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廃人遊戯譚『ヴァラエティーパラシス』~人とAI率いる俺が廃人へと至る道  作者: 流体紀行
βテスト『学園ラヴェルとヴァラエティーパラシス』
17/110

敗北とラウンドエイプキング

 それから俺たちは破竹の勢いでフィールドを突き進んでゆく。とはいえ、レベルの高いモンスターとの戦闘は避けている。そして──それはまるで誘導されているかのようであった。


「まずいな」


 少し休憩。岩場のような場所で腰を掛けて、俺とキッカは軽食を取っていた。別に食わずとも死ぬことはないが、パンドラボックスが味覚を再現してくれるため旨く、精神が落ち着く。


 後、料理にはステータスを一時的に上昇させる効果もあった。今日の献立はノートルティーと味アジパンである。この手の者には注釈があるが結構その情報は馬鹿にできなかったりする。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 ノートルティー common  田舎町ノートル原産の茶葉で煎じたお茶。

                           HP+2

 味アジパン   common  味のあるパン。それ以上でもそれ以下でもない

                           STR+1

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 ほぐむぐっと頬張(ほうば)ったキッカが答える。


「ほうかの?うまうまじゃぞ?」


「ん?ああ違えよ。このままだと負けて一回帰還することになるかもなってな」


「なんでじゃ?確かに強敵からは逃げてはおるが順調じゃろう?」


「多分、フィールドダンジョンだこれ」


「フィールドダンジョン?」


 俺はズズっとノートルティーを(すす)ってから地図を空中に表示させた。キッカがぐっと寄ってきて肩が触れる。色が付いている部分は扇形で細長い。それは俺達のこれまでの足跡。俺の指がそれをなぞる。


「俺たちは勝てそうにない奴らを避けて通ってきたけど、扇状に狭くなって一本道になってるだろ?」


「ふむ」


「要するに高レベルのMOBを壁として考える。広々としたフィールドに見えて実はプレイヤーの動きは制限されていて開発の思惑通り動いてるって寸法。それがフィールドダンジョンだ」


「じゃが、それはここだけの話というのもあるのではないのじゃ?」


「勿論。でもまあ、多分間違いないと思う。俺たちと反対側に向かってた太一も似たような感じってメールがさっき届いたからな」


「成程のう。合点がいったのじゃ。それで奥に進むほどに別れた連中と合流し始めたのじゃな」


 そう、俺たちの周囲には学生たちのPTが休憩をとっていた。俺たちはそこから死角になるように岩を壁にしているというわけである。


「そゆこと。戦闘状態にならなくてもレベル見えっからおかしいなとは思ってはいたんだけどな。スキルとか専用ジョブじゃねえと見えねえもんのはずだから。多分、これ運営と学園が用意した俺ら用の試験だな。難度べらぼうだけど」


 まあその辺は廃人を目指す学園ラヴェルの生徒に合わせたものということなのだろう。まだ発売前だってのにこんなものを用意するだなんてやけにサービスがいい。いや、それだけラヴェルの権力が凄いのか。キッカは俺の味アジパンに齧りついた。


「あ」


「はむ。むぐむぐ。でも主よ。どうして帰還することになるのじゃ?突破できるようにはなっておろう?」


「ん?ああ、できるようになってるさ。でも、多分、俺の堪だと一番奥には」


 鬼強いボスがいる。そして──そんな俺の予感は的中する。


 レベル──それはVRMMOにおける初心者救済として存在しているもの。それはトップ層から見れば上げきって当たり前の数値であり、意味をなさない項目であるからだ。とはいえ、数値というのはやはり圧倒的な暴力を持つ。


 どんなに下手糞であろうとも効かなければ相手の攻撃を避ける必要もなく、火力が高ければブンブンするだけで勝てる。VRMMOをただ楽しもうとするエンジョイ勢、ライト勢は推奨レベルよりも少し高くしてゲームを楽しむわけだ。


