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閑話 流れる星の周囲で輝く小さな星々③

有栖川率いるSランクPT『アルケミスト』メンバーは──


眼帯剣士兼タンク役   十文字新

双子の魔導士      ネネとユユ

斥候 弓兵 チャラ男  深爪切嗣

流星の幼馴染      相田美咲

学年主席        有栖川胡桃


で構成されている。ちなみに深爪が斥候役として離れた場合、そこに有栖川のサポーター、ディムロが加わる。そしてそれだけでなく、本来はここに多くのSクラスが付き従っていた。が……


「あの、僕らも」


「あーわかったわかった。一々、報告しなくていいっすよ」


去ってゆく背中を見て深爪は自身の金髪を弄り大きく溜息をついた。アルケミストで買った馬車の中で何組目だよっと疲れたように彼は壁に凭れ掛かった。


「ったく勝手に付いてきといて勝手に去ってく。酷い奴らっすね」


「間違ってはないでしょう。学園クエストに違反を犯し、トップを取れず、後れをとってしまったのですから。見限らない方がおかしい。そういう世界に生きているのですから」


答えたのは奥にいた有栖川胡桃。栗色髪を下の毛で巻き、どっかのNPC姫騎士と遜色ない美貌を誇っている。天は二物を与えずというのは大嘘だと彼女が体現しているようだった。薄く上がった彼女の口角に深爪は目を細めた。


「何か嬉しそうっすね有栖川さん」


「え?そうでしょうか?」


まだ始業式以来の知り合いで余り長いと言えないが、変わったと深爪は思った。何というか柔らかくなったというか。丁度、ストラージュ裏ボス辺りだろうか。PTから離れていた深爪は彼女が謎のこだわりを見せ、周囲と揉め合いになっても無理やり挑戦したと後に聞いた。


確かに深爪もその後クリアしてうるっと涙腺に来たし、やって良かったと思ってはいる。でもそこまで悪化させて先行する理由はない。物語は逃げないのだ。いつやってもいい。むしろ対抗試合を控えている今、やらない方がいいまである。


「余り大きな声では言えませんが彼らが重荷になっていたのかもしれません。期待されるのは家からで十分といいますか」


そういえば彼女の家はトッププレイヤーを輩出する名門だったなと思い出す。まだまだゲームで稼ぐなんてと馬鹿にする者も多いがその陰で巨万の富を築いていると聞いている。


「ですから深爪さんも出ていきたくなったら気軽にいいんですよ?あっそうなるとディムロの枠が空きますね」


え?っと固まった深爪に膝に置いたディムロを撫でながら有栖川はクスッと笑った。


「すいません、今のは冗談です。貴方に抜けられたら困ります」


「ちょっ今のは酷いっすよ有栖川さん」


「ごめんなさい。だって深爪さんが揶揄って欲しそうな顔をしたものでしから」


ドキっとする。こりゃ心臓に悪いと深爪は顔を逸らし、慌てて話題を変える。


「随分熱心にサポ育ててるっすけどどうしてっすか」


「サポーターと共に挑むであろう競技がこのゲーム最大のものとなると思っているからでしょうか」


「なっマジっすか!?」


「恐らくは。でなければここまでのAIを搭載している理屈が通りませんから。既に気づいた者達が動き出しています。あの男もまた」


あの男っと引っかかりを覚えつつも深爪は頭を抱え込んだ。


「あー俺全然育ててないっすよ」


「大丈夫、これはまだまだ先の話ですから」


ここだっと深づめは心の中でいけっと拳を握り込んだ。


「あっ有栖川さん」


「はい」


「よっ良かったらっすけど、そのサポーターの事色々教えて貰えないかなーなんて。でっできればふっ二人きりで」


「構いませ「止めとけ止めとけ嬢ちゃんこいつは明らかに」」


すーっと一人でに剣が鞘から抜け顔を出した単眼の魔剣ディムロはしーっと指を立てる深爪の姿にふむっと口を閉ざした。


(兄ちゃん上級砥ぎ石3っつ)


(高すぎるっす!せめて1)


(ふざけんじゃねえ。俺のマスターに手出そうってんだ2つだ2つ)


(手なんて出してないっす。ってかゲームだからだせないっす。でも、わかったす2つで手をうつっす)


(よし)


