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第二章 第四節「カジノ」

 如月創きさらぎ そう前島麗華まえじま れいかに誘われて、ホテルの中のカジノにきていた。アメリカのカジノは21歳からと制限されていたので、チップの管理としてフロントマンが同行してくれた。初心者が楽しむスロットマシーンやルーレット、上級者向けのバカラやポーカー。6万ドル、日本円にして約600万円のチップを使って遊んで回った。



 そして豪快に負けた。



 6万ドルのチップはわずか1時間ですべて消え去った。如月創はカジノのゲームのルールをすべて理解していた。それゆえに確率論で勝てる道理がないことを理解していた。如月創の賭け方を見て前島麗華は大いに笑った。掛け値なしでこんなに笑うのははじめてだった。


「創君。そんなに高額チップを投げ込んでスロットを回してもなくなるだけだよ。ほらほら、どんどん減っている」


「えー。そこにそんなにチップを積んだらディーラーの思うつぼだよ」


彼女がどんなに言っても、如月創は惜しげもなく、ただ淡々とチップを積んだ。


「キミ、神様でしょ。チョコ、チョコッと、ほら何とかできないの?」


「ぼくは神じゃない。創造者だ。創造者は万能じゃない」


「そうなの。万能じゃないんだ。つまらないの」


言葉とは裏腹に前島麗華は笑顔を絶やす時間がなかった。気が気ではないのがチップを管理するフロントマンだった。フロントマンは自分のチップでないと分かっていても、どんどん減っていくチップを見る度にため息をついた。盛大にチップを積む二人の東洋人を見て、ギャラリーが集まってくる。如月創が負ける度にどよめきがカジノ会場を湧かせた。


 如月創はなぜ人間が賭け事に興じるのか理解できなかった。最終的に必ず負けることが分かっていながら、たった数回の勝の記憶に酔うことができるのが不思議だった。まして、他人の勝ち負けを楽しむギャラリーはもっと理解に苦しんだ。


「これのどこが楽しいの?」


「キミには一生理解できないわね」


前島麗華は説明の代わりに笑顔をかえした。如月創は、人間は知能も精神も未熟なのだと理解した。チップを使い果たして、如月創は前島麗華に尋ねた。


「まだやる。お金ならいくらでも作れるけど」


「もういいわ。食事にしましょう。あんまり笑ったからお腹がすいたわ」


二人がカジノを出口に向かうとフロントマンが寂しそうについてくる。如月創は胸の内ポケットから100ドル紙幣の束を出して彼にチップとして渡した。途端にフロントマンの機嫌がよくなった。

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