そして逆にレベル差があると一気にきつくなる。レベル差が10近くも付けばもはや縛りプレイの域となり技術があっても困難を極める。よって──


「ぐっ」


「キッカ!」


 俺のサポーターであるキッカがボスの一撃を貰いHPを全損させた。体から淡い光のシャボンを出すキッカは消滅するようで消え始めている。


「最後に一言……言わせて……欲しいのじゃ……主よ。わしはお主の事を愛しておるぞと」


「さっさと逝け」


「後生じゃあアアアアアアア」


 多分、町まで返されたのだろう。ボシュンとキッカが消えた。ホント調子が狂うと頭をかけば、突如弾丸のように飛来した木の実を俺は叩き切る。


 ガサリと飛び出した影が咆哮して、その威圧に俺は押し下げられた。姿は大猿。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 ラウンドエイプキングlv10

 hp???mp???

 特殊:王の力:敵のPT人数に応じて微強化される

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 右足が光った。雑魚の技を同種のボスが使ってくることはゲームあるあるだ。


(来る!っ!?)


 想定よりも何倍も早く巨体が迫る。鉤爪がピクリと動き、それに合わせて回避行動をとるが、エイプキングの理性的な視線に気づいた。


(フェイント!?こんな序盤の敵にまでどんなAI積んでやがるっ!)


 直後、軌道が変化し頭部を狙って蹴りが放たれる。膝を折ってその攻撃から逃れるも目の前を轟っという風が抜けた。鼻先を掠めたらしい。それだけ、たったそれだけでHPの4割が消えた。


 これがレベル差。軽く当たっただけでも大ダメージ。そしてまだ俺は一撃も与えていないが、恐らく直撃をとっても一割とHPを減らすことはできないだろう。


「ふう」


 だが、絶対に勝てないということはない。かつてレベル1の人間がレイドボスに挑戦し不眠不休で倒したという実例もある。そしてそいつは今、不眠ノ王と呼ばれるハイヒューマンとなった。


(俺にだってできるはず)


 そう気合いを入れ直し、集中力を高めた俺だったがぎゃっぎゃっとまるで勝ち誇ったようなエイプキングの声に眉間の皺を寄せた。


「なっマジかよ」


 全く気づけなかった。後ろから腹が突き破られた。それはエイプキングの尾。土に刺し、地中を堀り、後方から俺を貫いたのだ。


「初見で見切んの無理だろ今の」


 俺は初見殺しに沈んだ。ズプリと引き抜かれれば力が入らないアバターがどしゃりと倒れ込み、HPバーが消滅する。


「覚えてろよ。絶対にリベンジしてやる。このでかエテ公」


 薄れゆく意識の中で、最後まで胸をドンドンと叩くエイプキングを睨む俺は視界を暗転させた。間違いなくこいつは今の俺たちにとって最大の障壁となるだろう。


 そして何よりの問題があれだけ倒し歩いたというのにまだ1レベルも上がっていないという事実だった。校長、マグドールは言っていた。このβ版はとてもレベルが上がりにくいということを。これが一般用なら即炎上クラスの調整。


 だから間違いなくこいつは学園が用意した関門だ。恐らくまだ俺たちはヴァラエティーパラシスに入ってすらいない。あの爺さん自由にやれと言っておきながらこれを踏み越えれなきゃ本編やらせる気はないらしい。

───────────────────────────────────

流星ノート〇効率

レベルキャップが存在するMMOで効率が求められる理由は高難度コンテンツへのいち早い参入と周囲へ数字でアピールできるからである。


廃を目指す者が効率を求めるのは至極当然のこととされるが一歩一歩遊び進む方が強くなれると考える者も極少数ながら存在する。


     〇V-sports

 対人の祭典であるV-sportsは幾つものルールに分かれている。レベル10の部門、20の部門、30の部門、ソロ部門、チーム部門、その他などなど。各戦績に加え成績の集めたものがポイントとなり、クランの名があがっていく

西洋が取り仕切っていて形態はサッカーに近く名門はビッククランと呼ばれる

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