「あの……目で会話してませんか二人とも」


「嬢ちゃん。男にゃあ色々あるのさ」


ふっと単眼で微小を表現するディムロを有栖川はジト目でみた


「勝手に出るなと申したでしょうディムロ」


「いや俺様はお嬢を守っ」


容赦なし。チンっと剣納されグルグル巻きにされる。憐れディムさん。


「ううん……」


そして有栖川が動いたせいで背中を預けていたらしい眠りこけたメイドが倒れ込んできた。ああもうっと有栖川が声を荒げた。


「あーもうどうして皆私にくっついてくるのです」


羨ましいと思いつつ前々からチラチラ彼女の傍で見かけて気になっていたと深爪はメイドを指さした。


「有栖川さんサポーター二個持ちっすか?」


「いえ、これは私の家の者です。有栖川家では専属のメイドが付くのです」


「専属メイドっすか。羨まっじゃなかった。流石名家っすね……ただ、思いっきり眠りこけてるっすけど」


「私の訓練に付き合う形でこのゲームにのめり込んでしまいまして。また機会を見て紹介します。ほら小鳥、女の子がはしたないですよ」


「ううーん、お嬢様……もう訓練嫌ああ」


「ふふっどうやら家の仕事がきついようです。九官小鳥、寝落ち。リーダー権限、ログアウト」


今、思いっきりお嬢様の訓練といった気が……と少し青ざめた深爪の前で有栖川は小鳥を慣れた手つきでログアウトさせる。何か見てはいけないものを見た気がすると深爪が口元を引き攣らせれば、漸くメンバーが帰ってきてホッとする反面二人きりの構図が崩れちょっと残念に思う深爪であった。


◇◇◇


「あーずるいー二人だけで涼んでー。ねー」


「ずるいずるい」


ちょっと子供っぽい双子の姉妹がぷくーっと頬を膨らまし、後ろから相田美咲がアハハっと苦笑していつもの順番で乗り込んでくる。これで終わりなら深爪ハーレムだが、そうはさせぬと眼帯剣士、十文字新も最後に姿を見せた。


といっても全然、深爪は十文字の事を邪険に思っていない。彼は恋愛に興味がないからだ。そして、深爪自身も学生恋愛に興味ゼロだった。

でも──


(ラヴェル可愛い子多いんすよね。はあ、ゲームしながら恋愛とか昔の人に恨まれそうっす)


この時代に生まれて良かった。そんなことをひっそりと考えながら、いつものように音頭をとる十文字の声に彼は耳を澄ます。


「ここでやるべきことは済んだ。ドガティスの裏ストは後に回すべきだ。次に進むが、先行する千里の風が次の都市に入り10階を突破したらしい」


「10階?ああ、なるほどそういう場所なのですね」


「そうだ。目指すは世界樹の塔があると言われるエレンシア。前回は後れをとったが次は勝つ」


「いこー」「おー」


折角のシリアスがユユとネネで崩れるのがアルケミストの様式美である。


「十文字君馬車で移動?」


「そうだな。途中で受けるクエストも地図で落としておいた」


「やったあああネネ同級生と馬車で旅したかったの」


「私もー」


ハイタッチするネネとユユの姿にクスッとした美咲はそうだっと手をうった。


「じゃあ折角だしご飯食べちゃおっか。といっても架空内でだけど、私知り合いから送って貰ったキャンプ料理丁度あるから」


そういって広げてゆく出来が素晴らしい料理の数々にうおおおおおっと唸るアルケミスト。それは高峰と慧木さんに披露するために流星が練習で作りまくったものなのだが当然、彼らは知らない。


「ちょちょちょ!ほぼ高品質じゃないっすか。相田さんが作った……じゃなかったその知り合いすごいっすね。ハイコック目指してるとか?」


「ハイコックは目指してないんじゃないかな……。ほら皆も一回会ったじゃない。初めの武器屋で会った男の子。作ったのは私のFランクの方の幼馴染流星」


丁度水を飲んでいた有栖川がごふっと咽たが、ネネとユユが声を上げたため追及の難を逃れる。


「美咲幼馴染いっぱいー」


「いっぱいだねー」


「いや、二人だけだから。まあでも多いのかな?」


皆が手を取りウマーっと舌鼓をうつ中でじっとする有栖川。それに気づき美咲が皿にもって渡そうとする。


「はい、有栖川さん」


「あれが作ったものなのでしょう。毒とか入ってたり」


「入ってない入ってない。もうしょうがないなー。はい、あーん」


美咲に箸で挟んだお肉を差し出され、目をパチクリする有栖川。


「美咲?」


「あーん」


何故かゴクッと深爪が喉を鳴らし、お肉の前で断り切れない有栖川の唇がゆっくりと開けられる。ハムっとし──


その日、有栖川のメニューに料理の特訓が追加されたのである。

そして小鳥は泣くのだ。oh,my god kotori-と。


────────────────────────────────

流星ノート〇寝落ち

プレイ中に寝落ちした場合、基本的にはログアウトされるがPT共有され、設定していた場合は肉体は残ることになる。どちらもプレイヤー側が設定しておいた警報(目覚ましの呼び鈴)がけたたましく鳴りプレイヤーを起こすか周囲にそれを知らせる。プレイ中眠りについても危険はないが、政府が取り決めた活動限界時間を超える危険があるためである。なお、小鳥はこの後同僚に蹴り起こされる

流星ノート〇ファンタジスタ

お気づきかもしれないが、流星のように異なるジョブを使い分けようとする者は少ない。それはフルPTを組んでいるためローテンションが生まれ、逆に崩してしまうからだ。またこのゲームにしか職玉が存在せず、従来のやり方に依存しているという点もあるだろう。

この異なるジョブを使い分け戦う者のことを後にヴァラパラプレイヤー達はファンタジスタと呼ぶか、それはちょっと先の未来である。

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