生セックス
レイラは、仰向けの俺に体を重ねる。
ピトッ!
彼女の首筋が俺の首に触れ、微熱を施した。
彼女は俺の左耳に唇を寄せ、吐息をたっぷり伴った声で、
「……大好き……キスさせて?」
彼女の声は、熱を孕んだまま俺の脳内にまで滑り込む。
「……うん」
すると、彼女は
ちゅっ!
俺の左耳に軽くキスをした。
続いて、頭を動かし、
ちゅっ!
左頬にキスをした。
キスされるたびに、ストレスは消えて、心が軽くなる。精神的な重圧も、何も感じない。
彼女は正面から俺をまっすぐと見つめる。まばらに漂う月光の潮流の中、彼女の金色の瞳が輝く。
彼女は女の表情で、
「口にしても……いい?」
「……もちろんいいよ……」
そして、俺は目を閉じた。
視界は完全な黒に覆われた。光の死に絶えた世界。
俺の体は冬の寒さで凍りつく。
そんな中、鼻先に湿った空気が触れる。レイラの顔が近いのだろう。
そして、唇に柔らかくて温かいものが押し付けられた。
「……ん!」
(キスの瞬間レイラはくぐもった声を出した)
まるでモノクロの世界で彼女と触れ合っている箇所だけが色付いたかのよう。
俺たちはベッドの上で唇を重ね合う。彼女はキスをやめたくないのか、唇を離す気配がない。
五秒が経った。一瞬が永遠に感じる。
十秒が経った。脳内ではエンドルフィンが蛇口を捻ったかのように吹き出ている。
三十秒が経った。全身が脳内麻薬のプールに浸かっているかのよう。幸福感だけがある。
そして、一分が経った頃ようやく唇は離された。
俺が目を開けると、レイラは俺に抱きついてきた。
ぎゅうううううううう!
細い両手を俺の背中に巻きつけてくる。
「そ、そんなにくっつくなよ!」
だが
「……やだっ!」
ぎゅうううううううう!
さらに力一杯俺のことを抱きしめてきた。
(困ったな……)
「ゆう君も私のこと抱っこして?」
「……わかった」
俺は両腕を彼女の腰に巻き付けた。
だがレイラは俺の頬をつねると、
「もっと強く抱っこしなさい!」
「い、痛い痛い。わかりました」
俺は両腕にさらに思い切り力を入れて彼女の体をぎゅうと抱く。
「……ん! よろしい!」
今度は満足してくれたみたいだ。俺たちはベッドの上で互いの体を抱き合う。
「ゆう君……大好きだよ?」
「レイラ……大好き」
俺は心の底から彼女のことが好きだ。
可愛くておっぱいが大きくて、一緒にいて疲れない。
世間体も体裁もいらない。気負うことなくありのままの俺と一緒にいてくれる。
いつでも好きな時に好きなことを好きなだけさせてくれる。
そして、何より……俺のことを好きだと言ってくれる。
顔も体も本当はどうでもいいのかもしれない。ただ一緒にいてくれるのが嬉しい。
「ゆう君……今日もギュッてしたまま寝よう?」
「今日も? 昨日も一晩中――」
レイラはキッと眉根を寄せて、
「何か文句でも?」
「い、いえ! ないです!」
「よろしい!」
レイラと付き合い始めてから毎日ずっと一緒だ。毎日のんびり起きて、のんびり朝食をとって、イチャイチャする。
ただ彼女とくっついているだけで幸せだ。
レイラは、頬を桜色に染めて
「寝る前のアレしよ? あれがないとぐっすり眠れない……」
唐突にそんなことを言ってきた。
「うん……じゃあ服脱――」
レイラは俺が言い切る前に、
「その前に……頭撫でて? あとで私のこと好きにしていいから……」
俺は右手で彼女の頭を優しく撫でてあげる。
さらさらと手ぐしで髪を洗う。
彼女は俺の胸に顔を埋め、されるがままに撫でられる。
「レイラ……大好きだよ?」
俺は彼女の耳元で囁くように言った。
瞬間、彼女の髪の匂いが鼻腔に突き刺さる。
甘ったるい香りが脳の中までかきむしり、俺を狂わせる。
「私も大好き……」
愛情が俺の心を洗う。心の隙間にまで入り込んで浄化する。
気持ちよくて、温かい。
これこそが俺がずっと求めていたものだ。
負の感情は消え失せ、どこかへ行ってしまった。
草原の中にいるような爽快感に包まれる。
レイラは、起き上がり小声で
「ん……ありがと」
俺も起き上がりベッドに座る。向かい合うような姿勢になり、心地のいい沈黙がベッドルームを埋め尽くす。
さっきの言葉が脳裏に過ぎる。
(あとで私のこと好きにしていいから……)
レイラは黙ったまま俯いている。
「レイラ? 今から俺の好きにさせてくれるの?」
レイラはコクンと一度だけ頷くと、
ガバッッと俺に抱きついてきた。耳元に口を寄せて、
「……好きにしていいよ?」