学園と再会
金は天下の回りものならば、天下は人を回すもの。やはり金目になる所に人は群がり、様々な商法が確立されてゆく。廃人養成学校もその一環。だから、ラヴェル以外にもVRMMOに特化した幾つもの学校が全国に設立されている。
ただ国から認可を受けているのはラヴェルと西にあるもう一校だけだったりするのだが。まあその説明はいつかということで省略だ。
「おおお」
一人だけ体操ジャージ姿でちょっと視線が気になるが、ダイブ型ゲームを楽しむ者ならこの程度の注目には慣れっこだ。ある意味、VRMMOで上を目指すことはこれ以上に人の眼につくことなのだから。しかし──
「これはヤベえ……」
学校に辿り着いた俺はおのぼりさんのようにキョロキョロと周囲を見渡していた。それは最新科学技術の集合体。資料や動画では何度も確認していたけれど、ホログラム技術をふんだんに使った現実とは思えないファンタジックな光景に息を吞む。
ラヴェルがここまで華麗なのは、各VR学校による生徒確保の過激化と単純に儲けているという背景がある。まあ兎にも角にも──その見た目は財が築かれた場所としか言いようが無かった。
「どいてどいてー遅刻遅刻~」
急な甲高い少女の声に驚いて身を引けば俺の横を三体の妖精が飛来し通過した。あれはホログラムなのだろうが一体どうやっているというのか。外なのにまるでVRMMOの中にいるかのようである。
我ながら凄い場所に来てしまったと俺はちょっと呆けてしまいながらも手渡されていた学校のしおり通りに移動する。
廃人養成学校ラヴェル。この学園はまるで遊園地のように7つのテーマに分けられていて、場所場所でその雰囲気がガラリと変わる。ちなみに、校門から一番手前側がファンタジー(幻想)区画。そのため今、俺の周りはそういったデザイン調のもので溢れていた。
「えっと……」
俺はギルドの掲示板っぽく仕立て上げられた電光板の前に立って自分の受験番号がどこにあるかを探していた。何だかしおりといい変なところがアナログな気がしたが、きっと雰囲気を味合わせるためなのだろう。そういう校風だとは聞いていた。
「おっあった!。でも、Fかー」
勿論、始業式なので合格しているかを見ているわけじゃない。これはクラス分け。既に受けた入学試験の点数で新入生達は振り分けられる仕組み。
クラスはネット小説のようにF~Sのランクで分けられ、一クラス30人。一年だけで計210名これでどれだけここがマンモス校であるかおわかりいただけただろう。
「うしっ」
バチンっと俺は気合を入れるように頬を叩き、高ランク帯のクラスを捉える。筆記がダメダメだったので俺は最底辺からのスタート。だが、こういうのは下剋上の方が滾ると指の隙間から獰猛な笑みを浮かべた。
やはりSは特別なのか。そこだけ番号ではなく名前で書かれていた。そして俺は知り合いの名前を見つけてゆっくりと手を外し、目を見開いた。
「理……聖?」
「理聖っちー。待ってよー」
自分が呟いた名前がちょうど後方で鳴り、俺はばっと振り返る。そこに三人の生徒がいた。髪を黄色に染めた女生徒が几帳面そうな眼鏡の男子生徒の腕にすがりついている。その横で黒髪姫カットの女性が口を開く。
「司法さん。はしたないですよ」
「だってだって舞っちー。どうしても欲しい装備がフェスにあってさー」
ブーと可愛らしく口を尖らせる少女が司法という名前で、姫カットの方が舞のようだ。が、そんなことはどうだっていい。注目すべきは男子生徒の方。気怠そうに息を吐いた眼鏡の彼は間違いなく俺の知る人間だった。
「司法、いくら言っても金は貸さんぞ」
「えーいけずー」
「理聖?……理聖だよな?」
思わず俺が会話に割って入れば、三人の眼が俺に向いた。
「えっと知り合い?理聖っち」
「いや」
「俺俺、流星だって。幼馴染の。覚えてねえか?昔、ほら一緒に遊んだ」
理聖は幼い頃よりもずっとカッコよくなっていて背もすらりと高くなっていた。でも面影はある。懐かしいと俺が微笑めば、向こうも気付いたようで眼鏡レンズの奥にある眼が見開かれた。
「お前、まさかあの流星なのか」
「久しぶりだな。どうしてたんだ?美咲は?お前ら同じ中学だったよな?」
「待て」
俺は近寄ろうとしたが、理聖に手で止められてしまった。
「その前に聞く。まず、お前ランクは?」
「ランク?Fだけど」
「っ!?そうか。じゃあ、俺にもう二度と話しかけるな」
「うん。でさ、こうして再会したことだしって……は?」
冗談かと思ったが、向けられた厳しい視線が冗談ではないと告げていた。
「わかったな。じゃあな」
「いやいや!?話しかけるな?何だよそれ?」
有無もなく立ち去ろうとする理聖。俺は腕を取ろうとしたが、その手をバシりと振り払われてしまった。
「Fランクとの会話など不毛。俺は忙しい。そんな非効率なことができるほど俺は暇じゃない」
そう理聖は俺の横をすっと通り過ぎる。
「いや、待っ」
俺が後を追おうとすると肩に手を置かれて止められる。それは先程、理聖と会話をしていた司法と呼ばれた女の子のものだった。彼女の人懐こそうな顔が俺の前で子首を傾げた。
「君、理聖っちの幼馴染なんすね。でもFなら大人しくしてた方がいいっすよ。クラスのランクは学校カーストにそのまま適用されるっらしいっすから」
「司法さん、行きましょう。それに理聖さんの言う通り余りFの方とは話さない方がよいかと」
「そだね。変な噂立てられてもあれだし。じゃあっす。底辺君」
底辺と呼ばれ口を引き攣らせる俺を放置して彼女たちは颯爽と理聖の元へ駆けていった。
「意味わかんねえ……意味わかんねえよ」
何だかとても残念な気持ちになってしまった。どうやら俺の幼馴染は数年で随分と変わってしまったらしい。もう一人いるが彼女も変わってしまったのだろうか。
「非効率ってお前、俺らダチだったじゃねえか」
制服の件も相まってどうやら俺の高校デビューはどんよりとしたものとなりそうだ。快晴の空を仰ぎ見た俺は溜息を吐くのだった。
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流星ノート〇 認可校
VR分野において日本は制度により世界から大きく遅れをとっている。日本には現在二校のみ存在 東のラヴェル 西のステッカー
〇 第7区画
S幻想王族区画 A貴族地区 B騎士区画 C商業区画 D兵士区画 E平民区画 F懐古区画




