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5.契約士、スキルとジョブを新たに獲得して奴隷商館に行く

5話目です。


はぁぁ、疲れた……。


ではどうぞ。



<あっ、余ったんでしょうかね? ミナト様と同類の方ですか?>



 こ~ら、サポートちゃん。

 あんなのと俺を一緒にしないの!



 シルゼ・ガイアス。

 

 この名前は聞いたことがあった。

 優秀な契約士を数多く輩出しているガイアス家の次男。


 B組の顔がアレスティーとすれば、A組の有名人はこのシルゼだと。

 


 燃えるように赤い髪をかき上げて笑い、こちらを見下した顔をしている。

 

 

「はんっ、無能はどう転んだって無能なんだ。さっさと才能の無さをわからせて自主退学させてやるってのも、貴族様たる俺の務めってもんよ」

 


 そこでシルゼはチラッとアレスティーの方を見やる。

 アレスティーはどうなってしまうのだろうとハラハラ顔で、その視線には気づいていないご様子。

     

 ……まあアレスティーは可愛くて人気者だし、思春期男子なら気になるよね。



<は? ミナト様は既に【才能○】持ってますが何か? その仕草、かっこいいとでも思ってるんですか? 勘違いも甚だしいですね、一回ご実家に帰って鏡を見てから出直してはいかがでしょう?>



 サポートちゃんお怒りのご様子っ!?

 そして凄い毒舌だ!

 

 ……ま、まぁまぁ。

 演習の相手をしてくれるっていうんだし、落ち着いて。



「ほらっ、そこ。相手が決まったならさっさと準備しろ。時間は有限、老いは待ってくれないぞー」



 リィーナ先生の謎のせっつきもあって、サポートちゃんを心中で宥めながら何とか移動。


 前半と後半に分かれ、半分のペアは最初は見学。

 俺は残念ながら前半組なので、他のペアと適度に距離を取りつつシルゼと相対する。



「プチっと捻り潰してやるよ、ゴロワームみたいにな」



 ゴロワーム……。

 スライムと並ぶ、Gランク冒険者が最初に乗り越えるべき雑魚虫モンスターと同視していただけたようです、ありがとうございます。

 

 ……俺、確かに従者なしだけど、そこまで弱く見えてるのかぁ。


 全員が魔力結晶を体に付着。

 今回は魔法で相手の魔力結晶を破壊すれば終了となる。


 ……って言っても、戦闘用の魔法なんて大したのは使えないんだよなぁ。     


 スキルにすらなれず、名前の付かない、ただの魔力を練った弾だけだ。

 飛距離も殆どないし、どうしたものか……。



<ですが“魔法で魔力結晶を破壊すること”以外は、特に条件付けはないんですよね?>



 開始直前、サポートちゃんから思わぬ確認がなされた。

 確かにそうだけど、それがどうかしたのかと首を傾げる。



「――始めっ!」



 そしてその疑問を深く掘り下げて考える間もなく、演習が始まった。



「死ねやっ! ――【火撃(ファイアショット)】!!」 



 同時に、周囲で魔法の打ち合いが始まる。

 シルゼも素早い詠唱の後、おそらく得意技だろう魔法を放ってきた。


 

 ――ってか“死ねやっ”って何!?


 

 この場で人殺しするの!?

 流石にそれやると君もただじゃ済まないけどいいの!?


 退学覚悟までして殺そうとするとか、俺どんだけ目障りな存在なんだよ……。


 

「うわっと!?――」 



 飛んできた直径50㎝程する火の塊をひょいっと横に跳んでかわす。

 ……あれ?

 


「ちぃっ! ――【火連弾(ファイアバレット)】!!」



 更に熱の球がどんどん放たれる。

 だがそれも傍を通過するだけで、俺や魔力結晶に触れることはない。


 ……あれれ?



「クソがっ! 避けてばかりで、卑怯者がっ!」 

   

   

 演習で相手に“死ねやっ”とか言っちゃう人に言われたくないんだけど!


 次々と襲い来る火弾。

 だがどれもこれも、特に危ないと思ったものはなかった。


 ……あれれれ?

 


<凄い回避能力です……。敏捷値を大幅に上昇させた効果がこれでもかと発揮されてますね、フフフ>


 

 あっ、そうか、それか!

