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裏・boss守り人アドラーと茨棘竜グラン・ニュート③

「あだっ」


 意識が回復したと思ったら軽く落ちて俺は尻餅をついてしまった。勿論、痛くないけど反射的に言ってしまった。


「ったくサポーター残してプレイヤーが二乙とかカッコ悪いにもほどがあるだろ」


「おっ高峰」


 ってことはここがセーフルームかと俺はキョロキョロと見渡し何か見覚えある場所だと首を捻った。


「俺達が最後に借りたギルドルームだ。死んで生き返らせる手段が無かったらここに飛ばされるらしい。ちなみに治療スキルの十が蘇生って話だぜ」


 へーっと観察を続けていると軽く蹴られた。


「痛っ何すんだよ」


「お前、誰が恥ずかしいだ。ふざけんなお前のが大概だろ」


「あれ?高峰あれ見てたのか?」


 いないと思ったから言ったというのに。ちょっとブスっとした顔で高峰はビっと奥の画面を指し示した。


「観戦できんだって。普通に会話まで丸聞こえだったぞ」


「へーってことはグレゴアの時も?」


「ああ、乙った奴らは俺らの闘いを見てたって話だぜ」


 ほほうっと俺は画面を覗き込み、確かにキッカとルフさんが映っていると感心する。こういうのってプレイヤーの要望があって実装されることが多いのに手が早いことである。


「ちなみにプレイヤーの中に入って視界を同期させることもできんだとよ」


「マジそれ?頭バグるってか思いっきり酔いそう」


 ってことで今回は止めておく。いつか試すけど。


「あーあ、負けたら時間的に明日だな。ホントにあいつらで大丈夫かよ」


「大丈夫だって。布石は打ったし、お前だって信じてルフさんを送ったんだろ?」


「別に今回の作戦にあいつのスキルが必要だったってだけさ」


 フンっとする素直でない高峰。


「はいはい」


「おい、何かムカつくぞ桂木」


 ギロっと睨まれ俺は怯えるフリをした。


「うわー止めろー助けてルフさん後は任せたぜ俺の相棒さんに殺されるー」


「あってめえ!お前が弄るんじゃねえよ。何度も言うがお前の方が酷いっつの」


 こうやって死んだもの同士でわちゃるのもMMOあるあるである。ガチPTだと反省しろと怒られたりするけど俺は楽しい方が好きである。俺はふと気づき高峰を止めた。


「高峰」


「あん?今度はなんだよ」


「最後の攻防だ」


 アドラーとキッカ達の闘いが最終局面に入っていた。恐らく勝敗は一瞬でつくはずだ。俺はAI同士の戦いに自然と拳を握り込んでいた。


 スキルが解けガクンをキッカの体が崩れる。それを支えたのは主である流星によるバフ。彼の計算通り無ければ終わっていたと肌で感じられた。


「キッカ」


 肩に手を置いたルフにキッカはハッとしたようだ。


「うむ、ゆくぞルフ。わしの主が示してくれた通り合わせてくれ」


「了承済みだ。必ずあの仇を射抜く」


 剣呑な光を宿したルフの瞳に口元が引き攣るキッカ。


「高峰は死んどらんのじゃが」


 ただ気持ちはわかるとキッカは駆けだした。流星が死んだ時、深い喪失感を味わった。あまり考えたくないがきっとそうプログラムされているのだろう。サポーターが

 プレイヤーの言いつけを絶対に守るように。


(無駄な事を考えるでないわ。あやつのように楽しめ。絶対に勝つために)


 キッカはずっと悩んでいた。主である流星と冒険を重ね、あれが只者ではないと理解した。己の主だからちょっと高く見てしまってる分もあるかもしれない。


 でも、あれは必ず上に行くだろう。そしてその時キッカが弱いままだったら……捨てられないにしても彼の足枷となると理解した。


 だから、欲望を押し殺しサポ収納の中で彼女は訓練した。彼の動きと技をひたすら観察し続けた。全ては彼の横に並び立つため。その気持ちが例え作られたものであったとしてもそれが何だというのか。そう、ロシューの言う通りである。


 やりたいからやるのだ。


(サポーターが弱い?サービス終了がある?)


