復活と必要経験値
闇。ぼんやりとした意識の中で俺はログアウトするか復帰するかを選択する。勿論、落ちるわけがない。ピっと決定の音がなれば意識が浮上して目に光が溢れた。
まるで大樹の中、そこに置かれた木のベットで目を覚ました俺はぐっと伸びをした。
「デスペナはとりあえずなしか」
メニューで確認した俺は立ち上がって扉を開く。すると転移したようでテスターシティーの入り口に立っていた。俺と同じように死んだのだろう周りに呆けている生徒がいる。
キッカはどこだろうかと軽く探せば直ぐに見覚えのあるローブが見つかった。その横には太一の姿もあって、俺は彼らの下に向かう。
「随分と早い再会になっちまったな流星」
「ホントだな。だっせえ」
太一が拳を出してきたので軽くぶつけ合う。すると、心配したのじゃーっとキッカが寄ってきて俺の服裾を掴んだ。
「おーおーもう随分と懐かれちまって。流石は第二の~コーンさん?」
「やめい」
揶揄う太一をひと睨みすれば太一は肩を竦めて少し真剣な顔になった。普段はふざけた性格だがゲームとなるとこいつは本気になるのである。
「流星がやられるだなんてな。フィールドボスか?」
「ああ、油断した。っていいたいけどあのまま次やっても無理くさいな。選択肢が無さ過ぎて縛りプレイの領域だわ。お前は?」
「俺もフィールドボスに秒殺ってな。なあちょっと話さないか?いい店見つけといたんだ」
飯は食ったがゲームなので腹が膨れるわけじゃない。まあ食い過ぎると胸焼けするけれど……。
「おk」
「クエ―クックエ」
急な鳴き声にぎょっとすれば太一の肩からひょこりとあの鳥が顔をだした。
「悪い、俺のサポーター黒ノ助。上手く使えず死んじまって俺のせいだって怒ってるみたいでさ。ずっと興奮してんだわ」
「それ、種類なんなんだ。っつか意志疎通できるんだな」
「何だろうな九官鳥?喋れねえけど何となくな」
鳥だがドヤ顔してちょっとかわいい。戦闘で活躍できるのか疑いたくなるが、索敵では随分と活躍しそうなサポーターである。
ランクで能力値に差はでないと確かスロスロは言っていたがどうやらタイプの違いみたいなのはあるようだ。そんなこんなで俺たちは太一の案内で店に向かった。
軽くジュースを含み、俺は頼んだポテトに手の伸ばす。旨い。食い物の味をみればそのゲームがどれだけ拘ってるかがわかるという話をふと思い出す。
キッカと太一も止まらないと口に放り込み、黒ノ助も葉巻のようにポテトを咥えていた。
(実際の鳥ってポテト食うのかね?)
ちょっとどうでもいい事を俺が考えていると卓上のものを軽く押しのけて太一が地図を置いた。
「んで?流星がやられたのはどんな奴だった?」
「俺?俺は猿だな。ラウンドエイプキングってやつでレベルは10だ」
ふむふむと太一は取り出したペンで情報を書き込んでゆく。地図ペンというアイテムらしく注釈がでている。俺も後で買うかと頭の片隅に置いた。
「んでと俺の方は鳥。ハードバードキング。レベルは同じく10っと」
ふむと考え込む俺だったが新しく入ってきた手がひょいとポテトを掴み俺の目の前を通過した。
「うちらの方は犬っころやったわ。名前はハウンドドッグキング」
新見さんとナズナ、そして委員長っぽい柊テトラがいた。彼女たちは三人で組むことにしたようだ。
「何か新見さんって急に来る感じするから毎度ビビるわ」
そう俺が言えば新見さんはニタっと笑う。
「え?ホンマ?気配消し上手いんかなーうち。ジョブ忍者とかあったらとってみてもええかもやな」
どうやら彼女は初期ジョブを回術士にしたらしい。
見習い神官のような衣服を纏い俺と太一の間に腰を下ろした。ナズナはやはりキッカと同じ武術士、俺の隣の席をハブとマングースごっこでキッカと手を掴み合っている。
俺は見なかったことにした。柊は乗り切じゃなさそうにハアっとため息をついて太一の横に座ればその太一がニタっとした。
「おお。テトたん。俺の隣に座るとはお目が高い」
「ここしか空いてないのは見ればわかるでしょ?気持ち悪いノリは辞めて、瀬良君」
