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13.契約士、従者を連れて学院の授業に出席する

お待たせしました。

13話目です。


ふぅぅ……。


ではどうぞ。



「ふぅぅ……お疲れさん。明日からまた学院だから、今日は早めに寝ようか」


「はい、そうですね。ご主人様もお疲れ様でした」



 その後、4階層へと挑んで同様に、モンスター相手に圧勝を収めた。


 出現するモンスターの種類は基本、3階層と変わらない。

 1・2階層、3・4階層と2階層刻みに種類が増えたり変わったりするからだ。

 ただその強さや数は2階層、4階層と下の階の方が強い。


 だからその分注意が必要だったが、ミュゼアのおかげでその心配はいらなかったが。



「経験点……大分増えたな。早めに終わって帰ってきたはずだが、もう少し行けたかも」


 

 ゴブリンを8体、コボルトを10体、そしてボーンソードを7体。

 それらを討伐し終えた俺たちは、まだ余裕はあったが早いうちに探索を切り上げた。


 そして明日からの学院に備え、ゆっくり体を休めたのだった。

   


【ミナト・イスミ】

保有経験点 力:188 技:455 魔:219 センス:379     



【ミュゼア】

保有経験点 力:28 技:23 魔:28 センス:19  


 

□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「んっ、んん~っ――うふぅぅ……さてっと」



 次の日。

 目覚めて朝の準備を早々に終わらせる。

 長く睡眠時間を取ったので、体の疲れも全く残ってない。


 そして余った時間で、気になることを確認する。



[クエスト閲覧] 


[Gランククエスト No.12]


 クエスト名:ジョブレベルを上げよう!


 ●内容:ジョブ【冒険者】のレベルを2に上げる


 ●達成報酬:全経験点+30


 ●クエストポイント:5ポイント


 ●クエスト進行状況……クリア!  




「あっ、やっぱり消えてる――」



 ジョブ【冒険者】のスキル、【クエスト閲覧】で見た達成済みクエストの一つだ。

 まだ報酬を受け取っていないが、間違いない。

 

 昨日と違う点を見つけてほぼ確信したが、念のためもう一つ見てみることに。




[能力UP] 


“スキルチケットGランク”

 能力UPにてスキル獲得の際、経験点50点分とこの1枚を交換できます。 




「こっちも……そうか」



 ジョブ【契約士】のレベルアップ報酬で得たアイテム。

 だがこちらも昨日見た時とは効果が違っている。



「【女神の祝福】は、1日限定なんだな」



 まあ普通のバフ、つまり能力が一時的に向上(アップ)したりする魔法やスキルの効果なんて大体そうだ。

 むしろ1日ずっと続いていたという【女神の祝福】の方が異常な凄さなんだよ。



「……えっと、ミュゼア。【女神の祝福】、1回使ったらもう今後ずっと使えなくなる、みたいなことはないよな?」



 ミュゼアは少し俯き気味で、さらに恥じらいを含んだ表情で小さく頷く。



「……その、はい。おそらくスキルのレベル分だけ、1日1回使用可能、だと思います」



 それが確認できたので良かった。

 つまりまた【女神の祝福】をかけてもらえばいいのだ。


 そうすればモンスターを倒した際の経験点も、アイテムの効果やクエスト達成の報酬も、再び大きく増えることになる。




<要するに、これからは【女神の祝福】の効果を受けるためとの大義名分で、毎日ミュゼア様からのお熱いキッスをブチューっと受けられるってことですね! ニヤニヤ>



 ええい、うるさいうるさい!

 せっかく考えないようにしてたのにっ!!

 

 ってか“ブチュー”とかいうな、生々しい。


  

 ミュゼアが照れや恥ずかしさ交じりに答えていたのも、きっとそれを意識していたからだろう。 



「えーっと、その……」 



 言い辛い。

 凄く言い出し辛いぞ。



 説明通りだと、【女神の祝福】のスキルレベルは1だから、1日に1回が使用可能な回数だ。

 こんなとてつもない恩恵を受けられるスキル、使わないなんて凄くもったいない。


 だがそれの発動条件を考えると、とても口にし辛くなってしまう。

 くっ、これが神から与えられし試練なのか!?


