乙女心
二人の影が、夕陽に照らされながら重なる。その光景は、一年近くの間、私がどうしても見たかったものだった。
私は、彼女が彼に密かに想いを寄せていたのを知っていて、その想いを成就させるために、たくさんのお節介を焼いてきた。だからこそ、これを成し遂げたことは、とても喜ばしいことのはずだった。
しかし、今の私の胸にあるのは、嬉しさでは無かった。この一年、彼女の想いを遂げさせるため、何度となく接した彼の事が、モヤモヤとしたものと一緒に私の胸に思い浮かんでくる。彼の鈍感な様子にイライラとしたとき、彼がくだらない事を言って呆れさせられたとき、そして、彼に優しくされたとき。なぜだろう、とっても喜ばしいはずなのに、今、私はとても寂しい。
あぁ、なぜ今なの。もっと早く分かっていれば、この気持ちだって整理をする時間があったのに。今、自覚したところで、もうどうしようもないのに。
「そっか。あたし、恋してたんだ」
私の初めての恋心は、始まる前に、失恋になった。