「だからなんじゃ。踏み越えてみせるわ。サポーターに物語がないというのならわし自身が紡いでやるのじゃ」


 そしてキッカは職玉を握りつぶす。選んだのはやはり主と同じ剣士。紅の衣を纏い主人とは違う刀を抜き放った。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 紅刀サザメ ランクD  柊テトラ作

 僅かだが炎属性を含んだ魔法の刀。魔剣としての力は無く、持っていると若干火照った気分になる。鈴は製作者によって付けられたものである

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

「『一刀閃火』じゃ」

 赤き瞳が爛々と輝き、幼女の体が疾駆する。笑みを掲げたその動きはまさに桂木流星そのものであった。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 座って映像を見ていた俺はガタっと立ち上がった。高峰も呆けたように映像を凝視している。


「桂木こいつはっ」


「人……まだまだとはいえやっぱりAIが人の域に踏み込み始めてる」


 グレゴア戦の時、キッカは最高のタイミングでスキルをぶち当て黒騎士を押し出してみせた。やっぱり、あの時の気配は間違いじゃなかったと確信する。ルフさんのサポートによってキッカが壁に向って飛び、彼女の叫びが画面越しに響いた。


「剣術スキル十式」


「マジかよ」


「言っただろあいつらサポーターは人を真似るのが上手いって」


 着地を決めたキッカがアドラーをねめつけ──


「『空閃っ」


 聞いたアドラーが嘲笑った。


「その技はもう一度見た。植璧の前では通用せんぞ小娘」


 放った巨大な斬撃へキッカが消えるが角度的に二撃目は届かない。だが、それもわかっているとアドラーが絶望を煽った。


「そこのエルフのスキルだろう?グラムニュートっエルフの矢を叩き落とせ」


 撃っていたルフさんの矢を叩き潰し、勝利を確信したとアドラーが叫ぶ。


「さあグラムニュートそこに小娘が出るぞ押し潰……せ?」


 彼が止まったのはルフさんを見たからだろう。彼は二つの弓デュアルボウを片手で突き出したままという不可思議な態勢で止まっていたから。


「私のスキルを説明していなかったなマスターの仇よ。私の極射転空は打ち出した矢に転移するのではない。範囲内にある私の矢であればどこにでも転移が可能だ」


「っ」


 アドラーは足元にあった布石を見てその場から離れようとするが


「遅い。弓術五式『極射転空』」


 ルフさんのスキルによって着地を決めたキッカが植璧の内側に入った。彼女は小剣を逆手にもって裏拳で一撃を解き放つ。


(決めろキッカ)


「マギア』じゃっ!」


 そしてキッカはアドラーの心の臓を捉え、その身を弾けさせたのだ。人の手が加わっているとはいえサポートAIによって描かれた完璧な勝利が映し出されている。


 ぐったりとアドラーは倒れ伏し、茨棘竜は操られていたと言わんばかりに逃げ出してしまった。鳴り響く勝利音楽がこの戦いの終わりを告げた。


「うおおおおマジでやりやがったぞあいつら」


「ああ」


「んだよ。寒めてんじゃねえぞ桂木」


 俺は高峰にヘッドロックを決められ、慌ててタップする


「分かったって、お前背低いんだから首根っこ。ぐえっ首締まる」


「締まるわけねえだろゲームなんだから」


「何してるんじゃお主ら?」


「え?」「え?」


 レイド戦と違って、通常PTなら倒したらその場に戻るようだ。俺達はバっと離れ、ジイイイっとつぶらな瞳で見てくるキッカの前でオホンと咳をうって誤魔化した。そしてそんな高峰の前にルフさんが跪づく。


「貴方を死なせてしまいました。マスターどのような罰も覚悟の上です」


「いや、何で勝ったのにどいつもこいつも喜ばねんだよ。罰とかねえよ。んなしんき臭い顔すんなルフ。そうだな罰っつうなら笑っとけ」


「了解です」


「え?何お前まさかそれ笑ってんの?どう見ても無表情なんだが」


 背を向けてるためルフさんの顔が見えない。ちょっと気になると思った俺の裾をクイクイっとキッカが引っ張った。そして上目遣いの褒めてアピール。こういうところはしっかり幼女やってるキッカである。俺はクシャクシャと撫でてやった。


「よくやった。凄かったぞキッカ」


「んふーなのじゃ」


 が、彼女の頭をナデナデしつつもやっぱり考えてしまう。確かに俺はこのAIの高性能が新時代の対人を切り開く狙いであると語ったが運営の意図は本当にそれだけなのだろうかと。


(つってもゲーム運営が黒幕とか流石に太一に借りたアニメの見過ぎか)


「稀人」


 ロシューが杖をついてやってきた。どうやらこれでこの国も完全なエンディングを迎えるらしい。俺は浮ついた思考を切ってこの浮遊国家の結末に集中するのだった。

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