 ……ってか、凄いドヤ顔してそうですねサポートちゃん。



 だがこれで勝ち筋が頭に浮かんだ。

 さっきサポートちゃんが確認してきた『“魔法で魔力結晶を破壊すること”以外は、特に条件付けはない』という点がヒントになっていた。


 別に演習だし勝つ必要性はないが、勝てると分かったのをワザと負けてやることもない。



「こんのっ!――」



 なかなか仕留められない俺にシルゼが焦れたのか、今まで以上に長い詠唱を始めた。

 それを見逃さず、俺はまっすぐ前にダッシュ。

 

 登校の際にはセーブしたが、今回ブレーキは一切せず。

 全速力だ。



「なっ――」



 一息で、相手との距離を一気に詰め切った。

 シルゼが驚愕の表情を浮かべきるその前に――



「俺の勝ちだっ!」



 掌を突き出し、ほぼ0距離から魔力の弾を放出。

 パリィンッ。


 シルゼの胸についていた魔力結晶が、見事に割れたのだった。



[戦闘に勝利しました。経験点を獲得しました。内訳 技:+5 魔:+10 センス:+5]

   


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……こ、こんなのマグレだっ!」



 しばらく放心していたシルゼだが、突如我に返ってハッとしたように叫ぶ。



「これはただの魔法の演習だ! ただテメェはすばしっこいだけだろうが、それで何になる! 契約士は従者ありで戦ってこそ真価が発揮されるんだよ!」



 ……別に何も言ってないのに。

 シルゼの口からは次から次に自己擁護の言葉が出てくる。


 いや、うん、その通りだと思うよ?

 そうそう、全部社会が悪いよねぇ~。

 

 まあ真面目な話、俺も従者は何とかしないとなぁとは思ってる。

 シルゼの従者は一級品揃いだってこともよく耳にするしね。



「認めない……俺は認めないからな!」



 だが憎悪すら感じさせる捨て台詞を何度も口にし、シルゼは離れていった。



<あっ、ちゃんと演習場には残ってるんですね。授業中に勝手にいなくなったりはしない辺り、育ちの良さは(うかが)えますが……>


 

 そうだね。


 従者ありの正式な試合だと、今みたいに上手くはいかない。

 それはそれで正論だと思うし。



<――とにかく、ざまぁ~! あれだけ大口叩いてたのに返り討ちに合うって、どんな気持ち? ねぇどんな気持ちなんですか?>



 いやサポートちゃんいきなり性格悪っ! 

 実体がない以上顔も想像でしかないが、可愛らしい少女がニタァっと悪い笑みを浮かべて煽っている様子がイメージされた。


 ……まあ俺もちょっとはスカッとしたけどね。


 

 その後、他のペアも続々と模擬戦が終わり、前半組と後半組が交代することに。


 見学とはいうものの、実際には休憩時間だ。 

 素早く隅っこに移動する。


 条件ありとはいえシルゼに勝ったということで周りからの視線を少し感じた。


 しかしそれも最初だけ。

 後半組の試合を律儀に観戦したり、組んだペアの相手とおしゃべりに興じたりと、俺への関心は直ぐになくなった。



「っし。今の間にっと――」




[能力UP] 


“スキル HP上昇”

 HPが少し上昇します


保有経験点 力:692 技:1053 魔:1316 センス:774


必要経験点 

力:30(才能○→力:27) 

技:15(才能○→技:13) 



●スキル


【HP上昇】 MP上昇 筋力上昇 耐久上昇 魔力上昇 魔法耐久上昇 器用上昇 敏捷上昇 身体能力上昇 状況認識 ステータス操作 火魔法 水魔法 土魔法 風魔法 体術 剣術 槍術 柔術 投術 斧術 杖術 弓術 盾術……セカンドジョブ……



●ジョブ


村人 農家 戦士 魔術師 商人 神官 弓手 盗賊 学生 兵士 拳士 盾使い 遊び人 木工師 鍛冶師 薬師 冒険者……

 

  


 さっきの戦闘で成果もあったし、課題も見つかった。

 基礎能力値のさらなる改善はもちろんのこと、スキル取得も検討すべきだろう。



 画面には無数とも思えるほどに多くのスキル・ジョブ項目が出現している。

 しかし能力値の場合とは異なり、“取得できるもの”と“できないもの”がある。


 取得できるものは契約(コントラクト)(ボード)の使用可能マスのように光っている。

 一方ダメなものは影が差したように薄暗かった。



[能力UP] 


