾をぎゅっと掴まれてしまう。


「ふむ、流星。どこに行くというのじゃ」


「キッカちょっちトイレ」


「ここはゲームの中じゃそんな事せんでええじゃろ」


「ほら、そろそろ落ちないといけないしな。強制ログアウトの時間だ」


 俺が強引に進めば彼女は引きずられながらも付いてきた。


「まだ時間はあるはずじゃが?短い付き合いとはいえ、分かるのじゃ。主は今、良からぬ事を考えておるのじゃ」


 鋭いと俺は引きつった。


「頼む。キッカ。キャラデリさせてくれ。俺の青春が終了する称号が入ってる。俺、転生するんだ」


「駄目じゃ駄目じゃそんな事したらわしと出会った事が無くなってしまうのじゃ。それでも良いと申すのじゃ?」


「モチの論」


「なんじゃとおおおおお。主人は人でなしなのじゃああ」


 俺が駆ければキッカも付いてくる。どうかこのゲームのサービスが末永く続くようにと俺は祈る。既に彼女と別れるのは辛いから。けれど、もしこのゲームが覇権を取れず別ゲーへ行く選択を迫られれば俺は……。


 俺はゲーマーで、そしてハイヒューマンを目指している。それが俺の夢。でもそこにもう一つ加えよう。願わくばキッカ=マークⅡと共に。そして──俺たちは次の街ストラージュにたどり着き、ストーリーが開始される。


 そう、ヴァラエティーパラシスが遂に幕を開けVRMMOではあり得ないとされる濃密な物語を(もたら)し、”全プレイヤー”達は出会うのだ。魔物の言葉を理解できるお転婆なお姫様と。


     βtest『 学園ラヴェルとヴァラエティーパラシス』 FIN

             ≪update≫

      ver1.0 『水龍伝説とおてんば影姫』 


あとがき

1,0からヴァラエティーパラシスのメインシナリオに入ります。この小説はゲーム内ストーリがメインです。また1.0が終わり次第薄く繋がりのある全く別のローファンもアップ予定なので良かったらブクマ、評価の方どうかよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白くて熱くなった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