Sクラス最上位PTと出立
その背後には始業式にも見た十文字という青年、あと有栖川と呼ばれた主席の女生徒、そこに新顔である二人の双子の女の子が加わっていた。計5人。
まあ彼らはSクラスメンバー。それも現在の一年最上位軍団だと容易に予想がついた。へへっとチャラ男が美咲の手を取ろうとしたため、ちょっとイラっとした俺は体を入れて邪魔をする。
「っと」
躱したチャラ男の体が泳ぎ、目があった。ハーフなのか目が青い。あと弓使いを選んだようで軽装に矢筒とショートボウを身に着けていた。
「えっと?お宅誰?相田さんの友達」
「ん?まあ」
そんなところという言葉が双子によって潰される。
「「美咲なんで勝手に行くの!」」
動作が連動しているかのように互いに腰に手を当てて怒っている。肩で切りそろえた薄紫の毛先が揺れる。彼女たちは魔導士のようで装飾が施された杖を持っていた。
しかし、別の武器屋に入れたのか彼らの持っている装備は俺のものより既に何段階も上に見えた。
「ごめんね。ネネ、ユユ」
「美咲さん。何故こちらに?正直、このお店随分とランクが落ちるように見えるのですけれど。その方と何か?」
「少なくともSクラスってわけじゃなさそうだが」
前者が有栖川で落ち着いた声が眼帯男の十文字である。
「お宅って何ランクよ?」
チャラ男が聞いてきたので俺は普通に答える。
「ランク?Fだけど」
「「「「F!?!」」」」
「五月蠅っ。そんな驚くことないだろ?SもFも人数は一緒なんだから」
「相田さん。同じクラスとしていうけどこんなのと付き合わない方がいいって絶対」
「私も同意致しますわ。失礼ですが、余りにも美咲には不釣り合い。メリットを感じませんわ」
理聖と似たようなこと言うやっちゃなと俺が見れば有栖川は大体っと踏み込み俺の剣を指さした。
「大体っ!何故、これほどの時間がありながら貴方はまだ初期装備なのですか!」
「いや、だって」
「だってじゃありません!いいですか?貴方はFなのでしょう?VRMMOでは如何に強力な武器を手早く手に入れるか。これが単純にして明快な上に這い上がる手段なのです。そうやって上位者と組みやすくなるんですから。貴方のような者こそ店を駆けずり回らなければいけないんですよ!ほら、貴方は私と同じ剣士でしょう。Fランクの資金を鑑みてこの剣をお勧めします。今すぐ買いなさい。私も出してさしあげますから」
まさかランク別にゲームの資金まで変わってくるとはと俺は苦笑いながらも彼女の有難親切に断りを入れる。
「あっと……気持は嬉しいんだけど俺、暫く武器は初期装備で行く予定だから」
ちなみに防具も気に入っちゃったのでそっちも初期のまま行く気である。勿論、いけるとこまで。俺がそういえば有栖川は目をまん丸にした。どうやら断られるとは思ってなかったようだ。
「貴方……私の話聞いてらして?」
「うん、まあ言ってることはわかるけどさ。それって同一のVRMMO経験してる時に限るだろ?」
「同一の?」
「あーほら、VRMMOってものによってシステム違うじゃんか。このゲームってAIからしても完全新規っぽいし間違いなく根本のところから違う。そういう時は初期装備振り回してシステムを肌に沁み込ませるのがセオリーっつうか。強武器使うと変な癖がついちまうっつうか。俺の師匠が言ってたんだよ。そういう下地をちゃんとやってこそゲームとはいえ武器本来の力を引き出せるってな。でも意外と主席って」
ハっと俺は気付く。フグのように有栖川さんが怒っていると。だが、この桂木流星は地雷原を回避する男。スッと足を引くかの如く、回避行動に移行する。
「でもやっぱ流石は主席だよな。凄えよな」
「もう遅いですわっ!!!いいでしょう」
ビっ指を刺され俺はたじろいだ。
「貴方のような存在がポイントを稼ぐことができるかこの私に見せてみなさい!もしそれができたならこの有栖川、貴方とPTを組んで差し上げます」
ちょっ有栖川さん。そんなFランクにと周りがざわつくが俺は正直に言った。
「え?やだ」
っと。
◇◇◇
空気が死んだ気もするが、こういうのはハッキリ意思表示をしておいた方がいい。後々面倒なことになるのだ。特にゲーム関連では。
「なななな。何故断るのですか?貴方はFでしょう?上に行きたくないのですか?」
「行きたいっつうか行くつもりだけど、俺、βは基本ソロで行くつもりだしな。太一とも組む予定だし。だから無理だ。ごめんな」
「そっソロ?Fランクの貴方が?貴方は……貴方は効率を考えないのですか?」
「効率?そりゃ考えるさ。でも第一義は楽しむことだろ?ゲームなんだし」
「しっ信じられません。そのような方がこの廃人を目指すラヴェルにいるだなんて」
