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第二話 話と、確認

基本的に隔週投稿にしたいですが、間に合わない時は少し日がズレるかもしれません。

それと、章の聖竜騒動については、もう数話でわかる予定です。


時間は流れ、夕食。

食卓を全員で囲み、軽く談笑しながら食事を行う。


その途中の、会話が終了した一瞬を狙って父さんに声をかける。


「あのさ、父さん」

「ん?どうしたんだ、アレン」

「普通、魔法は誰だって使えるものだよね?」

「まぁ、そうだが」

「――何でかわからないけど、うまく魔法が発動できないんだ」


一度食器から手を離し、真剣な表情で問う。

本来俺一人で考えるつもりだったが、もしかしたらこの時代の人間にしかわからない原因があるかもしれないと思い立ったので、敢えて質問することにした。

もしこれで解決できれば万々歳だし、駄目だったとしても振り出しに戻るだけだ。


「魔法が発動できない…?しっかり基礎を学びなおしたい、という事か?」

「そうじゃなくってさ。なんか、魔法を使う手順はあってるし、実際に魔力も消費してるんだけど…現象が起きないんだ」

「―――なぁスー。そんな現象聞いたことあるかい?」

「……ない、わね。魔力の消費が無いなら基礎が駄目なんでしょうけど…魔力を消費しても魔法が発動しないのは、本来あり得ないわ」

「そもそも魔力の消費は魔法が発動したと同時に発生する現象だからね。発動していないのに消費される事はまずないはずだけど…」


ドラン兄も、一緒になって考えてくれている。

というか、そうだった。

余りに基本の事過ぎて忘れていたが、魔力の消費と魔法の発動は同時に起きる物だった。

どちらかしか起きないという時点で、何らかの影響を受けているというのは確定だったというのに…

これは相談して正解だったな。自分じゃそれを思い出せなかった。


「もしかしたら、誰かに呪われてるのかも…」

「…呪い、か…姉様は詳しいんですか?」

「…一応、私の得意分野。この国周辺での呪術から、極東の秘術までは大体網羅してる…」

「なら、魔法を使えなくさせる呪いって言うのもあるのかい?」

「……似た物は、幾つか。けど、今の現象にピッタリ一致する物は…ない」


……呪い、ねぇ…

一応簡単な呪いは使えるが、余り俺に相性は良くない。

そもそも呪いはその場で使うものでは無くて、方角だとか時刻だとかを最高の状態にした上で発動するものだから、戦闘特化の俺には向かないのだ。

一応呪詛をありったけ込めた武器を持っては居るが、じゃじゃ馬過ぎて普段使い出来ていない。


「恨まれるような真似、したっけか…」

「いや、アレンはそうだろ」


俺の事を名前で呼ぶようになったケリン兄が、冷静にツッコんでくる。

しかし俺にはわからない。記憶をたどってみても、このアレンと言う男、極めて品行方正に生きてきていたらしいし。


「自覚なしかもしれないけど、その顔、モテるって言ったろ?」

「……あー、嫉妬?」

「もしかしたら、中身は好きな子盗られた奴も居たかもね」


納得した。

そういえばアレンは、顔貴族と呼ばれるくらいの美男子だった。

前までの俺は記憶に残らないくらい平凡な顔をしていたからな…どうも自分が(アレンの話だが)美男子だという実感が湧いてこない。

軽蔑も侮蔑もされないが、褒められるような容姿ではない…ってのが俺だったからな。


「それだったら犯人候補が多すぎるな…」

「何言ってんの父さん」


馬鹿親なのだろうか、それとも(アレン)がそれほどまでに誑しだったのだろうか。

どちらとも取れないが、一応何か言っておいた方がいいと思って肩を竦めておく。


しかし困ったな。記憶には誰とどういう関係なのかなんてそれ程残っていないんだが…

まぁ、つい先月まで十一歳だった少年に何を期待しても無駄か。

まだ男女の関係とかを意識するような年代でも無いし。


「――取り敢えず、犯人捜しは今度ね。今はなんとかしてアレンの呪いを解かないと」

「ま、まだ呪いと決まったわけじゃ…」

「大丈夫よ、ルン。私達は貴方を信じるわ」

「…よ、余計にプレッシャーが…」


いい笑顔で答えた母さんに、ルン姉は顔を青くして俯いた。

緊張とかに弱いタイプなんだろうか。


「あ、僕の知り合いに解呪師志望の人がいるんだけど…頼んでみるね」

「ありがとう、ドラン兄さん」

「…前々から思ってたけど、どうしてルンは「様」で僕達は「さん」なんだい?」

「……何でだろう」


これまたアレンの記憶を探っても、特に何があるというわけでもない。

なんとなく、という事は確かなんだが…いや、それで確かならそれ以外に理由なんて無いのか。


「よし、辛気臭い話は一旦止めだ!食事を楽しもう!」


父さんの声に、皆も考えるのは後にしようと判断し、食事を再開した。

スープや肉が若干冷めてしまったが、それでも全然美味しかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それでドラン兄さん、話って?」

「ん、アレンか…そこに座ってくれ、お茶淹れてくるから」


夕食後、部屋で筋トレでもしようかと思っていた俺に、ドラン兄から声をかけてきた。

何やら話があるとの事だったのだが、一体どうしたのだろうか。


…まさか、中身が変わっているという事に気づかれた…?