「きっきもちわるい……ガクリ」
「見事にフラれたのじゃ、太一はモテぬのじゃ」
「クエ」
キッカ、太一に一切の容赦無し。ぐはっと太一が吐血した。が、皆の手はポテトに向かう。黒ノ助は多分、同意っていった。
「でー話を戻すけどな?ざっと他の子に聞いてみた感じ。猪とネズミもいたんよ。やから」
ぱっと新見さんが太一のペンをとって円を引いてゆく。大きな円その中に小さな12個の丸。それはまるで時計のようだった。そして更にそれを線で結べば星形、こんぺいとうのような形に至る。
「干支でここのフィールド、こんな感じになっとるんちゃうかなって」
「ああ、そういえば」
言われて見れば干支臭い。VRMMO制作者は現実のシステムから着想を持ってくることが多いのだが、西洋っぽい雰囲気で干支が選ばれるのは珍しいことだった。
「まあ仮にもここにいる連中は廃人目指す学校に所属しとるんやからここがフィールドダンジョンってことには当の昔に気づいてるやろけど」
「うむ、モチの論じゃ」
「貴方、所属してない」
そう所属してない奴がおっしゃったので、ナズナのツッコミが入った。
「なにおおおおおおおう。わしだって行きたいのじゃ~。流星と同じ学校にいいいい。心は学生じゃあああああ」
「でも、年齢的にもキッカは無理。ちんちくりんだし」
「何を言うか。お主もちんちくりんではないか」
キッカの指摘にナズナはガタッと立ち上がる。彼女は武道家。キッカと似たようなダボっとした服にあの青いマフラーをつけていた。
「私の方が2cm背は上回ってる。これは埋めようのない差」
顎を上げて見下すようなナズナの視線にキッカは顔を顰めて胸に手を置いた。
「確かにそうじゃ。身長じゃあ叶わなぬ。じゃが」
そしてその手で胸をポンポンと叩きゲス顔を送った。
「どうやらこっちはわしの方が大きいようじゃの」
「んなっ!?」
つい見てしまうからそんな話題止めて欲しい。色々と不味いから。
「む……胸何て脂肪の塊」
「身長じゃって脂肪の塊じゃ」
いや、我がサポーターよ。それはどうだろうか。
フシー、シャーっとまたしても喧嘩を始めたちびっ子二人を冷めた眼で見ていた俺だったが視線に気づいて目線を移し硬直した。柊さんがゴミを見るような目つきで俺を見ていた。
(おうふ)
目のハイライトが消えている。
「桂木君、あれは貴方のサポーター?」
「……ハイ」
「そう」
「でもあれだぞ?狙ってじゃなく、不可抗力で」
「どうでもいいわ。そんなこと」
「だからってえ?」
いいの?っと首を捻れば彼女は頬を赤らめていた。
「桂木君、後で彼女の頭撫でさせて貰ってもいいかしら?」
「当人に聞いてください」
「それもそうね。そうするわ」
どうやら彼女は可愛いものが好きなようだ。それだけ。ずっとキッカに視線が固定しているが……。
(それだけだよな?)
兎に角、ちょっとホっとすれば新見さんがパンパンと手を叩く。
「ほらほら、脱線しとるで。注目、注目。でさっきの続きやけどな。抜け道が無いとは言わんけどここまで大掛かりなんや。まず、こいつらを倒さんと抜け出されへんって話になると思うんよ」
同意。というかほぼ間違いないだろうと俺たちが頷けば彼女は指を立てて続けた。
「でや。その場合、一番問題になるんが」
「私たちのレベルが上がらないこと……よね?」
「正解や!柊ちゃん」
まあマグドール校長がそう言ってたわけだし、ちょっと魔物と戦えばこのゲームのレベル補正の高さにも気づくだろう。
「で、話によると2に上がるために必要な経験値は約10万」
「「「じゅっ!!!」」」
これはVRMMOとしては破格。というか確実に糞ゲ―と評される設定である。
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流星ノート〇 MMOにおけるレベル
VR黎明期に作られた作品ではレベルは時代遅れとされ採用されることはなかったがVRMMO開発費の巨額化により復活。ライトゲーマー、ミドルゲーマーに向けたコンテンツ。廃人からするとあってないようなものである