「そうか?俺は結構重要なことだと思うけどな」
やる気を失えば作業的なものに身が入らなくなるものだし。まあ効率を求めることが強い行為であることは俺も否定しないけれど。
「ではっ!仮に仮にです!何の条件がなくとも私とPTを組むのを断ると?」
「ん?ああ。そう言ったろ?それに……何つうかあんた五月蠅そうだし」
ちょっと苦手なタイプかも知れないと言えば有栖川さんが発狂した。
「は?五月蠅い?この私が?どこがっ!!どこが五月蠅いというのですか!!!」
「ほらリアルタイムで」
「いいでしょう。いいです。わかりました。貴方、名前は何というのです!今すぐ組んであげましょう。私がどれだけおしとやかな女性で有用な人間であるかを」
「いや、だから組まねえってば」
「ねえ、流星。喧嘩しているように見えて流れるように仲良くなってないかな?」
「そうじゃ!そうじゃ!わしというものがありながら、このすけこまし者めがっ!」
「ネネ修羅場だ」
「うん修羅場だユユ」
「ねえ?お宅ら俺の事無視してない?チャラ男だからって無視ってるよね」
何だかカオスになってきた。MMOあるある。知り合いにあって中々抜けられない奴である。早くゲームしたいんだがとポリポリと頬をかけば、十文字が有栖川の肩をポンっと叩いた。
「何ですか!!十文字さん今、取り込み中で」
「すまん、有栖川。どうしても気にかかることがあってな。Fランク、もしやそのちいさいのはお前のサポートか?」
「ぬ?」
(うげえ)
皆の目線がぐるんと向いた。キッカが俺のサポーターであることなどどの道バレる事だろうが、このタイミングはちょっと嫌だった。
「ちっ違うよ。紹介できなかったけどこの子私のサポーターなの。それを色々あってこの人に預かって貰ってて」
へえーこれが美咲のサポと興味がそっちに移れば美咲がパチっとウインクした。ナイスフォロー。やはり持つべき者は幼馴染。ジト目を送ってくるキッカに全力で併せてくれと俺が伝えれば彼女はやる気無さげにため息をついて演じてくれた。流石は超高性能AIである。
「まああれじゃー。そんな感じじゃー」
もっと主人の名誉のためにやる気を出してくれ高性能糞AI。
「そうか。これは相田のサポーターか。であればちょっと頭を撫でさ」
「え?」
「いや、違う。決して不埒な考えじゃなく。僧侶と武道家組めばいい感じになるかなと少し思っただけというかだな」
「……」
何か変な空気になってしまったが、今がチャンスと俺は離脱する。
「美咲、そろそろ俺行くわ」
「え?あっうん。ありがと預かってくれて。また落ち着いた時に流星」
「ああ、またな」
「お待ちなさい。流星とおっしゃるのですね。私とフレンドコード交換しなさい!!貴方はこのまま逃げる気ですか!ちょっと美咲何するんですか?」
本日二回目のナイスフォロー。一回目より力が入ってる気がするのは気のせいか。
「ちょっと待った。何で美咲さんのサポであるはずのそのロリっこがお前に付いていこうとしてんだよ」
糸目のチャラ太郎が呼び止めてくるが、もう面倒である。
「キッカ」
「なんじゃ」
「走れ!逃げるぞ」
「了解じゃ」
出る前に俺はピタリと止まって振り返った。
「俺はFランクの桂木流星だ。お前らぶち抜いていずれ学年トップに立つ予定だからよろしくな」
んなっと呆ける彼らに微笑をくれてやり振り返れば怒号が鳴り、あのチャラ男がFランがイキるなと怒鳴ったが俺は苦笑した。
こんな感じで一年トップ軍団との邂逅は終わった。店を飛び出した俺たちは追ってこられると面倒だと町に出ても駆け足のままで移動する。キッカはメニューから着替えてくれたようでフード付きローブを羽織って顔は見えない。これで多少は人の目もマシになるだろう。
「それでもうこれからの方針は決まっておるのか?主よ」
「ああ。軽く道具買い揃えたら次の町目指すぞ。勿論、道中でレベル上げつつ、素材集めしつつ、拠点用の金貯めつつな。まあβで拠点まで買わせてくれるかわかんねえけど」
「ほほう、拠点。わしらの愛の巣ということじゃな」
「アホ言え。お前やっぱ中身入ってんじゃねえだろうな?ほら行くぞ」
俺たちは行く。冒険の舞台であるフィールドへ。つまり、待ちに待った戦闘だ。
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桂木流星
装備:剣士の衣
DEF+1
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キッカ・MARK2
島栗鼠の浅葱色ローブ
DEF+5
特殊効果
隠蔽+1
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