「……お待たせ。熱いから気を付けてね?」

「う、うん…」


豪華なティーカップに入っている紅茶を見て、『これはどれくらい高いお茶なんだろうか』と軽く現実逃避する物の、現状は変わらないと諦めて姿勢を正す。


すると、黙っていたドラン兄が話を切りだした。


「―――あのさ、アレン」

「なっ、なに?」

「……来週から、僕は王都で暮らす事になる」

「……王都?」


予想していた内容と全然違った事や、見知らぬ単語が出てきた事の衝撃から、後先考えずに質問してしまった。

黙って記憶を見てみればよかったのに、何故そんな事をしてしまったのだろう。

…まぁ、ドラン兄はあまり気にせずに話始めてくれたから良かったが。


王都はその名の通り、国王が住んでいる場所とその城下の街という意味だそうだ。

騎士団への就職が決定しているドラン兄は、王都にある兵舎で生活する事になったらしい。

兵舎と言っても貴族から入った人用の、比較的豪華な建物らしい。


「でも、そんな大事な事をどうして俺に?」

「父さんと母さんには勿論話してあるけど…まだルンとケリンには話してないんだ。もう子供じゃないって言うのはわかっているけど……なんだか、落ち着いて話を聞いてくれそうなのは、アレンだけだろうなぁ…って思って」

「ドラン兄さんだってまだ成人じゃないんだろ?」

「はは、まぁね。――本当は皆の前で迎えたかったけど、王都で儀式をする事になりそうだ」


苦笑いしながら、ドラン兄は紅茶を啜った。


今知った(記憶を辿った)のだが、どうやら成人になるにはある儀式を行う必要があるらしい。

そこである『証』と言う物を刻まれる事で、この世界でも一人で生きられるほどの力を手に入れられるのだとか。

人々はそれを『神の祝福』だの『契約印』だの言っているが、その『証』によってもたらされる力の事を『特殊技能(エクストラスキル)』と呼ぶのは全員らしい。

特殊技能…所謂技能(スキル)とは違い、かなり強力な反面一人一つまでしか持てないとされている。

また、同じ能力を持つ人間が複数人居る事は普通だそうで、全てが唯一の能力と言うわけでは無いそうだ。


儀式は様々な場所で行われているが、いい技能に恵まれるには自分にとって縁が深い場所…もしくは深くなる場所で刻むのが一番だとされている。


「アレンは今年で十二歳だから、後六年だ」

「六年…その間、ずっと鍛錬か」

「……もし専門的に学びたいなら、学校に通ってみたらどうだい?」

「……学校?」


聞いたことの無い単語だ。

実際アレンの記憶にもそんな単語、入っていない。


「ケリンは拒否したし、ルンは途中退学したけど……僕はいいところだと思ってるよ?」

「……そ、そんな魔境なのか…」


あのケリン兄ですら拒否し、実力の底が知れないルン姉ですら途中で諦めるような場所…本調子ですらない俺が耐えられるのだろうか。


「ぷっ…違う違う。そう恐ろしい場所じゃなくって、色々な事を学ぶ場所だよ」

「…学ぶ、場所?そんなの自学自習で…」

「まぁ、そう思う人も多いんだろうけど…各分野に詳しい、教師って人が沢山いて、その人達に教えを乞う事が出来るんだ。生徒…あぁ、弟子みたいな存在かな?生徒同士でも高め合えるし、強さも知識も極められるいい場所だと思うけど」