 そうして一人、心の中でああでもないこうでもないと唸っていると――



「――あっ、あの!」



 ミュゼアがまた昨日みたいに力強く前に進み出てきた。

 ……ただ照れや羞恥で顔を真っ赤にしながら、である。



「【女神の祝福】の効果を遊ばせておくのはとてももったいないと愚考します! つまり、毎日使用した方が絶対に良いわけです、ご主人様!」


「おっ、おう」



 見たことないくらいの凄い勢い。

 圧倒され、頷くことしかできない。



「ですから、毎朝、その、キ、キスをすることになるわけですが、スキルを発動するため! そう、スキルの発動はご主人様へのキスができるので大事な効果なわけでして、もう習慣にしてしまいましょう! 忘れてしまってもいけませんし、はい!」


「う、うん、そうだな」



 とんでもない早口。

 どこからそんな熱意が湧いて出るんだというくらい、ミュゼアの押しは強かった。


 何言ってんのか半分くらい分かんなかったけど、思わず肯定してしまったよ。

 

 

<要するに『お慕いするご主人様へ合法的に毎日キッスができて、凄いスキルの効果も発動できる。これをやらずにいられますか! グヘヘ……』ってなわけですねぇ。“エルフはエロフ”。ミュゼア様も意外におませさんだったってことですか> 



 サポートちゃん、凄い曲解してるし……。

 流石にミュゼアにそんな下心ないでしょ。

 それに根暗な(ボッチ)相手だしね。


 ってか“グヘヘ”とか、絶対ミュゼア言わないって。



<はぁぁ~。……まあ、ミナト様がそう思うんならそうなんじゃないですか?>



 うわっ、なんて投げやりな態度!



「で、では、失礼しますっ! んっ――」



 サポートちゃんとのやり取りで現実逃避している間に、ミュゼアの顔、そして唇がすぐ真横に来ていた。


 と思うと同時に、頬に柔らかい物が触れた。

 


 言葉にするとそれだけなのに。

 


「お、終わり、ました」


「お、おう」


 

 それだけで頭が、顔が、とても熱く。

 胸がバクバクとなってうるさい。

 ミュゼアの顔が離れていってしまうのがとても名残惜しいような、そんな幸福な時間に感じたのだった。

 


「……あ、明日も、その次も、これからも。ずっと、その、よろしくお願いします」

  

「あ、ああ。こちらこそ、よろしくお願いします」

 


 お互い気恥ずかしさからか、会って初日のような、とてもよそよそしいペコペコした話し方に。

 視線は合わず、そこから少しだけ無言の時間が続く。


 だがそれが気まずいとは感じず、またミュゼアもそう思ってないだろうと何となくわかった。



 普通は順序が逆だろうが、キスをして、心の距離がさらに縮まったというか。

 主人・契約士と従者としての信頼関係がまたグッと深まったのだった。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「――うわっ、誰だ、あれ?」


「…………」


「すっげぇ美人……」



 学院へとやってきて、演習の時間。

 各生徒の従者が続々と演習場へと入ってきた時、ひときわ大きなざわめきが起きた。



「この学院の生徒も従者も、女子は皆美人・美少女揃いだけどさ……。あそこまでのレベルは初めて見た」 


「演習の時間に来たってことは、誰かの従者ってことだよな?」

  

「アレスティーの所の新入りかな。誰の所の――あっ」



 一瞬で話題の中心となった、件のその少女。

 彼女がこちらへと小走りに駆けてきた時、ざわつきは今日一番の大きさに。



「えっ!? “従者なし”の所に行ったぞ!?」


「はっ、えっ、どういうことだ!?」


「まさかっ、あいつの従者!?」



 正にその通りです、はい……。



「――ご主人様、お待たせいたしました」


「……っす、ミュゼア。お疲れさん」



 もちろん相手は今朝、俺へ【女神の祝福】の習慣化を熱く説いていたミュゼアさん本人である。

 契約士の従者という立場なので、演習に来てもらったのだ。



「学院はとても広いのですね。演習場もこれ以外に2つも所有していると聞きました」

  

  

 ただ当の本人は、その騒ぎの中心人物だという自覚は全くないらしい。


 他の契約士、つまりクラスメイトの学生たちには目もくれず。

 普段と変わらない俺との時間を過ごしている程度の雰囲気だった。



「っ! そんなはずは――あ、あの! キミ、初めて見る顔だよね? 俺、“魔術師マテリアル”の空きがあるんだけど、契約、どうかな?」


「あっ、ズルいぞっ――お、俺も“僧侶マテリアル”持ってるんだ! 夏の大会ではメンバーに入れるって確約するから、俺と契約結ばないか!?」



 一人が前に出たことをきっかけに、次々と男子生徒たちがミュゼアへ話しかけてきた。

 ミュゼアへの勧誘のために、どれだけ自分が優れた契約士か、どれだけミュゼアを優遇できるかを競うように言葉にする。



 まだミュゼアがどんな能力を有しているか、戦闘の立ち回りがどのくらいできるか、一切見ていない状態なのにこれだ。

 

