ジョブ解放と隠しパラメーター
「んで、この辺りの魔物が一匹につき経験値100前後」
「ぬー?一体、何体狩ればあがるのじゃ?」
指を折って数えるキッカには俺が答えた。
「キッカ、100×100で一万って数字は考えずにぱっと出てくるようにしとけ。MMOだと結構使う」
「まあやからそこにゼロ一個足して、100×1000。1000体狩ればうちらのレベルは上がるっちゅうわけやな」
ゲームをやってる人なら余裕でいけるだろ?っと思う人もいるかも知れない。確かにやろうとすればやれる数字だ。けれど、VRMMOでは魔物を探し回るだけでも結構な重労働となる。
ある特殊な条件を除き、数を倒してレベリングなんて手法は今時、余り取られない。それも道具も武器もスキルも揃ってない序盤でなんて尚更である。
「なあ唯たん。その得られる経験値数ってどこで見たんだ?見当たらなかった気すっけど」
「鑑術士っていうジョブになれば見れるらしいで」
「鑑術士って要は鑑定使いだよな。そんなのあったか?」
太一に聞き返された新見さんはドヤ顔で胸を張った。俺の後方から二つの殺意が溢れた。
「この町のクエストや。SクラスだかAクラスの子が取ったらしいで。やから他にもあるんちゃうかって噂や」
流石はといったところだろうか。もう自己強化に全力でぶっぱしている奴らがいる。まあ、フィールドボスのせいで出戻ることがなければどっちもどっちといった感じだろうが。
恐らく、AクラスSクラスのグループは其々に役割を与えて動いているに違いない。言うなれば、クランのようなものが既に出来上がっている。うかうかしていればあっという間に差をつけられるだろう。
「っつか新見さん情報通っていうかすげえな」
まだ時間経ってないのにと俺が言えばニコリとし彼女はピースでサインした。
「うち、コミュ力極ぶりやから」
納得したと頷く俺を見た新見さんは、でやっと立てていた人差し指と中指のピースをそのまま使い、そいつを軽く開け閉めしてみせた。
「うちらには二つの選択肢があると思うんや。一つはあの校長が言ってた狩場を探す。でも、これはうちの勘やけどそう簡単に見つからんし、人が増えたら不味いパターンもある。んでもう一つが」
「この町で得られるもの、アイテム、装備、ジョブの組み合わせを駆使して低レベルでのフィールドボス撃破……ってことよね?」
「まあそういうこっちゃや」
眼鏡を光らせた柊さんの解答に新見さんが肩を竦めて返答する。どうやらこの二人はこれからこんな感じでいきそうだ。対して、ナズナは苦手なのかボケーっと聞いている。理想とはいえないが、相性はよさそうな三人である。
「でや、この先増えるかも知れんけど現状は一PT6名。つうわけでどうや?桂木っち、太一っち。フィールドボス撃破目指してうちらとPT組めへんか?」
勧誘。成程、だから彼女たちは俺たちの下に来たのだろう。さてどうしたもんかと俺はシャクリとポテトを齧る。しかし、このゲームの食事がやめられない。
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激ウマポテト Common
激ウマとあるが至って普通のポテト味。しかし、一度口にすれ ばその手が止まる
ことはないだろう。Weight+1
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「もう皆分かっとると思うけど、これまだうちらヴァラエティーパラシスに入ってへんと思うねん。だってこんなんβテストにならへんもん。あのお爺ちゃん自由にやれとか言うといて、いきなり門構えてたんやわ」
「レベルが上がりにくいって言ってたのがヒントね。βでそんな馬鹿な調整するわけないもの」
柊に頷いて俺も口を開く。
「あの町もだな。中規あたりの町利用してるわりにはほとんど閉まってるしいきなりフィールドダンジョンにプレイヤーをぶち込むのもまずありえねえわな」
「つまり、学園が仕掛けたお蓋ってことや。勿論、戦闘やシステム周りだけはヴァラエティーパラシスのものやろうけどな。で、どうや?」
場にいる男二人が考え込んでしまったため少し静まり返ってしまった。先に動いたのは太一だった。ぐっと伸びをして太一は脱力する。
「俺はおkだな」