「……それって、入るのに条件とか居るの?」

「一応入学試験はあるけど、基本的に受け入れてくれるよ。まぁ、試験で手を抜いたら最初のクラス分けでひどい目に遭うかもだけど…」


酷い目ってなんだ。

実力の低い連中が集う場所では、教師とやらも教える気を無くすのだろうか。


「十三歳で入学権利を得れて、成人までの五年間をそこで過ごすことになるんだけど…どうだい?」

「…その学校って、何処にあるの?」

「王都だよ。一応他の国にもあるんだろうけど、基本的にその国の人間じゃないと入学は不可能だから。今は各国の情勢も怪しいしね」

「…王都って事は、俺もドラン兄さん見たいにこの家じゃない場所で生活するって事?」

「…まぁ、そうなるね。でもあまり気にするような事は無いと思うけど…」


首をかしげるドラン兄に、紅茶を啜りながら答える。

…美味いな、コレ。


「ケリン兄さんが心配で、さ」

「…あぁ、せっかく仲良くなれたのに…って?」

「それもあるけど、やっぱりあの人一人にしておくのはなぁ…って」

「一応ルンも居るけど…まぁ、荒れるだろうね…」


しかし学校とやらが居になるのもまた事実。

もしかしたら後世には残っていないような優れた技術や隠された歴史等を知る事も可能かも知れないし…

それに、完全独学だった俺の戦闘に指導が入ることで、さらに洗練される可能性だってある。


正直悩みどころだ。

ケリン兄と二人で極め合うのもよし、学校とやらでケリン兄とだけでは知れないような事を学ぶのもよし……

まぁ、後一年あるらしいし、もう少し余裕を持って考えよう。


「まだ一年あるし、ゆっくり考えるよ」

「…まぁ、それが一番だね。すぐに決めていい物でも無いし、じっくり考えるといいよ」


この後は、ただただ他愛のない話をして解散した。

ドラン兄がいい人だというのは記憶で知っていたが、実際に話してみると、さらに好青年さに感動した。

…俺もこれくらい性格が良ければ、もう少し違うのだろうか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


この時代に来て、一日が過ぎた。

素早く着替えて食卓に向かい、朝食を食べた後、ふと確認していない事を思い出したので急遽あの山まで戻った。


…昨日は魔法や武器の確認だけで終わってしまったから、今回は技能や薬品の生成が可能かを確認する事にする。


「まずは…これだな」


一番確認しやすい【透視】の技能を確認するために、空間収納からある箱を取り出す。

これは【透視】の技能を持つ人間が技能の向上のために使う箱で、中にはランダムで三つの形を取る物体が入っている。

見るたびに形が変わるそれを、【透視】して形状を当てるのだ。


「………三角形、だな」


中の形状を当てる際、正解ならば青く、不正解なら赤く箱が輝くのだが…今回は青、正解のようだ。

【透視】は未だ健在のようだし、この調子で一番使用頻度が高い物から確かめていこう。


…そういえば技能(スキル)について説明していなかった。

技能は、魔法と違う特異な能力の一つで(ほかには呪い等が存在する)生活に役立つ物から命を奪う事に特化した物等様々な系統が存在する。

確認されている物は(俺の知っている限り)十万八千個あり、内二万は戦闘系と言われている。

まぁ人によって戦闘系か否かの判断はわかれるから、俺からすればもっとあるかもしれないし少ないかも知れない。


因みに俺は全部で約八万九千個の技能を使えるが、六割が基本的に非戦闘用の技能だったりする。

料理が少し上手になる【自炊補正】とか、使い道がよくわからない技能まで持っているからなぁ…


「――大体これだけ確認しておけば大丈夫だろ」


ある程度の確認が済んだので、今度は薬品作りに移る。


空間収納にある、初心者用回復薬キットを取り出し、作成を開始する。

…基本薬品作りは手順を覚えて居れば何とかなるのだが、かなりの頻度で目分量を要求してくるため、その辺の感覚が鈍っていないかを確認する必要があったのだ。


「……こんなもんか」


早速目分量で水を入れ、薬草をそれにあった量混ぜる。

回復薬等は、冒険者にとっては命綱と言っても過言では無い物なのだが…どうして作り方に目分量だのお好みだの書かれているんだろうか。


「…えーっと、これを混ぜて……完成か」


別の液体(殆ど目分量で作った物)と元々の液体(言わずもがな目分量)を混ぜ、適度に混ぜる。

どのくらいが適度だったっけなぁ…等と考えながら混ぜ続け、取り敢えず完成した。


色は透き通っていて綺麗だが、見た目と効能が比例するとは限らない。

一度指先に切り込みを入れて、しっかり傷が癒えるかを確認する。


「……治っては居るけど…微妙だな」


ちゃんとした回復薬なら、傷跡は滅多なことが無い限り残らないのだが…この程度の切り傷でも、跡が残ってしまった。


これは…成功と言えるのか、失敗と言うべきなのか。

切羽つまった時ならこんな回復薬は失敗扱いするが、余り急ぎではない時や、傷跡が残っても気にしないような位置の傷に使うときなら…成功扱いでも、いい…か?


「…基本的に店で買うことにしよう」


まぁ、出来ないと認める事も大事だ。

回復薬が無くなって、自分で作る他ないという状況になれば作るという事にしよう。


「よし、確認したいことも確認しきったし、帰るか」


この後、昨日の如く扉の前で恭しく頭を下げる老人…セバッセ(本名はセバッセ・ヌチャらしい)が居たことに驚いた以外は、特筆するような事は起きなかった。

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