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キッカの気づきと守り人の部屋

 ちょっとシンとしてしまった。つい気合いが入り、これはドン引きされたかもとビクついたが、高峰の視線は真剣だった。


「桂木、それ違ったらすげえロスだぜ」


「でもそうするって決めちゃったしな」


「それにそれまだずっと先の話だろ?」


「そうだな。ただ、やる奴はもう動く。そいつらに負けたくねえしな」


 何より俺はキッカを気に入っている。まあ幼女なのがあれだけどと俺はぐーっと伸びをすると、その肩をバンっと高峰に掴まれた。


「なあ桂木。まだアドラー戦まで時間あるよな?」


「ん?まあちょっとだけならもう行かねえと活動限界時間だぞ?」


「この話權田さんにしてもいいか?」


「それは別に構わねえけど隠すようなもんじゃねえし」


 よしっと彼はポンポンと叩く。


「すぐ戻るから先行っててくれ。桂木、お前やっぱ変態だわ」


「は?」


 そういって出ていく高峰にどういうこっちゃと呆けた視線を送る俺。


「何か唐突にディスられたんだけどどゆこと」


「流星お主変態なのかの?」


「……キッカお前が言うと話変わってくるからマジで止めれ」


 淡々と見てくるルフさんの視線が痛かったとだけ書いておこう。

 高峰と一旦別れ、俺とキッカそしてルフさんで先にロシューの元へ向かう。ルフさん

 とというかマスターと離れた他人のサポーターと一緒になるのはこれが初めて。って

 か高峰もサポ収納に突っ込めばいいのにと思いつつ彼に話しかけてみる。


「えっとルフさん」


「何でしょう幼女キッカのマスター」


 まともに話したのも初めてだったと思い至る。まさかそんな名前で呼ばれていたとは……。


「あのできれば幼女を外していただけると」


「了解した。キッカのマスター」


 キッカと違って素直だ。しかし、サポーターでここまで性格が違うとは驚きだ。


「お主失礼なことを考えておるじゃろ?」


「はい」


 うおおなんじゃああ──やんのかあああっと互いに指で頬を押せば、ルフから呆れた声が鳴った。


「キッカ殿から聞いた通り、本当にそういう関係なのですね。貴方たちは」


(え?どういう関係?)


 って思ったが怖くて聞けなかった。キッカは腕を組みふっと鼻で笑った。


「羨ましいかの?」


「いえ、私はマスターの要求に応えることにしか興味がありませんから……ただ」


「ただなんじゃ?」


 少し言いずらそうにルフさんが目を上にあげて俺を見た。


「桂木流星、さっきの貴方の話は面白かった。マスターの世界のことには興味があ

 る……と思う。できれば色々話を聞かせて貰えると嬉しい」


「いいぜ。着くまでの間でいいなら今でも」


「恩に着る。幼女のマスター」


「ルフさんそれ考えうる最悪の呼び名になってる」


 目的地が近かったため言葉を交したのはほんの束の間だったが、ルフさんとちょっとだけ仲良くなれた。高峰が彼をおいていったのも多分きっとそれを意図したものだろう。


 ルフ、キッカを連れて俺は王城へゆきロシューの部屋へ赴いた。ロシューは着せ替え人形のように二匹のモグラメイドに着付けられている。


「入って大丈夫なのかこれ」


「構わないよ。全くまだ正式な王じゃないってのに」


「コウカ様にご命令を受けました。諦めて下さいロシュー様」


「そうですロシュー様お似合いですよ。でも、その帽子が無ければもっとお似合いですのに」


「駄目だ駄目だ。これはいつ如何なる時でも身に着けると決めた。君たちも被るべきだって思うだろ?稀人」


「ん?まあ俺らからすると特徴ないと全員モグラに見えるから、そういうのあると認識しやすくて有難いな」


「おい、いくら何でも失礼じゃないかそれは?私は王なんだぞ」


「まだ正式じゃないんだろ?」


「……」


 俺がそう言えばロシューはぶすっとした。それを見てメイドの一人がクスクスと笑う。

「まあ、稀人様の方が上手ですわね。ロシュー様、王になられぬのですからもっと威厳をもつように」


「もうわかった分かったから。君たちは出て行ってくれ。私は彼らと話があるんだ」


 きゃーっと出ていくメイドにロシューは深いため息をついた。何だかこれから王様として苦労するロシューの姿が目に浮かぶようだ。


「さてと君の事だからもう気づいていると思うけど」


「ああ、一通り城内の人には話しかけた」


 理解してると伝えればロシューは窓際に立って外を見つめた。


「アドラーのこと誰も覚えちゃいない。いや、全くというわけじゃなくて彼は偉大な故人ってことになってる。まだ……この城に現存しているにも関わらず。これではまるで彼が役目を終えたと言わんばかりだ」