 契約士は自分の空きマスやマテリアルを提供することになるので、普通は契約相手を慎重に見極める。    


 であるのに、ミュゼアを一目見ただけでこれか……。



<ミュゼア様は正に女神級ですからねぇ。罪作りな美貌ですぜぃ……>



 だねぇ~。



「? ――申し訳ありません。私はご主人様の従者ですので」


 

 断りの意思を、簡潔にそれだけ。

 まるで世界の当然の(ことわり)を説いてやるかのような躊躇(ためら)いの無さだった。


 あるいは異国の言葉で意味の分からないことを話されて、困惑するかのような表情にも見えた。



<ねえ、知ってます? 朝、ミナト様相手に(うい)々しい赤面顔を見せていた人と同一人物なんですよ、あれ>  

 


 …………。

 本当、別人みたいだよね、うん。



<『グヘヘッ、ミュゼアの(メス)の顔を知ってるのは俺様だけなんだよ! あのこぼれ落ちそうな大きな胸も触り放題、ムチっとしてドエロいお尻や太ももだってタッチし放題、(けが)れのない純白の下着も脱がせて匂い嗅ぎ放題なんだぜ、ヒャッハー!』>



 いや、それ誰だよ、俺のマネ!?

 俺そんなこと一言も考えたことねぇよ!

 それこそもう俺とは別人だって!


 サポートちゃん、何でそんな可愛い声してオッサンみたいな言葉口にできるのかねぇ。 

   


「――おーし、全員揃ってるかぁ~? 全員揃ってるなぁ~。ん? おっ――」



 未だざわつきが収まらない中、リィーナ先生が演習場に到着した。

 そして目敏くこっちへ視線を向けてくる。

 

 ……なんだよ、その“おう、やってるやってる!”みたいな目は。 



「ほ~う、イスミ。お前、ようやく新しい従者ができたんだな。良かったなぁ~、感心感心! ――さっ、じゃあ演習始めるぞー」



 切り替え早っ!

 何が“感心感心!”だ、あんたが紹介したんだろう、奴隷の従者を!


  

 不服や不満は一杯あったが、指示に従いミュゼアとともに位置につく。


 他の生徒、特にミュゼアへと言い寄っていた男子生徒たちも同じく離れていった。 


 ミュゼア本人、そして先生からミュゼアが“俺の従者”だということを具体的に言葉にされ、最初こそ呆然としていた。

 しかし未だ納得していないという雰囲気が全身からありありと放たれている。

   


<凄い嫉妬のオーラですねぇ。自分たちも異性の従者、いるでしょうに>



 ねぇ~。



「――さて。今週から“シルフの風戦祭(ウィンドル)”の予選が始まる。それに向けて“従者1人のみ”の模擬戦、2対2を行う。相手は私が勝手に決めるぞ」



 先生が本当に独断と偏見で、勝手に次々と対戦相手のペアを指定していく。

 四大大会の一つ“シルフの風戦祭”は従者が1人のみという条件なので、俺もようやく参加可能になった。


 この模擬戦は大会に備えて、いわば本番テストのために授業で練習試合を組んでくれるということである。

   

 ミュゼアと行う初めての対人戦。

 初めての契約士同士の戦いだ。


 幸先よく勝利で飾りたい。



「――次。イスミと、そうだな……“アレスティー”がペアな」



 俺の対戦相手はフィアス・アレスティーに決まった。

 唯一学院内で俺に親し気に話しかけてくれる相手。

 そしてまたクラス内どころか、学年内で最強との呼び声も高い存在でもある。

 

 ……初戦は、簡単にはいかないかもしれないな。 

前回から間隔が開いちゃいましてすいません。


モチベーションが保てなかったというのも事実ですが、同時に体調も軽く崩してしまいました。


ただその間にも少なくない方が読んでくださり、またブックマークや評価してポイントを入れてくださっていることを知り、再び元気が湧いて頑張りました。


ありがとうございます!


次は従者ありの模擬戦と、契約魔法の成長を書いて……。

後は夏の大会(※直近の“シルフの風戦祭”とは別の大会)についてちょっと触れて、それから2人目の従者の可能性についても触れられればな、と予定してます。

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