“ジョブ 魔術師”

 魔法を扱うことができる魔術師のジョブを習得します


保有経験点 力:692 技:1053 魔:1316 センス:774


必要経験点 

技:35(才能○→技:31) 

魔:70(才能○→魔:63)

センス:35(才能○→センス:31)



※注意:既に他のジョブを習得済みです! ジョブ“プレイヤー”を破棄し、習得することになります



●ジョブ


村人 農家 戦士 【魔術師】 商人 神官 弓手 盗賊 学生 兵士 拳士 盾使い 遊び人 木工師 鍛冶師 薬師 冒険者……




 あっ、そうなんだ……。

 ジョブの項目をタッチすると、能力値やスキルの時にはなかった“※注意”という文言が出る。

 つまりこれ以上重ねての取得は無理だということか。


 当たり前といえば当たり前だ。

 せっかく手に入れた“プレイヤー”のジョブを捨ててまで、わざわざ魔術師になりたいとは思わないので諦める。



<いえ、ミナト様。諦める必要はないかもしれませんよ? “スキル欄”の“セカンドジョブ”というスキルをご覧ください>



 サポートちゃんに言われて、今一度スキルの方に目を通す。

 そして言われたスキルがあり、それが光っていたのでタッチしてみた。




[能力UP] 


“スキル セカンドジョブ”

 二つ目のジョブを習得できるようになります


保有経験点 力:692 技:1053 魔:1316 センス:774


必要経験点 

力:50(才能○→力:45) 

技:50(才能○→技:45) 

魔:50(才能○→魔:45)

センス:50(才能○→センス:45)



※条件:上級ジョブ、あるいは特殊ジョブを取得済み


●スキル


……【セカンドジョブ】……




 あっ、本当だ。

 ……必要経験点エグいな。


 ってか【才能○】ここでも機能するのか。

 20ポイント分も節約できるとかこのスキル有能かよ。


“条件”もあるが、結局光ってるってことは“プレイヤー”が上級ジョブか特殊ジョブかのどちらかなのだろう。



「じゃあこれを取って、と――」



 獲得を確定させると、ステータスに早速このスキルが反映されていた。




[ステータス]

●基礎ステータス



ジョブ

①プレイヤーLv.1

②――(new!)


●スキル

契約魔法Lv.1 プレイヤーサポート ステータス操作(マニュアル)Lv.1 才能○ セカンドジョブ(new!) 

    


「これで、ジョブを取れるんだな――おっ、消えてる消えてる」



 先ほどはあった『※注意:既に他のジョブを習得済みです! ジョブ“プレイヤー”を破棄し、習得することになります』という一文が無くなっていた。



<これで二つ目のジョブをゲットできるようになりましたね。どうされますか? 魔術師を入手されます?>

 


 うーん。

 別に魔術師自体に強い拘りがあるって言うほどではないんだよなぁ。


 さっきの戦闘でも魔法の才能の差で勝ったっていう感じじゃなかった。

 それより運動能力で上回って、それで押し切ったと思ってる。

 

 つまり、今の自分は前衛向きなんじゃないかと感じたのだ。



<ではそちらを伸ばすジョブですかね? “兵士”、“戦士”……――あっ、“冒険者”はどうです?>



[能力UP] 


“ジョブ 冒険者”

 肉体的にタフで、様々な可能性を秘める冒険者のジョブを習得します


保有経験点 力:647 技:1008 魔:1271 センス:729


必要経験点 

力:100(才能○→力:90)

技:50(才能○→技:45) 

魔:35(才能○→魔:31)

センス:50(才能○→センス:45)



※条件:登録料として総経験点200ポイントを支払う


●ジョブ


村人 農家 戦士 魔術師 商人 神官 弓手 盗賊 学生 兵士 拳士 盾使い 遊び人 木工師 鍛冶師 薬師 【冒険者】……




 へぇぇ~。

 良いじゃん。

 

