悲しみはコロコロとともに
ダラダラしているようでは話にならない。べつに人生の成功者になれとか勝利者になれとか言っているわけではない。やるべきことをやれって話だ。目の前にある問題をとっとと片付けなよって話だ。自分で解決できないことは放っておけばいいが、できることならすぐにやれ。
やればすぐに解決できるような問題でも、ダラダラと引きのばす。そういう奴にかぎって、言い訳ばかり口にしやがる。
やる気なんてのも言い訳だ。
気分がどうとかなんて言ってる暇があれば、すぐにやれ。
いますぐ動け。
俺はそうやって自分自身に命じてきた。自分を支配することが真の勝利者であると信じている俺は、本日、スーパーでおそうじ用粘着テープを購入してやった。
「もうすぐテープを使いきりそう……」
という状況になってから約一か月は経過している。床のカーペットを粘着ローラーでコロコロお掃除しないといけないのはわかっていたけれど、仕方ないじゃない? だって、いつものスーパーには交換用のテープが売ってないんだもの。カーペットタイプの床って、ホコリとか目立たないんだもの。まだ大丈夫とか思っちゃうじゃない?
いや、過去の話はもうやめよう。昨日までの俺という遥か彼方の存在などどうでもいい。一秒前ですらどうでもいい。大事なのは今だ。反省など必要ない。
今この瞬間を生きている俺は、さっそく掃除をはじめる。断っておくが、掃除が嫌いなわけじゃない。粘着ローラーはとくにそうだ。交換用テープが三本もあるとなれば、安心してつかえる。思うがままにコロコロできる。
久方ぶりのコロコロとあって、やはり、床のカーペットは汚かった。髪の毛やホコリや細かいゴミが、とれるとれる。テープはすぐに粘着力を失う。ペリペリとテープをはがして、またすぐにコロコロする。髪の毛やホコリや細かいゴミが、まだまだとれる。
「よくこんな汚いところで寝起きしてたな」
といった感想をつぶやくほどに汚かった。何度も何度もコロコロできる。すぐに粘着力を失うほどのホコリはなくなってきたが、髪の毛なんかはまだまだとれる。エンドレスでとれるんじゃないかと思うほど、コロコロするたびに髪の毛がくっついている。
「おいおいマジかよ」
と笑えるくらい髪の毛がくっついてくる。床のカーペットがきれいになるまではコロコロしようと思っていたけど、終わりがみえない。ほんと、笑えないくらい、髪の毛がおちてる。