「おっいいねー太一君」
「正直、ソロで行きたいって気持ちもあっけど、そういうことならな。それにありゃ俺には荷が重そうだ。サポーターも索敵タイプ選んじまったし」
そしてお前はどうするよと太一が俺に視線を飛ばし、皆の視線が俺に集まった。ぽりぽりと頬を搔いて俺は伝える。俺はその案には乗らないということを。
「誘ってくれたのは凄え嬉しいよ。でも、今回は辞めとこっかなって。悪い」
「男の見栄ってやつか?一応、理由聞いてもええかな?流星君」
新見さんの言葉を受けて、それもないとはいえないけどと返してから俺はキッカを指した。
「どちらかというとソロに拘るのはアイツのためだな」
「ぬ?」
「サポーターのため?」
柊の伺うような声に俺はああと頷いた。
「このゲーム、まだ数時間しかやってねえけど一番特徴的なのは何かって聞かれたら俺はサポーターだって答える。こいつらは他のVRMMOには無かったユニークだ」
「まあ、普通やないもんね。ちょっと怖いくらい高性能」
「ここまで創られてんだ。サポーターの育成はこのゲームで重要なウェイトを占めると俺は思ってる」
でだと俺はそこで言葉を一旦切ってコークを飲んで再び口を開く。
「サポーターには多分、隠しがある」
「隠し?」
「隠しパラメーターってやつか」
太一の補足に俺が顎を落とせば柊が話に加わった。
「それってホントなの?桂木君」
「さっき、100×100の話をしたろ?簡単な計算だけどキッカは答えられなかった」
それどころか彼女は指で数えようとした。
「ぐぬう」
案にアホと言われたと思ったのかキッカがうめくが俺にそんなつもりはないとポンっと頭に手を置く。
「でも、こいつの中身は機械だ。俺なんかよりも遥かに頭がいい。計算なんかおちゃのこさいさい。でも、わからなかった。いや、運営がわからないを作ってる」
「わからないを作ってる?」
ナズナの声に俺は頷いてやる。
「キッカ、100×100は?」
「一万じゃ」
「こんな感じでこいつらサポーターは人みたいに経験したことを覚えて学習する。フィールドで戦った時、キッカは明らかに俺の動きをトレースしようとした」
だからと俺は続けた。
「サポーターにはステータスには描かれない判断力、適応力みてえな項目があるんじゃねえかなってな。こいつは感覚的なもんだけど、この段階であの大猿と死闘を演じることはこいつにとってすげえプラスになると思うんだわ」
「勝てるものなの?あれにたった二人。いえ、サポーターとプレイヤーだけで」
柊に俺は肩を竦めるだけにとどめた。
「さあな。無理なら柊さん達に泣きつくかも。でも、俺はいけるって思ってる。廃人を目指すってことはV-SPORTSで同条件の強者とそれまでの解答と実力をぶつけ鎬を削るってことだ。常にギリギリ、それを切り抜けてこそ上に上がれる。そこを目指させようとする学校がソロクリアなんて回答を用意してねえわけがねえってな」
「なあ流星君、その話は分かるけどや。どれだけ高性能でもサポーターはいずれプレイヤー付いてこられへんのが常識や。その行為は全くの無駄に……う”」
ギロっと睨むキッカの頭を軽く叩いて収める。新見さんの言葉は正しい。だから俺と太一しかサポーターを出している者はいない。でも、直観だがこれを確かめる必要があると俺は思っている。
「やってみる価値はあるって思ってる。お試しだな」
「ずっと出さなきゃいいのにと思ってたけど正気なのね」
「はーでも桂木っちには振られてもうたかー。後一人どないしよかーせめて五人やないと」
「それなら私、一人いいの知ってる」
何となくナズナの言うそれが誰なのかわかった。多分、ナズナと二人羽織ってたあの小動物系の女の子だろう。ピンク髪の大人しそうな子だった。
「じゃあ決定やねー。なあ、流星君」
「ん?」
「でも、フレンド交換くらいはええやろ?」
「勿論」
流石はコミュ力極ぶりさん。俺たちは其々でフレンドコードを交換し合って店を出るのだった。
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流星ノート〇サポータAI
NPCはプレイヤーに動きに適わないが常識であり、上位でPTに加える者はまず存在しない。数合わせ、ドロップ狩りに利用されるもの