 現実の今生きているこの世界で、収入を得るために就く職業としての“冒険者”ではなく。

 ステータス上の、システム“ジョブ”としての“冒険者”か。


 説明を読む限りは身体能力の向上も期待できそう。

 

“プレイヤー”の方向性について助言してくれるサポートちゃんの提案ということもあり、このジョブをゲットすることにした。




[ジョブ【冒険者】の獲得には、“総経験点180”を登録料として支払う必要があります。支払う経験点を入力し、配分を決めてください]



 サポーターちゃんとは別の、完全に無機質な音声。

 それが聞こえた後、新たな画面が出現する。



  

[条件]  


力→□□□


技→□□□


魔→□□□


センス→□□□


残り:180



「これで、合計200――あっ、180にすればいいんだな」


<はい。【才能○】のおかげですね。右の四角が1の桁、真ん中が10の位です。左は100の位ですね>



“技”と“魔”の経験点が他二つより多かったので、この二つから90ずつ出すことにした。

 



[――ジョブ【冒険者】を獲得しました。それに伴いスキル【冒険者ランク】【クエスト閲覧】を獲得しました]


 


[ステータス]

●基礎ステータス



ジョブ

①プレイヤーLv.1

②冒険者Lv.1



●スキル

契約魔法Lv.1 プレイヤーサポート ステータス操作(マニュアル)Lv.1 才能○ セカンドジョブ 冒険者ランクLv.1(new!) クエスト閲覧Lv.1(new!)

    


保有経験点 力:557 技:873 魔:1150 センス:684



「よし――」


「――おい、イスミ」


 

 ドキッとした。

 ステータスの更新を済ませ満足していたところに、声がかかったのだ。


 恐る恐る顔を上げると、少し離れた位置からリィーナ先生が鋭い目をしてこちらを見ていた。


 ……だ、大丈夫だよね?

 何してたかはわからないはず……。



「……今日、授業終わりの放課後、私の所に来い。話がある」



 呼び出し受けちゃった……。

 


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



 その後、憂鬱な気分を引きずりながらもちゃんと授業に出席し、下校時間となった。

 俺はしかし宿屋へは戻らず、とある場所へと訪れていた。



「こ、ここが……奴隷商館か」



 ヴァーリリスの町の東街区、仕事場だった迷宮(ダンジョン)がある場所よりもさらに歩いて10分ほど。


 商工業区とはまた別に設けられた歓楽街区に、奴隷商館があった。  

 4階建てで、俺が住んでる宿屋とは比べ物にならないほど外観も立派な建物だ。 


 先ほど学院の敷地を出る前に、先生と交わした会話の内容を思い出す。



『――おい、イスミ。お前、まとまった金入っただろ』



 最初、ヤバいカツアゲと思った。



『バカッ、生徒からたかる教師がいるか。顔つきが以前とは違う。様子を見れば何となくはわかるよ。……お前、奴隷の従者に興味はないか? “契約士専用の奴隷”だ』


『“契約士専用の奴隷”? ……考えたことすらなかったですけど。何でですか?』



 怒られるとばかり思っていたので、面食らいながら尋ね返した。



『イスミ、まだ従者いないんだろ? 食わず嫌いせず、奴隷の従者も選択肢に入れたらどうだ。紹介状は私が書いてやる。買う買わないは決めなくていいとしても、これから一回、行ってみろ』



 そして俺の手には、先生が押し付けてくれた“紹介状”と書かれた紙が握られていた。


 ゴクリッ。



 一度も来たことがない場所だけに、漠然とした緊張感・不安があった。

 だが同時に、奴隷を所有するということは富の象徴みたいなイメージがあって、フワッとした憧れのようなものもあり。


 期待と不安とが混ざり合う複雑な心境のまま、俺は重厚な扉のとってに手を伸ばしたのだった。 



 

早速誤字脱字があって、修正しておきました。

ご報告いただいた方、ありがとうございます!


文字数を単純に見てみるとかなり分量多そうに感じますが、実際にはステータスとかジョブ・スキルとかで1/3くらいあると思います。

ですのでそれを除くとそれほどでもない……はず!


※2話くらい前のあとがきで、ヒロイン5話までには出るって言ってましたが、すいませんまだ出てません!


ですがもう奴隷商館まで進みましたからね、次出ることは確定してますから!

うん、きっと、大丈夫……(震え声)

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