 恐らくそれは俺達が依頼を受けずに進んでも整合性が取られるようになっているから。プレイヤーがこの依頼を受けるまでアドラーはあの部屋で誰にも見つかることもなく待ち続けるのだろう。裏ボスとして彼が処理されるその時まで。


 これをロシューに伝えるのはやめておいた。流石にここまではいいだろうと。彼は続ける。


「私だけが記憶に留められているのは授かった称号によるものだ。力を感じるんだ。始祖達に守り人を頼むと言われた」


「行くのか?ロシュー」


「ああ、君たちの準備は整ったかい?一人いないようだけど」


「高峰なら遅れてくる。扉の前で待っててくれってよ」


「そうか……なら行こう。土竜族の救世主アドラーの元へ」


 ロシューの言葉に俺達は頷くのだった。


 アドラーの部屋へと続く巨大な機械仕掛けの大扉。そこはアルカナハートによって見た過去のものと寸分たりとも違わない。その技巧を凝らした造りは中にいる者の技術力の高さと人を寄せ付けようとしない茨のような意思を感じさせた。


「悪い遅れた」


 見入っていれば、そこに高峰がやってきた。


「早かったな?どんな感じで合流するんだ?」


「一応ムービーはみれるっぽいな。今回はルフから大体は聞いたし、大した内容じゃなさそうだしってことでスキップした」


「稀人、そのスキップというのは?」


「んーお前らから見れば時飛ばしみてえなもんかな」


 そう肩を竦めて応えた高峰にロシューはちょっと引いた視線を送った。


「君たちホント無茶苦茶な存在だね」


「ほら、行こうぜ。そろそろ時間がヤベえ」


「お主が遅れたせいじゃろうが」


 キッカの言う通りだが、プレイ限界時間が迫っているのも事実。急いでロシューに扉を開いて貰って俺達は中に入るのだった。


 ≪土竜族の守り人アドラーの部屋≫


 表記を見て場所の名前を確認した俺は部屋の中を見渡した。いや、これを部屋と呼んでいいのか。まさに庭園で天井は大空が広がっていた。


 ただ、よく見れば継ぎ目が見え、上には映像ディスプレイが敷き詰められていると理解できる。そして当の本人アドラーはいない。


「んだよいねえじゃねえかよ」


 高峰が見るのは噴水の向こう側にあるアドラーの研究机。ゴーレムの残骸と道具が散らかっていた。その一つを手に取ったロシューが壁に空いた穴に鼻を向けた。


「いる。ゴーレム保管所に彼はいるようだ」


 それはかつてロシューが呼ばれようとしていた場所だった。彼の案内に従って進みだせばキッカが声を掛けてきた。


「のう流星」


「ん?」


「これは特に意味がないことかもしれんのじゃが」


「何だよ?」


 ひそひそと彼女が話すため俺は軽く屈んで彼女の声に耳を澄ます。


「お主はグレゴアとの闘いを覚えておるか?」


「グレゴアっつうとストラージュの裏ボスだろ?それが?」


 うむっとするキッカになんだなんだと眉間に皺が寄る。


「あれでわしらは黒い騎士を相手どったじゃろ」


「あー有栖川と闘った奴な」


「あれが守り人であったという可能性はないじゃろうか?」


 キッカの言葉にピタっと思考が止まる。確かにあれはよくわからない相手だった。その昔、龍のマスターであったみたいな情報がステータスに書いてあった記憶がある。

 それにグレゴアも元竜で迷宮を纏ったドラゴンゾンビという説明があった。


「あり得ねえってことはないと思う。でも、だからっていう話で」


「うむ、現段階ではだからどうしてじゃ。ただ気になったんじゃ。守り人守り人というが奴らは一体何から何を守っておるのじゃろうとな」


 確かにと軽く指を噛み締める。深く考え込むときの癖がでた。が──


「おいっ!お前ら何止まってんだよ!」


「わかってるって。すぐ行く」


 今それどころじゃないとやめておく。まあ、それに答えはでないだろうとキッカの頭をクシャクシャっと撫でてやった。


「お前俺より賢くなったりすんなよな」


「なら勉強することじゃな。サポより頭弱いマスターとかカッコつかんのじゃ」


 ぐっ……確かにキッカの言う通り。でも勉強は嫌いと俺は唸るのだった。

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