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土竜族の守り人アドラー 【裏】

 その横穴はやはり彼が土竜であることを証明するかのように粗削りでダンジョン八蛇洞窟を思い出す造りになっていた。何というかあの庭園には似合わない穴で、どうして彼はこのような場所を掘ったのだろうかと首を捻る出来栄えである。


「薄気味悪い場所じゃな」


「ああ」


 洞窟の壁はあちこち爪で引っ掻いたような跡があって不気味。そして、薄暗いため炭鉱ランプを使う羽目になった。土竜族は闇目が利くため前を歩くロシューの背中が照らされる。


「見てごらん。王家の者が傍に仕えさせるゴーレムだ」


 壁際に並んでいたのは一際大きく絢爛な見た目をしたゴーレムだった。


「一般のとは随分違うんだな」


「そりゃそうさ。王族の警護も兼ねていたからね。まあもうこいつらは必要なくなったわけだけどね」


「これ動き出したりしねえのかな?」


 そういってコンコンと叩く高峰に俺はジト目を送った。


「おい止めろ高峰。フラグ立てようとすんなって」


「稀人、フラグってなんだい?」


「んー人間の掟みたいなもんだ」


 ◇◇◇


 そして俺達は光のある場所に辿り着いた。小さな植物園といった感じで上は大穴で空が見え、土壁が茨のような触手で覆われている。


 そして明らかにボスであろう大花が萎れていた。その横で植物を模した杖を持って座り込む人影。もはや言うまでもなくアドラー。


「キッカ」


「うむ、鑑定一式プレディクトアイズじゃ」


 初手、話す前から鑑定を掛ける。キッカのスキルによってPTに情報が共有された。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 アドラー 土竜族の守り人 LV???

 ギリシア神話の神、アトラースからその名をもじっている。アトラースのように巨躯ではないが彼もまた天空を支え続けた。支え、耐え、歯向かう者の意味が込められている。

 エルフの血が混ざり長寿。彼は始祖から生き、土竜族の守り人に選ばれ

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


「やはり稀人か」


【固有スキル:震感】


 ギロリとアドラーに睨まれる。泡立つほどの悪寒が突き抜け、更にガシャンっとメニューが砕け散った。


「!?」


「なっ」


 メニュー画面は開く。けれど、情報が鎖で繋がれ動かない。


「そして……あの時の小僧がやはり王となったか」


「アドラー……ずっとお前に聞きたかったことがある。お前は知っていたのではないか。私がここで土竜族の真実を知ったあの時。そのずっと前から私が王に至ることを」


 そうだ。彼も土竜族であるならば見ていてもおかしくない。くっははっと乾いた笑い声を上げた老齢土竜アドラーは黒ずんだアルカナハートを見せつけた。


「アドラーそれは一体」


「いえいえ、ロシュー王。別に使えないことはない。これは少し抗っただけのことだ」


「抗った?」


「定められし過去」


 そしてアドラーは俺達に目を移しニヤッと口角を上げてこう告げた。


「貴様からすればシナリオと呼べば良いか稀人」


 ゲームのキャラとは思えないほどの迫力。でも、ゲームだ。既にここをクリアした者達はこの話で大盛り上がりだと聞いた。


「ロシュー王。私は見た。貴方が王の衣を纏い何者かを連れて私と対峙する姿が。引きつれた者達は黒く塗りつぶされていたがすぐに分かった稀人だと」


「アドラーお前は逃がしてくれたのではないのか?共に手を取り合えるのではないのか?土竜族の未来のために」


 ロシューは手を伸ばすがアドラーは首を振った。


「王よ。私は貴方を何度も殺そうとした」


「っ」


「だが目の前にすると嘘のようにさっぱりと全ての憎しみが立ち消えるのだ。そして今は消えない。つまり企みし者の思惑に至ったということだ」


 バキッと折れた杖をアドラーは地に叩きつけ、フーフーと息を荒げる。


「アドラー……」


「私は憎い。狂おしいほどに憎らしい。目的のために土竜族を弄び、この体を与えた神が憎くてたまらない。私が何年支えたと思っている。その救いすら神の企みだというのならああそうだ。壊してしまえばいいのだ。何もかも」


「アドラーっ!!ダメだ。呑まれるな」


 ロシューは必死に叫ぶが届いていないとアドラーの顔から表情が消える。


「王よ。新たなるモグラの王よ。最後に聞きたい。お前は何故憎しみを抱かない。このモグラの苦しみは嘆きは」


 そしてアドラーは俺達を指さし続けた。


「あれを楽しませるためとお前も理解しているだろう」


 シンとする。ロシューは大きく息を吸ってその問いに答えた。


「理解してる。正直言えば稀人を恨んだこともあった」


 ぎょっとする俺達にニコっと笑ってロシューは杖をつきながら前に出た。


「けれど、彼らに悪意はない」


「悪意がなければ何をやってもいいと?」


「彼らが僕らを傷つけたわけじゃない。彼らは傍観者であって加害者ではない。更に言えば話してみれば気のいい奴らさ。パラシス様の言う通り彼らは精霊のようなもの」


「……」


 求めた答えではなかったのだろうギリっと歯ぎしりしたアドラーをロシューは見据えた。


「アドラー、君が天を憎む気持ちは痛いほどわかる。そして、抗おうとするのは私も同じ。だからこそ聞きたい。何故、神を憎むお前がその神の力に縋っている」


 アドラーのアルカナハートを持つ手が震えた。


「そのアルカナの色。抗ったからじゃないだろう?使い過ぎたんだ。お前は長寿であるからそれは仕方がないことだったのかもしれない。でも、お前は未だそれを持ち私は捨てた」


「アルカナハート。そんなことで定められし運命から逃れられると?」


「勿論思っちゃいない。だがアドラー、お前は本当にあらゆる手段を試したっていえるのか?」


「何?」


「確かに私たちは途方もない力によって御されている。でも、例えそれがどれだけ万能なる者に編まれたものであったとしても私は必ず抜け道があると信じている」


 そしてとロシューはアドラーを指さした。


「ここまで洞穴を繋いでくれたのは紛れもなく貴方だアドラー。例えそれが神の意思であろうと、私がここに立っているのはお前がいたからだ。神の企み?だから何だ。果たしたのはアドラーだ。その事実だけは誰にも文句は言わせない。操り糸に繋がれていようと手を動かしたのはその人形なのだ。よって予が王として認めるアドラー・ドガティスの功績を」


 枯れた井戸から僅かな水が沸いたようにひび割れたアドラーの肌を一滴の涙が流れた。けれどそれ以上は涙は零れず眩しいと言わんばかりに彼は目を細めた。ロシューは拳を握り込んだ。


 例えその爪が彼の手を傷つけようとも。強くいっぱい力の限り。


「そしてその正しさを証明してみせよう。神の調律だろうが戒律だろうが同胞の未来に立ち塞がるというのなら予が絶対に堀り破いて見せる。このロシュー・ドガティス・ドラゴニアがお前が通ったその道を抜けた天の光で満たしてやる」


 そんなロシューの口上にアドラーは薄く笑みを浮かべて返す。


「ふっ若い若いな新たなる王よ。意思の力で何とかなると思うならまだまだ青い。だが……そこまで申すなら力を示してみろ。私が届かなかったものに届くというのならなっ!」


「くっ」


「ロシュー!?」


 突如としてアドラーが杖を振るったかと思えば、壁に生えていた茨が動きだしロシューを縛り奥へと連れ去ってしまった。俺達は追いかけようとしたが茨が回転するように覆って塞がれてしまった。


「安心しろあれは死なん。王の試練を受けて貰うだけだ」


 もっとも殺そうとしても死なんがなと言うアドラーの背後で植物がゴゴゴゴゴっと動き始める。


「私は神を恨んでいるが土竜族を愛している。例えその感情が作られたものであったとしてもだ」


 巨大植物の顔が見え、ギンっとランプの目が灯った。それは植物の龍。ぐるんとアドラーに巻き付くようにその身を展開させてゆく。


「私はもう役目を終えた。抗う気力も失せた。だから乗ってやる。戯れようではないか稀人。例えお前たちが不死であっても私を倒さねばドガティスは落ちるぞ」


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAI!!!」


 ≪ドラゴンロア≫劈くような咆哮が植物龍から放たれ、ステータスが低下した。


 ◆───-- - - -            - - - – --───◆

 茨棘竜しきょくりゅうグラム・ニュートLV19 土属性

 魔法で生み出された生命体。暗い洞穴に住むことを好み、迷い込んだ獲物を喰らう。土竜族の魂を過分に取り込んだことから竜化した。

 四方八方から繰り出される攻撃を回避するのは困難。

 +

 竜を纏った守り人アドラー  魔導士 LV???

 ◆───-- - - -            - - - – --───◆


 壮大な曲が流れ気分を盛り上げてくれる。


「キッカ、ルフさん、高峰……行くぞ」


「おう」「のじゃ」「了解した」


 遂に最終戦が始まったと俺はガギア・ブレードを抜き放ち剣についたギアを回したのだ。


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